BT

最新技術を追い求めるデベロッパのための情報コミュニティ

寄稿

Topics

地域を選ぶ

InfoQ ホームページ ニュース アジャイル導入は組織構造から着手するべきか

アジャイル導入は組織構造から着手するべきか

原文(投稿日:2014/12/04)へのリンク

ある組織にアジャイルを採用しようとする時には,その構造を変えなくてはならない場合が少なくない。アジャイルな仕事の進め方は,新たなプラクティスをチームとマネージャに課すだけでなく,通常は組織の文化や思想にも影響を及ぼす。これらのすべては関連しているが,同時にすべてを変えるというのは,組織にとってあまりにも大きなチャレンジかも知れない。そこからひとつの疑問が生じる – アジャイルに移行しようとするとき,我々は何を重視すればよいのだろう – 文化,プラクティス,それとも組織構造だろうか? 組織構造から着手すると何が起きるのか,ここで確認してみたい。

Mike Cottmeyer氏は,大企業のアジャイル移行に関する自身の意見を公開した。アジャイルの導入において,文化,プラクティス,組織構造はすべて互いに関連している,と氏は言う。

アジャイル宣言の冒頭に,“私たちは、ソフトウェア開発の実践あるいは実践を手助けをする活動を通じて、よりよい開発方法を見つけだそうとしている。”とあります。私たちがアジャイルを実施する方法は時間と共に変化するべきであり,さらにその変化もまた,アジャイル宣言の価値と原則に基づいたものであるべきです。問題はその価値と原則が,私たちが実践しようとしているプラクティスと構造を規定するものである,という点にあります。価値と原則は,それ自体で,何もないところに存在しているのではありません。アジャイルの実践に成功するためには,価値と原則の存在を可能にする展開システムとサポートプラクティスの存在が必要です。

さらに氏は,巨大かつ複雑な大規模組織では,アジャイル採用をどのように始めればよいのだろうか,と自問する。最初に変えるべきなのは何か – 組織文化に的を絞るのか,新たなプラクティスを導入するか,あるいは構造を変えるべきなのか?

多くの人たちは,‘巨大で複雑’であることが問題なのであって,‘小さくシンプル’であることが必要だ,と言います。私もそう思います ... しかしながら,それらの組織はすでに巨大で,複雑なのです。従って問題は,そのような会社がどうすれば小さく,シンプルになるのか,ということになります。BIGはよくない,SMALLが望ましいと言うだけでは,何の役にも立たないのです。どうすればよいのか? AからBへはどうやって行けばいいのか? アジャイルの価値体系を取り入れるだけでよいのか?適切な価値システムが存在すれば,適切なデリバリシステムとプラクティスが現れるのか? 適切なプラクティスがあれば,デリバリのエンドツーエンドシステムに影響を与えて,必要な文化的変化を実現できるのか?

Tirrell Payton氏は,スクラム採用に関わる5つの一般的な問題について,ブログ記事を書いている。問題のひとつとして氏が挙げるのは,既存の機構がアジャイル採用の成功を妨げる可能性だ。

最大のピットフォールは,組織のリーダ部門が,既存の組織構造や階層にスクラムを無理やり合わせようとすることです。この場合に起こり得る変更は,次のようなものです。

  • 唐突にスクラムマスタの役割になったマネージャが,これまでと同じような指揮統制型のリーダシップを使い続けること。
  • チームのコンセプトがなく,独善的な作業を続ける個人。
  • 役割に関する知識や責任,時間的コミットメントを理解することなく,作業を背負わされたプロダクトオーナ。
  • マネージャに不当な干渉を受けるスクラムマスタ。

氏によれば,アジャイル導入に必要な組織構造の変更を行うには,幹部によるサポートが必要だ。

上級管理職は,アジャイル転換が大きな組織的変更であって,単なるプロジェクトレベルのコーチングではない,ということを理解する必要があります。従って組織の全サポート機能が,アジャイル転換をサポートする必要があります。

