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日立ソフト中村氏が仮想化技術の活用事例を語る

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1. 中村さん、今日はお時間頂きましてありがとうございます。昔はJavaのエバンジェリストということでいろいろなセミナー等でお顔を拝見する機会が多かったのですが、 最近はあまりそういった講演活動というのはちょっとご無沙汰されているように私は感じているのですけれども、実際は違ったビジネスも始められている、というようなウワサも聞いておりまして、今日はそのへんのところを可能な範囲でお聞きしたいと思っています。早速なんですけれども、現在従来のJavaの事業からどんなことをされているのか、ちょっとそのへんの片鱗をお聞きしたいと思います。

Javaはですね、もう10年ぐらい前になると思うのですけど、一番最初の4~5年ぐらいは突っ走って、そういう意味ではそれなりに有名なシステムをJavaで作っていたのですけど、言ってみれば非常に技術がコモディティ化したので、それはもういいかな(笑) と。
まぁ、うちの社内でも誰でもやるようになったので、(彼らに)やってもらえればいいかな、と。
その後若干個人的には4年ぐらい、会社の全体のストラテジーを決めるセクションでやっていたのですが、ここに来てSaasだとか、サービスだとかいうものがムーブメントで上がってきたので、また幹部の方からご指名がかかりまして、なにかサービスビジネスをやれ、ということで、実は今仮想化というのに取り組んでいます。

   

2. 仮想化というキーワードは最近非常にあちこちで聞く機会が多いのですが、具体的にビジネスとしたときにどうなのだろう?というところはみんな非常に模索をしている状況だと思うのですが、具体的には、仮想化のビジネスと言ったときに、どのようなことを現状されているのでしょうか?

まず、今のプロジェクト自身は、2年ぐらい前からやり始めたわけです。
きっかけは今日立ソフトでは、だいたいプロジェクトを、社員・パートナーの人を含めて1万3000人くらいで回しています。全てのプロジェクトを。
ある時サーバを棚卸ししようということでやってみると、社内で1600台もサーバがありました、という話がありまして、その内約8割9割がPCサーバなので、たまたま今から2年ほど前なので、そろそろ現場も64ビット系のベースにした開発というのが入ってくるときに、このまままた64ビットのサーバを1600台買うというのは、話になりませんということがきっかけで、その時に仮想化を使ってまずは社内の開発サーバをうまく集約できないか、ということをやり始めたわけです。
これが2年前の話です。

   

3. 非常に面白い話ですね。

そうですね。たぶん世の中でVMWareだとか、Xenだとかがちょっと会話になり始めたか、2年前だったらなり始める前ぐらいですよね。
それから、結局私の方は社内をやっていても仕方がないので、それをお客様に提供しようということで、プランニングを半年ぐらいで、去年の今頃、ちょうど一年前に「SeucreOnline」と言うブランドを立ち上げたのです。それを今やっています。

   

4. 社内の仮想化を実際に使われていて、実際の使用感って言うのでしょうか、社内の方々の意見であるとか、実際の評価といったような所はどのような感じなのでしょうか?

まず、一番最初に来るのが、抵抗勢力なのですよ (笑)。
それはどこでも同じで、どうもこの業界って、モノ作りの人というのは自分の席の横にサーバを置きたがる人が多くてですね、よっぽどかわいいのかと思うのですけど、だから仮想化なんかだと遅くてダメなんじゃないか?と、あるいは、プログラムのインストール一つとっても、自分の席の横で、そこにCD-ROMをセットして、インストールしないと不安で仕方がない、コンソール使うのはイヤだ、という人が結構いるんですよね。
で、それを取り上げるわけですから。
具体的に言うと、うちのデータセンタにある種巨大なサーバを置いて、今の我々の場合はVMWareのESX Serverを使っているんですけど、そこでVMを作って各現場に使わせているわけです。
だから、そこの不安感が一番大きかったわけなのです。不安感が。

   

5. そのへんのところは現状ではかなり解消してきているということですか?

