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Microsoftのローコード戦略、ターゲットはUIPathなどのRPA企業

キーポイント

  • Microsoft is investing big in the low code space and has put together a collection of products that is hard for other companies to match, capped recently by the announcement of PowerFX.
  • The target in their sights is the Robotic Process Automation (RPA) companies such as UIPath, Automation Anywhere and Blue Prism who are closing big deals with big enterprises.
  • The moat protecting the market share of the big RPA companies is created by the mature deployment systems that enable large enterprises to run hundreds or thousands of automated processes
  • Microsoft’s recent low code announcements indicate that, instead of building a bespoke deployment system, Microsoft’s approach will be to incorporate low code software into an enterprise’s existing CI/CD workflows
  • This approach befriends rather than alienates enterprise CIOs which will shorten sales cycles and improve deal flow.
  • Further bad news for RPA companies is that AWS and Google have products equivalent to Microsoft’s collection in almost every category and can close the gap quickly.
  • With billions of dollars in revenue on the line this will be one of the most exciting tech races to watch over the next few years.

原文(投稿日:2021/06/01)へのリンク

ローコードはなぜ重要か?

ローコード(low code)とは、プロではない開発者による有用なビジネスアプリケーション構築を可能にする、ソフトウェア開発プラットフォームを示す用語です。

その背景には、ビジネスプロセスを深く理解したビジネスユーザがアプリ開発に貢献できる、というメリットがあります。ビジネスユーザのビジネス知識とITチームの開発知識とを活用することによって、競合他社よりも速いイノベーションが可能になるのです。

Gartnerは、2025年までに、ほとんどの企業アプリケーションが部分的にローコードソフトウエアで開発されるようになる、と予測しています。(ローコードアプリのソート可能な一覧がこのリンクに紹介されています。)

ローコードソフトウエアの構成要素

企業向けローコードソフトウエアスイートは、一般的に4つのコアコンポーネントから構成されています。

  1. データストレージ
  2. インテグレーションおよびトランスフォーメーションパイプライン
  3. アプリインタフェース
  4. レポート

    さらにオプションとして、2つのコンポーネントがあります。  
  5. レガシアプリケーションと対話するためのRPA(Robotic Process Automation)
  6. データエクストラクション(PDFからの半構造化(semi-structured)データの抽出

これらコンポーネントに加えて、ローコードソフトウエアスイートには、さらに2つの機能が必要です。

  1. アプリケーションをデプロイする機能
  2. デプロイメント後のアプリケーションを監視する機能

過去6年以上にわたってMicrosoftは、最初に挙げた6つのコンポーネントの開発を続けてきました。そして現在、デプロイメントと監視の機能に取り組んでいるのです。

MicrosoftのRPAとローコードが競合他社を恐れさせているツイートがここにあります。

このツイートとMicrosoftのローコードおよびRPA進出の関連を指摘してくれたGus Bekdash氏に謝意を表します

RPAと企業ローコードソフトウエアの歴史

企業におけるローコードソフトウエアの歴史を特徴付ける方法はたくさんあります。ご希望とあれば、例えば、1990年代の4GLソフトウエアまで遡ってもよいでしょう。ですが、この記事の目的から、今回は2020年代初頭のRobotic Process Automation(RPA software)の興隆から話を始めたいと思います。

初期のRPAソフトウエアは、グリーン端末の時代から存在するスクリーンスクレイピングシステムを多少進化させたものに過ぎませんでしたが、その後すぐに、今日のローコードスイートに含まれるコンポーネント(データストレージ、インテグレーション/トランスフォーメーション、アプリインタフェース、レポート)の開発が始まりました。例えば、ほとんどのプロセスでは、特定のステージ(支払いの認証など)において人の入力ないし判断が必要であるため、RPAスイートは、自動化されたワークフローとユーザが対話するシンプルなアプリを作成する機能を備えるようになりました。

