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クラウドベースのマルチエンタープライズ情報システムはエクストラネットを凌駕するか?

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クラウドコンピューティングは、現在、最重要な技術の一つとして急速に成長しています。それは、グリッドコンピューティング、仮想化といったいくつかの結実した技術から始まりました。そして、SalesForce.comの革新的なサブスクリプションベースのビジネスモデルやAmazonのEコマースプラットフォームを拡張するための努力があります。ごく最近では、大手ソフトウェアベンダーが以下で定義される(PPT)クラウドコンピューティングに関心を示してます。

「データとサービスが巨大でスケーラブルなデータセンターに存在し、インターネット上で結合したすべてのデバイスから偏在的にアクセスすることができる新興のコンピュータパラダイム」

個人的には、クラウドコンピューティングは多くの革新を促すものであると思っているので、それがエキサイティングなものであると感じています。その理由の一つに、それがコストの低減や、革新にかかるリスクを減らすために、利用単位での支払を提供していることがあげられます。しかし、主な理由は、それがさまざまな組織が共有する情報システムを構成するのに使用されるインフラを提供することにあります。彼らは、マルチエンタープライズ情報システムという共通の目的を達成しなければなりません。

本稿では、クラウドコンピューティング時代のマルチエンタープライズ情報システムのアーキテクチャにフォーカスします。第一部では、クラウドコンピューティングの簡単な紹介を、第二部では、クラウドでのマルチエンタープライズ情報システム(MEIS)にフォーカスします。

クラウドコンピューティング序論

多くの点において、クラウドコンピューティングはよくある「やっかいな」問題を他の誰かの問題にすることを目的としています。

  • 設備投資とリスク
  • ユーザー要求や作業負荷をもとにしたスケールアップやスケールダウン
  • サービスレベル合意の管理
  • 問題や出来事の管理
  • 特にコンプライアンスの理由から、ソフトウェアの新しいバージョンへシームレスにアップグレードすることができる
  • データ、プロセス、インフラの保護
  • 障害復旧の目的で、冗長なデータセンターをサポート
  • インフラの老朽化を効率的に管理
  • …            

私たちは、それぞれを構築するクラウドコンピューティングのパラダイムを3つのタイプで区別します。

  • サービスとしてのインフラストラクチャ (IaaS)
  • サービスとしてのプラットフォーム (PaaS)
  • サービスとしてのソフトウェア (SaaS)

IaaS は、Amazon Webサービス(AWS)(リンク) が一番の代表格です。その中心として、アマゾンは3つの基本サービスを提供しています。ストレージ(S3)、コンピューティング(EC2)、クエリー(SQS)です。サービス型インフラストラクチャの重要な価値命題は「Elasticity(弾力性)」、すなわち所定のタイミングでの利用をベースとしてインフラ要素の増強や削減ができることにあります。たとえば、Amazonは1時間単位のサーバーの課金とGb/月単位のストレージの課金となります。

PaaS は、IaaS上で一般的に構築される一連のツールに参照をつけ、資本の支出が少ない間は、その弾力性、堅牢性、安全性からメリットを得ます。PaaSの目的は、開発者がクラウドをホストとする情報システムを構築できるようにすることです。最近のPaaSでは、クラウドでのサービスの利用が享受でき、プレゼンテーション層ではWebやマッシュアップ技術で十分に統合される必要があります。

たとえば、サービスとしてのBPMはPaaSの特殊タイプです。現在、大部分のPaaSがプロセス中心よりもデータ中心です。一般的に、それらは作業に必要となるデータモデルやさまざまなフォームやビューを定義することができます。通常、ビジネスロジックはMVCパターンを受け、アクションの範囲内でスクリプト化されています。データ中心のPaaSは、ビジネスパートナー間のアクティビティを協調するシステムを構築することが困難となります。