アジャイルの採用には,上級管理層による数多くのサポートや指示が必要な場合があります。階層にトップダウンで変革をプッシュしたら,継続的にその進捗を監視して,折りに触れて表面化する組織の実装を取り除かなくてはなりません。

Alok Kumar, Frank Castagna, John Maherの3氏は,Scrum AllianceのWebサイト上で,企業レベルでのアジャイル採用における課題と検討について記事を公開している。組織がアジャイルを採用するには,そのオペレーションの構造と管理方法を変える必要がある。

現在の世界において,企業は,ユーザの期待に応えて競争を勝ち抜くため,リーンで敏捷であることを非常に重要視しています。そのためには,ビジネスとシステム,そしてオペレーションの効果的なコラボレーションによって,革新的なソリューションを迅速かつ効果的に提供することが必要です。アジャイルは,ビジネスと開発の間のギャップに橋渡しをするための,基本的なコンセプトを提供します。しかしながら,これらのコンセプトをプログラムやポートフォリオのレベルに垂直展開するには,運用に関するパラダイムシフトが必要なのです。

すべてのレベルでアジャイルを導入するには,トップダウントレーニングが必要だ,と氏らは言う。組織の文化と構造を変えることが必要なのだ。

アジャイルはリーンメソッドです。従って,すべてのレベルのマネージメントがリーン思考に触れることが,彼らの管理アプローチのシフトには重要なのです。アジャイル文化の導入,サポート,促進,そして自律的なチームのサポートに必要な組織体制と職制の移行によって,すべてのレベルでの混乱を劇的に削減することが可能です。

Mike Cottmeyer氏は,アジャイルの採用は組織構造の変革から始めるべきだ,と自身のブログ記事に記している。

アジャル文化とアジャイルプラクティスは,長期的に安定した組織のアジリティのために不可欠であると,私は強く信じています。そうは言っても,自分自身でそうなるように訓練したり,考え方を変えることができるとは到底思えません。まずはチームを基本とした組織設計から始めなければならない,と私は思います。リーン/かんばんの原則に基づいたガバナンスモデルの適用によるチーム間の価値の流れのコントロール,WIPの抑制,需要と供給のバランスの確保,ボトルネックの特定と対処,デリバリシステム全体の改善のための投資,といったものが必要です。アジャイル文化の発現やアジャイルプラクティスの拡大は,このような組織においてあ初めて可能になるのです。

構造が先決であり,次いでプラクティス,その次が文化だ,と氏は言う。

まずはビジネス上の目標や組織モデルをベースとしたチーム構築戦略の明確化や,反復型デリバリの原則に基づくモデルといったものを重視し,デリバリとガバナンスにアジャイルとリーン方法論を用いながらも,既存の組織とそのポリシの運用的および文化的制約の中で始めていくのがよいでしょう。

Tirrel Payton氏は,構造を変えないことがアジャイル導入の妨げになるかも知れない,と述べている。

既存の組織構造や階層にアジャイルを無理に合わせないでください。実際に,自分たちの既存の構造や階層に合わせてアジャイルフレームワークを変えている企業がたくさんあります。これが最も大きな誤りなのです。

前出のAlok Kumarら3氏は,アジャイル導入の開始点として,転換計画の立案を勧めている。

“作業を立てよ,立てたら実行せよ。” CMMとCMMIの父であるWatts Humphrey氏は言っています。“行き先が分からなければ,どの道を行っても同じだ。” つまりこれは,アジャイル導入を指導するエージェントが,彼らのコンサルティングするチームにとって,キャッチアップや理解内容の訂正,コンテキストのリセット,障害物の除去といった立場に程なく追いやられるということです。

可能ならば組織構造を変革した方がよい,と氏らは言う。

組織が構造を簡素化できるならば,それに越したことはありません。そうでないのならば,チームを移動させる前に,依存関係を前もって低減するために,プログラムレベルでのアプリケーションの統合を計画してください。

読者はアジャイル採用の際,構造変革から着手するだろうか?

この記事に星をつける

おすすめ度
スタイル

BT