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WebSphereの2009年のトレンドと方向性

新年おめでとうございます。私は毎年、WebSphereの世界で一生懸命エネルギーを注いでいる技術分野を概説することにしています。
私がブログの中で(David Lettermanの助けを借りて)概説した (リンク)、私が考える2009年のトップ10は以下のとおりです(特に順番だてているわけではありません)

  1. Business Mash-upsビジネスのマッシュアップ
  2. ビジネスルール
  3. サービスとしてのミドルウェア
  4. Rainmaker
  5. Extreme Scale
  6. WAS.NEXT
  7. Restフル - アジャイル
  8. DataPower-lution
  9. POWERにあふれたミドルウェア
  10. 業界にぴったりのミドルウェア

面白いトピックを手当たり次第に集めたように見えるかもしれませんが、ここに挙げた技術分野が役割を果たす非常に重要なひと握りのテーマがあります。ビジネスユーザーにWebベースの機能豊かなツールを与えることにより、ビジネスとITの提携を促進することは、2009年のSOA最前線で流行のテーマです。ビジネスユーザーに自分の考えを、繰り返しとテストが可能で、視覚化も可能な方法によって電子的に表現させること(「プログラム」と言ってしまっていいでしょうか?)は、ビジネスのマッシュアップやビジネスルール、サービスとしてのミドルウェア(MaaS=Middleware-as-a-Service)、業界にぴったりのミドルウェアと同様に重要なトピックとなります。トップ10リスト全体にまたがった2番目に重要なテーマはアジリティです。2009年は経済が停滞する見通しなので、アジリティは特に重要です。time-to-value(価値創造までの時間)を徹底的に改善する「目的専用に構築された」ミドルウェアが、アジャイルなソフトウェアの試みを支える中心的な考え方であり、とりわけWAS.NEXTや、RESTフル、DataPower-lution、業界にぴったりのミドルウェアに見つけることができます。そして決して見落としてはならないのが、WebSphereの中核をなす価値「Extreme Transaction Processing」(超高速トランザクション処理)を私たちが常に重視しているということです。Extreme Transaction ProcessingがExtreme Scaleの動機となり、POWER™ (リンク).に焦点を当てる源となっているのです。

10の分野について、もう少し詳しくみてみましょう。

ビジネスのマッシュアップ - MySpace(リンク)やFacebook(リンク)の豊かなWebエクスペリエンスを手に取り、それにビジネスのひねりを加えたら、ビジネスマッシュアップ活動の本質を手に入れたことになります。ビジネスのマッシュアップによりビジネスユーザーは、カスタムメードのWebポータルを組み立てられるようになります。このポータルを使えば、ビジネスプロセスの監視や実行可能なビジネスイベントへの反応といった必要不可欠なビジネス活動の監視や制御が行えるダッシュボードを、動的に作成することができます。このリッチなインターネットアプリケーション内では、AJAXベースのオーサリングツールにより、ビジネスプロセスのモデル化とテストが可能で、ビジネスルールを適用してリアルタイムにプロセスの振る舞いやフローを変えることができます。ビジネスのマッシュアップはIBM Mashup Center (リンク)などの製品に使われているIBM Mashupプラットフォーム技術を利用します。

ビジネスルール - iLog(リンク)がWebSphereチーム (リンク)に加わりました…やった! iLogチームの助けを借りて、私たちはWebSphere製品ライン全体にわたり(WebSphere Application Server(リンク)、Business Events(リンク)、Process Server (リンク)、ビジネスオーサリングツール〔Modeler(リンク)、Monitor(リンク)〕など)-- プロシージャベースと推論ベースの両方で -- ビジネスルール技術を引き続き統合します。2008年にはAptSoft(リンク)を買収しましたが、これにより、イベントサーバー(WBE)上で動作するプロシージャルールを視覚的に組み立てるためのツールコレクションを手に入れました。2009年はこのツールをさらに強化し、いっそう高度な推論をイベント処理やプロセスのオーケストレーションに適用できるようにするために、iLogルールの技術をミックスする統合に焦点を当てるつもりです。また、WebSphereのSOA管理構想と調和する方法を用いて、ビジネスルールの管理とガバナンスを行うことにも焦点を合わせます(たとえば、WebSphere Registry (リンク)の中で)。

サービスとしてのミドルウェア - ブラウザ上でWebサイトをクリックするだけで、すぐにミドルウェアが利用できます。サービスとしてのミドルウェア(MaaS=Middleware-as-a-Service)で焦点を当てているのは、前もって提供・ホスティングされている、コンピュートクラウド(構内もしくは構外)で動作しているミドルウェアです。当初は、ホスティングされたモデル/サービスモデルというコンテキストで、接続性/統合(リンク)、コマース(リンク)、BPM(リンク)に焦点を合わせています。こうしたトピックのひとつひとつについて、80/20のソリューションをを利用することを目指しています 。 つまり、Webベースのリッチなインターフェースを通じて駆動されるそれぞれの機能分野向けに、単純化し、制約をつけた抽象概念を提供すべく作業している最中ということです。最初の目標は、企業がミドルウェア・クラウドを構内に構築する(これが私の言うRainmakerという言葉の具体化です -- これについては後ほどさらに説明します)ための武器をこの空間で提供することです。2009年はAmazon(リンク)のような公共のクラウドも活用してWebSphereミドルウェアを動作させます。MaaSでは先進の仮想化、オートメーション、オートノミックス(自己管理)を提供することにより、運営費を削減し、WebSphereの構内デプロイメントによって「価値を生み出すまでの時間」を短縮し、中核のITの外に位置するサービス(たとえば、LOB、B2B、Web生まれのアプリケーション/サービス)の統合に関連した複雑性を低減します。