だいぶ解消しました。社内(で使い始めた頃)から言うと2年経っていますので。
結局仮想化のポイントというのはメモリ(の容量)なので、メモリを現場の言うとおり4GBだとか、それぞれ与えていると、あまり仮想化のメリットは無いわけです。我々の経験から言うと、実は今のウチの社内の標準モデルというのは、メモリ1GBでハードディスク10Gなのです。
当然増やすことも出来るのですけど、まずはこれで使ってください、とやっているわけですよ。
この抵抗感がすごく大きいのです。まず。
通常だったら2G(のメモリ)で、例えばハードディスクなんかそれこそデスクトップだったら500GBだとかいう感じに出来る世界があるのに、どうして1GBで10GB(の容量)なの、という話になるのですが、まずはそれで使ってくれ、と(言っています)。
現実問題でやってみると、ほとんどの人が(メモリを)1GBも使っていないわけです(笑)。現実問題として。
ということは、 我々社内でも課金するわけだから、メモリが増えればそれだけたくさんの課金になるわけですけど、現実問題として1GBで済んでいます。
ディスクに関してだけは、20GBにすることもあるのですけど、それはもうどちらかと言えば少数派で、もう6割7割は10GBで全然満足しています。まぁ、それはサーバだからというのもあるのですけどね。

この前1年間くらいやってきて、非常に面白かった話は、ある基幹系の会計システムを開発していて、それも似たような環境で仮想化をやっていて、組み合わせテストも終わって、いよいよ本番機で性能(テスト)もやらないといけないとなったときに、本番機の、しかもブレード、しかもベアで使うわけなのですが、そこに持って行ったらなんとうちのSecureOnlineという仮想化よりも倍遅かった(笑)という問題が(ありました)。
で、何でだろう、と、ベアなのに、こちらは仮想化しているのに、という話になると、それはやはり、うちの方が例えば(CPUが)Intel Xeonの3GHzを使っているんだけど、実は本番機というのは1.6Ghzぐらいのチップだ、という話になっていて、 たまたまうちのセンタ(での作業)の時にその人はたまたま夜走らせていたので、フルフルに使えていた、と。まぁ、そりゃ遅いですよね。
ただ、その後もいろいろチューニングをかけたのですけど、結局データセンタというのは、SANのストレージを置いたりしているので、かなり足回りはしっかりしているわけです。だから、そういう意味では実はかなり速いのです。その時の結論というのは、これはマジな話で本番環境に耐えるよね、という議論が出てきたぐらいなのです。それはお客さんと契約して納めることになっているから、それはそうなのですけど、現実問題としてすでにそういう問題が起きているのです。で、これはかなり現場にとってショックだったようですね。自分たちの価値観が間違っていた、ということなので。
それくらい仮想化技術というのは今成熟してきているのです。

   

6. いま実際社内で使われている仮想化のボリュームはどのような感じですか?

いま社内では、サーバ中心の用途なのです。サーバ中心の用途で、やっと2年で200VMぐらいです。ですから、もともとさっきからお話しているように、1600台あるわけです。2年前に。それ以降、基本的に現場ではサーバ、ハードは買わせていないので、そうすると、償却が進んでくるからだんだん滅却していくじゃないですか。徐々に。たぶんうちの場合だと3年ぐらい経つとだいたい全部入れ替わるぐらいになるのです。で、今で200台。たぶんこれから加速してくると思うのですよ。
いい噂が立っているので(笑) 。先ほど言った速かったっていう噂が立っているのです。

   

7. じゃあ、意外にVMの技術というのは、かなりいいとこまで来ているということですか?

プレスもそうなのですが、 サーバコンセントレーションの話ばっかりするんですね。要するにサーバって集約したらかなりコストダウンになるし、という話ばかりするのですが、実はそれ以上に現場にとって大きいのは管理・運用によるコストなので、管理によるコストはあきらかに楽なのですね。仮想化技術というのは。
要するに、Cドライブがバーチャルな、ファイルみたいになっているだけだから、コピればいいわけですよ。どこかに、バックアップを取るにしたって。ですから、いちいちやれハードがどうのこうのという話はなくなるわけです。

それから、結構多いのがドライバの問題で、いままでのハードであれば、やれネットワークのチップがどうだこうだとか、SCSIのメーカーがどうのこうのということで、Windows一つインストールするにしても、当然それ用のドライバを差し替えているわけじゃないですか。 で、仮想化の場合というのはそのへんをすべてVMが吸収してくれるわけなので、下のハードがですね、日立のブレードであろうが、IBMのブレードであろうが、例えばVMWare一つ入れてしまえばその上のゲストOSでやるVMは、毎回同じドライバをつついているだけなのですよ。だから、そのあたりの楽さ加減?というのがSEの人にとってはすごくここは楽なのでしょうね。

   

8. ソフト開発ですと、例えばOSのバージョン管理とか、ミドルのバージョン(管理)とか、いろいろ絡む要素が多いと思うのですが、そのへんの管理もかなり楽になるのでしょうか?