RPAスイートの大きなイノベーションは、オーケストレーション能力を備えたことです。これによって管理者は、数十万というプロセスをデプロイし、監視することが可能になりました。MicrosoftのPower Automateなどのオートメーションプラットフォームは、UIPathやAutomation Anywhere、Blue Prismといった有名RPAツールに比肩できる成熟度を備えていない、という意見を耳にすることがありますが、それはつまり、Microsoft Power Automateの監視機能やデプロイ機能がそれらRPAツールのビッグ3と同じ成熟度に達していない、という意味です。

Microsoftが改良を目論むのは、まさにこの領域なのです。

ローコード大手に向かうMicrosoftの歩み

Microsoftは、ローコードソリューションの提供に向けて、企業が求めるすべてのピースを組み上げつつあります。この戦略が功を奏すれば、同社はローコードの世界において比類のない存在になるでしょう。

Microsoftがローコードについて語る時、同社は極めて広範な視野を持っています。ローコードを説明する際に同社が使用していることばは、Excelで数式を書いている会計士から、既存のコネクタを使ってAPIからデータを引き出すソフトウエアエンジニア、さらには顧客向けにエンドツーエンドのクレーム管理システムをカスタム開発するコンサルティングファームに至るまで、すべてを対象としたものです。

ローコードのスケールアップにおける本当の課題はローコードアプリケーションではない、ということをMicrosoftは認識しています — 問題なのは、ローコードアプリケーションのデプロイと監視なのであって、同社はこの課題を解決するための軌道に確実に乗っているのです。

過去6年以上にわたってMicrosoftは、次のようなコンポーネントを買収してきました。

  1. データストレージソリューション (Dataverse)
  2. インテグレーションおよびトランスフォーメーションパイプライン (Logic Apps)
  3. アプリ開発 (Power Apps)
  4. レポート (Power BI)

    さらに、次のものを手にしています。
     
  5. RPAソリューション (Power Automate)
  6. データエクストラクション (Azure Cognitive Services Form Recognizer)

パズルの残るピースは、デプロイメントと監視です。

大手RPAスイートはこれらの課題を、自分たちのオーケストレーションシステムを採用するようにユーザに求めることで解決しています。

しかし、MSの採用するアプローチは違います。Microsoftは開発チームにこう言うのです — "新たなデプロイメントやガバナンスのプラクティスを取り入れないでください。すでにあるCI/DIプラクティスで十分です。" 先日のPowerFXの発表は、これらすべてのコンポーネントを一般的なプログラミング言語を使ってリンクすることで、既存のCI/CDプロセスとガバナンスのフレームワークを使ったローコードアプリのデプロイを可能にしようというものです。

これはMicrosoftにとって、ローコードにおける競合他社に対する大きなアドバンテージになるでしょう。Microsoftのローコードソリューションが、企業のCIOにとって安全策になるからです。企業が既存システムとの連携が可能なローコードプラットフォームを選択する場合、現在のガバナンスフレームワークに適合するPower Platformを使用するか、そうではない他のものを使用するかを選択することになります。多くの企業は当然、Power Platformを選ぶでしょう。

Microsoftは非常に優れた戦略を作り上げたのです。最初からデザインされたものか、戦略的な試行錯誤の結果なのかは分かりませんが、この戦略の各ピースがリリースされた時期から判断する限り、2019年のどこかの時点で、Microsoftの誰かがこれらすべてを組み合わせる方法を閃いたのでしょう。それ以降の同社は、この戦略を背景に事を進めてきたのです。

同社の歩みを見ると、次のようになっています。

  • 2015: VS Codeリリース
  • 2016: PowerAppsとCDS(現在はDataverse)リリース
  • 2018: GitHub買収、GitHub Actionsリリース
  • 2020: Softomotive RPA買収
  • 2021: PowerFXプログラミング言語発表

この道程は、プロフェッショナルなソフトウェア開発で使用されている継続的インテグレーション/継続的デリバリ(CI/CD)コンポーネントに、ローコードおよびRPAプロダクトを組み合わせて、データとアプリケーションの優れたガバナンスを促進するための共通プログラミング言語(PowerFX)で結び付けた、というものです。素晴らしい戦略ではありませんか!