Rainmaker(レインメーカー)- WebSphereクラウド関連の活動を網羅する言葉として「Rainmaker」(リンク)を使っています。ハードウェアを持ってくれば、WebSphereクラウドの構築と管理をRainmaker技術が手助けしてくれます。WebSphere仮想イメージの概念 -- WebSphereミドルウェア(たとえばWAS)のインストール済み、設定済み、最適化済みバイナリイメージ -- を導入します。Rainmakerにより、WebSphereイメージのカタログ化およびカスタム化(例:アプリケーションおよび関連した構成部品の追加)が可能になります(CVSの仮想イメージを思い浮かべてください)。Rainmaker技術により、こうしたイメージをイメージパターンに組み立てられるようにもなります。イメージパターンとは、10年間の確立されたベストプラクティスに準拠した、非常に可用性の高いクラスタを形成するイメージのグループのことです。Rainmakerはハイパーバイザにイメージを分配し、起動することもできます。内部に含まれるイメージやアプリケーションは、Rainmakerが絶えず管理、監視、最適化を行います。近々、胸躍るような発表を行いますので、Rainmakerから目を離さないでください。

Extreme Scale - 目標としているのは、待ち時間が予測可能で、効果的な価格対パフォーマンスの比率でありながら、毎秒何百万ものトランザクションを処理することです。この偉業を達成する手段を提供するのが、データグリッド技術です。WebSphere Extreme Scale (WXS)製品(リンク)はExtreme Transaction Processing  (超高速トランザクション処理)の中心的存在です - Java中心の環境/分散型環境においてCICS(リンク)とTPF(リンク)の特性を再現します。2008年にはWXS技術をWebSphereビジネスイベント(WBE/XS)に埋め込むことにより、ポートフォリオ全体への超高速トランザクション注入に向けて、また1歩前進しました。WebSphereの研究室ではWBE/XS(リンク)が毎秒数百万のイベントを記録しています。けれどもここが終着点ではありません。プロセスサーバー、ESB(リンク)、レジストリで超高速トランザクションを可能にしたいと思っています。2009年はさらに、WXSの上に位置するプログラミングAPIの拡張も検討しています。これには、REST API、単純なキャッシュAPIが含まれますが、オープンースのmemcachedや、最先端のmap reduce、ストリーミングAPIにインスピレーションを得ました。

WAS.NEXT - WebSphere Application Server(WAS)は誕生から10年経ち、メジャーバージョンも7つを数えるまでになりましたが、これまで以上のスピードで進化しています。2009年、WASチームは次期主要リリースに向けた作業で忙しくなるでしょうが、このリリースは画期的なリリースになるはずです。汎用サーバーの時代は終わり、特定の種類の作業負荷(たとえば、Web)に特化された、目的別専用サーバーへと進んでいます。V6.1からWASに搭載されているEquinox-based OSGiコアの上に構築するWAS.NEXT(リンク)は、「組み立て可能なアプリケーションサーバー」のプラットフォームにますます近づいています。プロフィールにより、WASサーバーはJEEや純粋なWeb、メッセージ交換、Extreme Scaleといった個性を持つことができ、それと同時に、そのプロフィールを実行させるためには最小のシステムリソースだけを経済的に使えばいいのです(たとえば、小さなフットプリントで超高速の起動が可能)。

RESTフル/アジャイル-2008年、WebSphereポートフォリオでRESTを可能にした私たちは、確実な前進を遂げました。要求に積極的に応え ているチームを非常に誇りに思っており、その中にはCICS、WebSphere (リンク)  MQMQ、WAS、WSRR、コマース、Portal(リンク)、Process ServerでRESTを可能にすることが含まれており、名前を挙げればきりがありません。2009年にやるべき仕事はさらにたくさんあります。特に、こ のRESTの取り組みに全体ついては、共通のREST APIがこうした製品の全部で必要です。WebSphereのRESTの取り組みを補完するのが、アジャイルなプログラミングへの取り組みです -- 具体的に言えば、WebSphere sMash製品(リンク)の特徴である、動的なスクリプティング機能(PHPおよびGroovy)です。2009年、Webベースのツールについても取り組みを続け ます。フォームに一層優れたサポートを追加する、「すぐに使えるウィジェット」をさらに追加する、といったことです。ビジネスパートナーも引き続き重視し ます。実際、来月のSugarCon(リンク)では私が基調演説をすることになっており、世界一高性能のPHPビジネスアプリケーションであるSugarCRM(リンク)が sMashの上でいかに動作するかをお見せする予定です。