PaaSの背後にある核となる革新の一つに、開発者ツール、アジャイル方法論、多様な目的でのプログラミング言語でなくドメイン特化言語(DSL)の大規模な利用を目的とした、Web2.0技術の活用を一体としたDev 2.0パラダイムの出現があります。Dev 2.0により、開発者は生産性がより向上し、非開発者が、ビジネスプロセス、ビジネスルールといったビジネスロジックやフォーム定義の重要な要素に関する定義や妥当性確認に参加することができるようになります。

多くのPaaSに共通するもう一つの核となる革新として、プレゼンテーション層を通して、または、(クラウドベースであっても、そうでなくても)新しいソリューションで構築されるサービスのセットとして、透過的に情報システムを公開することができます。

SaaS は、「サービスとしてのソフトウェア」を利用することが実際に可能で、費用対効果があり、安全であることを示したSalesForce.comによって開拓されました。彼らはこのパラダイムの力を証明し、その後でクラウドコンピューティング全体のエコシステムを構築しました。

現在、クラウドコンピューティングは、多くの点で破壊的です。

  • 財政的な観点では、クラウドコンピューティングは多くの難題を相互的なものとし、その資産を所有する人にすべてのリスクを押しつけます。企業は、自身の利用をベースとした特定の資産セットを借りる「居住者」となります。購入したソフトウェアの平均50%が一度も利用されないからこそ、IT の設備投資を運用コストに転換することに喜ばないCFOがどこにいるでしょうか?
  • 開発の観点では、Web2.0と結合したクラウドコンピューティングは、すべての人が開発やQAのプロセスに参加するために、ビジネスロジックの一部を所有することができます。変更が、数週間や数か月でなく、数分、あるいは数時間で展開されることが可能です。
  • 作業活動の観点では、クラウドコンピューティングは、企業が組織の境を越えて人々を巻き込み、彼らの仕事を果たすために必要な知識でもって、彼らに力を与えることが可能です。

マルチエンタープライズ情報システム

MEISのゴールは、すぐにパートナーシップを結び、可視性を改善し、例外を管理し、電子的なデータ交換を容易にし、コンプライアンスを支援し、合弁事業や合併を加速することです。

今日まで、マルチエンタープライズ情報システムは、特定の活動について協調する組織の一つによってホストされたポータルを利用してきました。たとえば、供給業者のためのOEMポータルや、小売業者のための代理店ポータルなどです。

このアプローチは、その組織の一つが構築、維持、オペレーション、ポータルにかかるコストすべてを負担しているので、とても非効率で、危険性や非柔軟性をもたらしています。通常、ビジネスプロセスは非常にシンプルなもので、すべての組織の共通項となるものです。最後に重要なこととして、彼らがプレゼンテーション層に関連するサービスを必ずしも公開するわけではないことから、ポータルは組織のシステムとプロセスと統合しにくいことがわかります。

今日、クラウドコンピューティングはマルチエンタープライズ情報システムの実現を可能とします。そこでは、各組織がシステムの発展に寄与することができます。要するに、組織のレガシーシステムとWebベースのインターネットアプリケーションのすべてにおいて、より優れた統合機能を提供するので、開発コストを相互的なものとします。

図1 . MEIS技術アーキテクチャ

図1は、サービスとしてのプラットフォームを基盤として構築したマルチエンタープライズ情報システムの要素を示しています。それらには、以下が含まれます。

  1. 柔軟なプレゼンテーション層
  2. 開発者や非開発者が利用可能である高度なDev 2.0ツール
  3. ビジネスアクティビティの監視、レポートツール
  4. PaaSエンジンをホストしている世界レベルのインフラストラクチャ
  5. シングルサインオンサービス
  6. サービスレジストリ
  7. SalesForce.com、Dun&Bradstreet、FedExConnectors…といったSaaS プロバイダとの連携
  8. レガシーシステムとの統合