かなり楽になります。例えば私どものパッケージをクライアント側に目を移すと、秘文だとかいうセキュリティパッケージがあるわけですけど、それは当然ながらVistaにも対応をしないといけないし、XPのメンテもまだまだやらないといけないし、もっと言うと(Windows)98までやらないといけないといけないし、NTもあったりだから、今まではそのためにハードそのものをある程度確保しておいてですね、普段はほとんど電源を入れることがない。マシン(の電源)を。
それを仮想化で職場から無くすことができるというのが、結構大きな話になってくるわけです。楽なのです。
だから、あのときの環境に戻すだとか、そういったことが今までは非常にフィジカルな世界でやらないといけなかったのが、仮想化技術でもって、キーボードタイピングで前のやつが復活したりだとかというところが、徐々にこの2年やってきて、現場で気づいてきて、いったん気づいてそれで楽になってくると、離れられない、戻れない、ということになります。

   

9. やはり非常に面白い技術だと思います。今後の可能性というのでしょうか、仮想化技術についての可能性についてはどのようにお考えですか?

今ですね、元々は社内及び外に対してサーバの代わりにうちのSecureOnlineという、月額レンタルのVMを使ってくれ、というやり方をやっていたのですが、例えば半年前から私どもの(グループ)に日立建機という会社があるのですが、そこで今、実はもう200人を超えて300人ぐらいの人が使ってもらっているのです。
その使い方は実はサーバじゃないのです。クライアント、デスクトップ環境として使っているのです。何を言わんとしているかというと、実はその日立建機プロジェクトの200~300人という人は、日立建機のシステムを作ってもらう外部のパートナーの人が使っているのです。外部のパートナーの人が日立建機の工場に入場して作るのではなくて、いまだいたい10社ぐらいなのですが、それぞれが、それぞれの自分の会社にいながらうちのSecureOnlineの中のVMにそれぞれが入って、それで開発しています。サーバは日立建機のAIXマシンなので、日立建機のセンターにあるのです。そのAIXマシンを置いているサーバ(ルーム)と、我々のデータセンタのSecureOnlineをVPNで太い線でつないで、協力会社の人は、われわれのVMのところに、それぞれがシンクライアントで入ってきて、ここで作っているわけです。それとこっちからのサーバと(日立建機のサーバを)連携して作っているわけです。

そうすると、一つは皆さんに集まってもらわなくてもご自身のオフィスで(開発が)できますよ、という話と、実は意外と日立建機さんからありがたいと言われているのが、全ての開発環境のバージョン、リビジョンが統一されていることなのです。開発ツールのリビジョンも統一されているし、Windowsのバージョンも統一されているし、みんなが同じ開発環境の、同じバージョンやリビジョンで作っているので、後で組み合わせしたときの、誤解だとか、良くあるじゃないですか、たまたまこちらは(バージョンやリビジョンを)上げていなくて、こちらは微妙に上げているとかいうのが全くないので、統制がとれているのです。

そういうところが新しい取り組みで、実はクライアント集約というか、最近の流行りだと国内オフショアとか海外オフショアだと言っているものも、中国にせっかく発注しているのに、最後のテストの時だけ日本に来てもらうから単価が上がってしまいますね、という話が皆さんあるのですけれでも、中国から我々のSecureOnlineみたいなバーチャルなもの(開発環境)に入って、 共有してやるわけですから、来なくて言いわけです。そういう分散開発、国内・海外分散開発をデータセンタのVMで集約してやると言うところが、実はいま一番うちのなかでホットになっています。

   

10. 面白い考え方ですね。

VMWareさんが非常に喜ぶのは、サーバだとVMのライセンスが限られるのですが、クライアントに急になると人数分だけはけるものだから(笑)。そういう形が今ブームになりつつありますね。

   

11. 逆にシンクライアントである関係で、やはりセキュアな環境が担保されるのでしょうか?

ドキュメントが海を越えないわけです。我々のシンクライアントソリューションというのは、USBキーだけを渡すのです。そのUSBキーにLinuxベースのリモートデスクトッププログラムが入っているわけです。ですから、通常のパソコンというのはUSBブートが出来るやつが多いので、そのキーを挿してブートしてしまえば、ハードディスクを使わないシンクライアントになるわけです。
それでうちのセンタに入ってきて皆開発をするので、そこで作ったドキュメントが海を渡らなくなっている、というところが大きいです。

2008年5月20日

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