PowerFXコーディング言語とは何か、ローコード移行においてなぜコードが重要なのか

PowerFXはPower Appsのプログラミング言語です。2021年4月、MicrosoftのGreg Lindhorst氏は、PowerFXとJavaScriptの違いを示した下のアニメーションGIFを使ってPowerFXを紹介しました。

PowerFXは、Excelライクなエクスペリエンスをユーザに提供するように設計されています。

Microsoftにとって、ローコード開発者にコードを書いてもらうことが重要なのは、ローコードアプリを企業の既存ワークフローやガバナンスフレームワークに適合させるためです。以下に示したのは、Microsoftの発表において最も重要だと思われる部分で、企業のローコードアプリを既存の開発ワークフローに組み入れる方法について説明しています。

ビジネス開発者がコード作業に習熟できるようにするため、Microsoftは多額の投資を行っています。同社が目指す方向を示す最初の指標となるのが、GPT-3上に構築され、AIを活用したPower FX formula writerです。

ビジネス開発者がビジネスアプリケーションの開発にPower FXを使用するようになれば、それらのアプリケーションを企業内のプロフェッショナル開発者が拡張して、IT部門が他のソフトウエアプロジェクトと同じように管理する、という方法が可能になります。ビジネス開発者の開発したローコードアプリをプロフェッショナル開発者が拡張してデプロイすることで、企業が独自に持つ競争上の優位性をサポートするような、高度で堅牢なカスタムアプリケーションを短期間で開発し、提供することが可能になるのです。

一例として、鉱業を対象に、トラックや重機の保険を専門とする保険会社を考えてみましょう。PowerFXとPower Platformを使えば、ビジネスユーザが自らのビジネスラインに特化したアプリを設計し、社内のプロフェッショナル開発者が独自の保険等級エンジンをJavaやC++といった言語で開発する、という方法が可能になります。これらをすべて、自社の標準的なCI/CDパイプラインを使ってメンテナンスできるのです。

AWSやGoogleは何をしているのか?

Microsoftは成功に必要なピースをすべて組み上げた上で、効果的なディストリビューション機能を実現しています。UIPath、Automation Anywhere、Blue Prismといった大手RPA企業にとって、これは悪い知らせですが、

さらに悪いニュースは、AWSやGoogleも短期間でローコード業界のビッグプレーヤになる可能性がある、ということでしょう。Microsoftの当面のおもなアドバンテージは、同社がナラティブ(narrative、物語)を持っている、ということです。AWSとGCP(Google Cloud Platform)は、自社の顧客に対して、ローコードを重要な競争優位性として主張していません — 両社ともMicrosoftと同じピースをほぼ持っているにも関わらず、です。

例えばAWSは先日、独自のローコードアプリプラットフォームのHoneycodeをリリースしましたが、それが同社の他のサービスとどのように適合するかについては、何も語っていません。Googleは昨年、ローコードサービスのApp Sheetを買収しましたが、それをストレージやワークフロー、あるいはCI/CDとどのように組み合わせるかについて、説得力のある方法を示せていないのです。

これらのピースすべてを取りまとめて、信頼できるローコード環境をいかに作り上げるか、という点をGoogleが最も明確に示したのは、皮肉なことに、RPA企業トップ3のひとつであるAutomation Anywhereとの提携を発表するプレスリリースの一部としてでした。

ローコードの分野でMicrosoftと競うために、AWSとGoogleは何をすべきか?