プレゼンテーション層は、異なる技術や広範囲にわたるデバイス(ブラウザ、携帯、RFID…)でユーザー作業の遂行を支援するのに十分な柔軟性をもつ必要があります。

開発ツールは、いくぶん技術に中立で、標準ベース、直感的であり、実行、QA、配布プロセスを迅速にサポートする必要があります。

ビジネスアクティビティの監視やレポートは、それぞれの組織のニーズに応じて容易にカスタマイズ可能でなければなりません。

理想的には、MEISが構築するPaaSは、弾力性、堅牢性、信頼性と安全性を提供する世界クラスのIaaS上でホストされます。

組織と職務は管理が容易で、可能であればシングルサインオンの基盤に頼る必要があります。それぞれの組織は、他の組織の支援なしで自身のユーザーを管理できなければなりません。

よく知られているサービスやソリューションへの連結は、高価値なMEISを開発し、事業計画や市場情報を組み立てるための必須要素です。これらとの連結では、Webベースの技術(SOAP、REST、ftp、http、など)とフォーマット(EDI、XML、など)のすべての組み合わせの利用においても、これらのサービスに対して技術を選ばないアクセスを提供する必要があります。

ヒューマンワークフローは、MEISの中へシームレスに統合されなければなりません。MEISプロセスの構成内容は非常に反復的です。そして、プロセスは人間中心から組織の自動化へと進歩すると考えられます。つまり、その進化はできるだけ容易でなければなりません。

最後に重要なこととして、プラットホームは各々の組織のレガシーシステムとの効率の良い統合を保障しなければなりません。特にこのことは、プラットフォームが、協調が発生するパブリックプロセスと統合が発生するプライベートプロセスをサポートしなければならないことを意味しています。

プロセス中心のPaaSの論理構造は、図2で示されます。多くのPaaSがデータ中心で、モデル化の機能を提供せず、プロセスを遂行します。この種のビジネスロジックは、変更、監視、報告を困難にしているMVCフレームワークによって、うんざりするほどコードを書かなければなりません。

マルチエンタープライズ情報システムは、協調作業を遂行し、アクティビティを同期化する手助けとなるので、プロセス中心のPaaSを使用することはマルチエンタープライズ情報システムにとって極めて重要です。現在は、この同期化は大抵の場合がEメールやFaxを通して行われ、エラーや不整合につながります。たとえば、航空宇宙業界では、重要なマルチエンタープライズシステムの一つに部品の輸送と受取があります。これらの部品の輸送や受取が行われる際に、供給者と購買者の両方がその部品の主要なプロパティを測定する必要があります(寸法など)。そして、それらの結果を比較します。寸法エラーやもともとの相違などがあれば、それらすべてが管理の必要性がある例外となり、将来的に監査の対象となります。このことは、企業間でのトレーサビリティにとってとても必要であることを示しています。これは、たとえば化学薬品や調合薬といった他業界では一般的なことです。

 

図2. プロセス中心のPaaS論理アーキテクチャ

結論

ビジネスコミュニティ(たとえば、サプライチェーンなどの業界)では、コミュニティ全体の消費に対してITリソースを提供するための能力(願望ではなく)を持っている単独のビジネスパートナーは存在しません。プロセス中心のサービスとしてのプラットフォームで結合されたクラウドコンピューティングは、新しいレベルのエンタープライズシステムを開発するためのまたとない機会を提供してくれます。それが、マルチエンタープライズ情報システムです。

最も発展する選択を着実に実行している間、サービスとしてのソフトウェアは、(インフラからビジネス情報やパートナー管理に至るまで)Webを通したアクセス可能性を提供するさまざまなサービスとしての-への道を開きます。SaaSを「ソフトウェアとしてのサービス」と読むとき、「クラウドコンピューティング」全体の大きさが分かります。大きくても小さくても、マルチエンタープライズ情報システムは、すべてのビジネスにとってこれらのサービスを実用的で価値のあるものとして作ることが目的です。

著者について

Matthieu HugはRunMyProcess.comのCEOであり、プロセス中心のPaaSプロバイダーです。彼はSupElec(フランス国立電気工業大学)を卒業し、ジョージア工科大学で理学修士を取得しました。

 

原文はこちらです:http://www.infoq.com/articles/will-meis-replace-extranets
(このArticleは2008年12月19日に原文が掲載されました)

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