DataPower-lution - DataPower-lution(リンク)はWebSphereのアプライアンス製品ライン (リンク)の進化のことです。WebSphere DataPower (DP) appliancesは2008年に顧客に最も人気を博したWebSphere製品でしたし -- その結果、2008年末までに新しいアプライアンス2種(B2BとLow Latency Messaging〔低レイテンシ・メッセージング〕)を追加し、製品ラインを拡張しました。2009年の景気見通しを考えると、顧客はさらにコストと時間を意識するようになるでしょう。DPアプライアンスは「価値を生み出すまでの時間」と「所有/オペレーション費用」において期待に沿うことが証明されています。何週間もかかる可能性のあるビジネス統合のタスクを数時間に短縮してしまうのです。ですから、2009年にはアプライアンスの増加を期待してください。DPは、新スタイルのアプライアンス向けのプラットフォームとしての役割をもっと果たすようになり、それはWASがPortalやProcess Serverといった「スタック製品」向けのプラットフォームになった筋書きに似ています。そのことを考えて、Rainmakerプロジェクトや「サービスとしてのミドルウェア」プロジェクトを通じて、クラウドコンピューティングや仮想化の分野にクロスオーバーするDPに期待してください。また、フラグメントキャッシングやミドルウェアの自己均衡、アプリケーションのコンテンツフィルタリングといった、アプリケーション最適化機能をネットワークの境界にまで移動することにより、「WebSphere Application Firewall」にも焦点を当てるDPに期待してください。この他に重視する分野としては、アプライアンス管理の改善(例:アプライアンスのクラスタのファームウェア更新)やIBM BladeCenter (リンク) の統合を介したアプライアンスのスケールアウトがあります。 

POWERにあふれたミドルウェア - 2009年はミドルウェアとIBMハードウェア、特にPOWER™ベースのハードウェアとの統合にひときわ力を注ぐつもりです。これにはPOWER6ベース(リンク)のサーバーのマルチコア能力を直接ミドルウェア(JVM〔Java仮想マシン〕ならびにJust-in-time-compile〔ジャストインタイムコンパイルラー〕)に活用することも含みます。もっとも単純なものとしては、POWERハードウェア上でWebSphereミドルウェアのベストプラクティスの構成を積極的にテストし、文書化することを意味します。たとえば、64ビットの最新POWERハードウェアとWebSphereプラットフォーム最新の64ビットサポートを組み合わせれば(JVMで64ビットのポインタ圧縮などの機能を利用)、記録的なトランザクションを処理するパフォーマンスをすぐに証明できます。Rainmaker/仮想化クラウド戦略の積極的な実装と並行して、仮想WebSphere環境の堅牢なセキュリティと分離を実現しながらミドルウェアを仮想化するには、POWERベース(リンク)のhypervisors〔ハイパーバイザ〕が重要な役割を果たします。

業界にぴったりのミドルウェア -製品ライン全域において、業界特有のどのような方法で顧客がWebSphere製品を利用するかに焦点を当てています。2009年も、銀行、保険、金融といった業界向けに「箱から出したら」すぐに使える価値を提供することにおいては、引き続きWebShpereミドルウェアが天下無敵の存在となるように努力するつもりです。たとえば、2008年にはInfodyne(リンク)を買収しましたが、この買収により金融市場向けビジネスに大きなはずみがつきました。Infodyneの技術の採り入れには迅速に取り組みましたが、その中には、非常に効率的な市場データフィードのハンドラをWebSphere Low Latency messaging (リンク)と組み合わせることも含まれており、WebSphere Front Office製品(リンク)と新しいDataPower XM-70の両方に組み入れました。2009年も、Webifyから手に入れた資産を引き続き利用し、WebSphere Business Services Fabric(リンク)を構築します。これによりビジネスユーザーは、業界を意識した新規のビジネスプロセスを迅速に組み立てたり、業界にぴったりの用語集やタスクを定義したりすることが可能で、既存のIT資産から新規のタスクを作成できるようになります。

これまで説明してきたトップ10の技術分野に焦点を当てることにより、WebSphere製品ラインに確かに新しいレベルのアジリティと「価値を生み出すまでの時間」の短縮がもたらされますが、今回説明しなかった興味深い技術的取り組みも十数種類(あるいはそれ以上)、WebSphereの世界では進行中です。このように高いレベルの投資と革新を行っていることを考えると、2009年という年は確実に、WebSphereの顧客をさらに10年間満足させ続けるための土台を築き上げるための一年となるでしょう。

Gennaro "Jerry" Cuomo氏(リンク)はIBMのフェローであり、IBM WebSphere Softwareの創立者のひとりです。現在WebSphereのChief Technology Officer(最高技術責任者)を務めているCuomo氏の最も重要な目的は、「WebSphereの未来をはぐくむ」ことです。

 

原文はこちらです:http://www.infoq.com/articles/cuomo-websphere-trends-2009
(このArticleは2009年1月21日に原文が掲載されました)

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