AWSは、Microsoftのスタックに匹敵するコンポーネントのコレクションをまとめることが可能です。

  1. データストレージ: AWSには選択肢がたくさんあります。同社のオプションとDataverseの違いは、非開発者にとっての使いやすさです。このギャップを埋めるためにさまざまな試みが行われていますが、ひとつのアプローチだけでトップに上り詰めることはできないでしょう。
  2. インテグレーションおよびトランスフォーメーションパイプライン: AWSには間違いなく、多過ぎるほど選択肢があります。Step Functions、Glue、App Flow、その他にもいくつかのツールが、この目的のために使用できます。同社に欠けているのは、何をいつ使うべきかという、一貫性のある立場です。
  3. アプリ開発: Honeycode
  4. レポート: Quicksight
  5. RPA (AWSにはこの種のソリューションはありませんが、小規模なRPA企業のひとつを買収する、という選択肢もあります)
  6. データエクストラクション: Textact

同じようにGoogleにも、

  1. データストレージ: AWSと同じく、たくさんの選択肢があります。Appsheetのデータストレージは、ローコードの多くのユースケースを処理する上で大いに役立つでしょう。
  2. インテグレーションおよびトランスフォーメーションパイプライン: この分野では、Googleのサービスはかなり混乱しています。Trifactaとの提携があり、Cloud ComposerというApache Airflowサービスがある上に、先日にはWorkflowsをローンチしています。(提案: Google、ひとつにしようよ。)
  3. アプリ開発: Appsheet
  4. レポート: Looker
  5. RPA: この面では、Automation Anywhereとの提携が問題になるかも知れません。Googleには、レガシアプリケーションをスクリーンスクレイピングする手段がAutomation Anywhere以外にないのですが、一方で、それ以外の機能の大部分(データストレージ、ワークフロー、アプリケーションなど)には、Googleのスイートに競合するプロダクトが存在しているのです。GoogleのサービスとAutomation Anywhereの間で、プリセールスコンサルタントがクライアントを右往左往させるという、セールス上の問題が予想されます。
  6. データエクストラクション: Document AI

AWSとGoogleに欠けているもの

AWSとGoogleがローコードに関して、Microsoftと競合する上で負っている技術的なギャップは、それほど大きなものではありません。両社の最大の課題は2つあります。

  1. 明確な戦略を立てること、そして
  2. 企業間での契約を取りまとめること、です。

両社にとって残念なことに、この2つの領域のいずれにおいてもMicrosoftに一日の長があるため、彼らにとって分の悪い賭けになっています。それでも、両社にはすでに技術がありますから、必要なのはそれを一貫性のある絵にアレンジして、プロモーションを開始することなのです。

そうなると既存のRPA企業は、3大巨人に追いかけられることになるでしょう。彼らのマージン的には望ましくないかも知れませんが、私の見解としては、優れた自動化ソリューションを幅広く選択可能になるCIOやITチームにとっては朗報になります — その中には、既存のデプロイメントやガバナンスフレームワークに最適なものがいくつも見つかることでしょう。

 

"The Low Code Road"はManaged Functions CEOのDoug Hudgeon氏がInfoQのために執筆したシリーズ記事です。シリーズの最初の記事はこちらにあります。

著者について

Doug Hudgeon氏は、ビジネス上の現実的な問題をAWS SageMakerを使って解決する方法を記したManning(出版社)の書籍"Machine Learning for Business"の著者のひとりです。氏はManaged FunctionsのCEOでもあります。Managed Fuunctionsは、企業のローコードおよびRPAチームのプロジェクトが直面する厄介な問題に対処するカスタムコンポーネントを提供することによって、プロジェクトデリバリの迅速化を支援するインテグレーション企業です。中でもユニークなのは、提供するコンポーネントがサーバレス関数として企業のクラウド(AWS、Azure、GCP)にデプロイ可能であるため、ソリューション全体をそれらのインフラストラクチャ上で運用することが可能な点です。氏の言動はTwitter上で見ることができます。

 

 

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