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Amazon EC2、Google App Engine、Microsoft Azureの比較

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MicrosoftがPDC 2008の開催中にAzure(青空)プラットフォーム(参考記事)でクラウド(雲)に入り込んできたことで天気の見通しが変わってきた。そんな今の市場における3強、Amazon、Google、そしてMicrosoftを比較してみるのはなかなか面白そうなことだ。それらは一見すると互いに競合しないようにも見える。

Ziff Brothers Investmentsの副社長Michael J. Miller氏がクラウドコンピューティングにおけるこの3者を比較している(リンク)。まずAmazon EC2についてはこう述べている。

一番関心を集めてきたクラウドプラットフォームは間違いなくAmazon Web Services(リンク)です。これはさまざまなツールの集まりで、そのほとんどが低レベルにおけるツールです。その中でも一番関心を集めているのはAmazon Elastic Computer Cloud(EC2)と呼ばれるもので、必要な時に好きなだけ「処理ユニット」を自分のアプリケーションに割り当てられるウェブサービスです。具体例をあげると、1つのサービスインスタンスはデフォルトで1つの「仮想コア」と、1.7GBのメモリ、160GBのインスタンスストレージ(そのセッション内でだけ使えるストレージ)を10セント/時で利用できます。これに加えて、AmazonのSimple Storage Solution(S3)を50GBまでなら1GBにつき1月で15セントで利用でき、それ以上使う場合はトランザクション量に応じて追加課金されます。

このAmazonのプラットフォームの基本的なメリットはシンプルであることです。ユーザーは好きな時に好きなだけのストレージを使うことができるのです。

Google App Engineについてはこう述べる。

GoogleのApp Engine (リンク)はAmazonのEC2より新しいものです。まだ無料のベータ版で提供されていて、今のところ使えるツールも限定されています。私の理解では、 Amazonがどんなソフトウェアでもインストールできる仮想マシンを提供しているのに対し、GoogleはPython言語とDjango開発フレームワークとGoogleのBigTableデータベース/ストレージシステム、そしてGoogle File System(GFS)から成り立つ決められた環境のみ提供しています。今は500MBのストレージと1ヶ月あたり500万ページビューまでが無料で利用できます。そして有料版になった時にそれ以上リソースを使用した場合の価格体系も示されています。たとえば、CPU1時間使用あたり10から12セント必要になる(リンク)ことをディベロッパは想定するようGoogleはアナウンスしています。

App EngineはGoogle自身が使っている環境と密接につながっているため、Googleのフレームワークを知っているディベロッパにとっては比較的簡単に始められます。しかしAmazonのシステムより制約が多いことを理由にApp Engineを試していないディベロッパもいます。

MicrosoftのAzureについては、こう述べる。

Amazon Web Servicesと同じように、Azureは共通のプラットフォーム上のさまざまなサービスから成り立っています。・・・ 中でも.NET Servicesは、そのプラットフォームで最初に開発をおこなうのが.NET Servicesだろうと考えるディベロッパが多いために、今一番関心を集めているサービスです。確かに私が参加したセッションの中では、.NETフレームワーク向けにVisual Studioで開発されたアプリケーションが比較的簡単に「クラウド」へ移すことができるようでした。

Azure が大きく異なるのは、AzureのサービスをMicrosoftがホストして提供しようとする一方で、ローカルマシンや企業のサーバ上で稼働するように設計されているプラットフォームであることです。このことでアプリケーションのテストは簡単になるでしょうし、企業アプリケーションを企業内のネットワークでも外部のネットワークでも動かせるようにもできるでしょう。

Miller氏は比較をこうまとめている。

この3者を見ると、それぞれが自分の強みを出そうとしていることがお分かりでしょう。Amazonはこの市場での先駆けで、インターネット標準とオープンソースのプラットフォームを非常に柔軟なプラットフォームを作るために活用しています。Googleは巨大なデータベースと社内の開発手法によって得られた自社の成果を、強力である一方で限定的な環境に活かしています。そしてMicrosoftは、ディベロッパとツールが多い強みを活かしておそらく最も構成サービスの多いプラットフォームを作ろうとしています。私の推測では、どのプラットフォームもいずれ収れんを始めると思います。AmazonでWindows Serverインスタンスが使えるようになったことはその兆しかもしれません。

Dow Jones Newswires(ニュース配信大手)のJessica Hodgson氏はこのゲームにMicrosoftが参入したことで生まれる金融的均衡について書いている。彼女は調査会社Directions On MicrosoftのMatt Rosoff氏の言葉を引用している。
 

Microsoftは市場を凍り付かせようとしているのではないかと思います。Microsoftはオンデマンド製品の検討を考えてきた人たちの動きを牽制した上で、提示したMicrosoftの製品に目を向けさせたいのです。

彼女によるとクラウドコンピューティング市場の価値についてはさまざまな意見があるという。

クラウドコンピューティングが成長していることには誰もが同意するところですが、それが企業内システムあるいはその開発を置き換えるものになるかということに関しては意見が分かれます。ドイツ銀行のアナリストTom Ernst氏は、パッケージソフトの市場はすでにピークを過ぎていると言います。5年以内にクラウドコンピューティングは600億ドルのソフトウェア市場の半分を占めるようになるとErnst氏は見積もっています。これとは対照的に、Oracle社のチーフエグゼティブLarry Ellison氏はクラウドコンピューティングを「たわごと」と一笑に付し、ほとんどの企業は恩恵を得ることはないだろうと言います。

このビジネスモデルへのMicrosoftの肩入れは期待を押し上げ、これまでクラウドコンピューティングを取り入れるのを渋っていた大企業を刺激するでしょう。バンクーバを拠点にするウェブディベロッパ会社Strangeloop Networks社の共同設立者Richard Campbell氏は、多くの顧客がクラウドコンピューティングについて尋ねてくるが、主にセキュリティと信頼性の心配からほとんどが移行してこなかったと語っています。

彼女はMicrosoftの動きについて分析を続ける。

Microsoftはクラウドコンピューティング市場が成長すると考えながらも自分たちのパッケージソフトの特権を守ろうと慎重に動いています。Microsoftはこれまでハイブリッドな方法を取ってきました。それは、ほとんど顧客たちが企業名製品を継続して望んできたからであり、また多くのアナリストが支持してきた立場であったからで・・・

もし Microsoftの動きがあまりに遅いようなら、GoogleやAmazonのようなイノベータに市場のシェアを握らせることになります。これらの企業は独占販売する物理的なソフトウェアを持っているわけではないので、Microsoftのような収益でのジレンマはありません。

「もしクラウドコンピューティングがビジネスの表舞台で人気の方法になるなら、デスクトップサービスの売り上げを取り合うのを止めるのは難しいでしょう。」かつて Harvard Busines Review誌で編集者であり、クラウドコンピューティングについての本を執筆したNicholas Carr氏はこう語ります。「クラウドコンピューティングは規模のゲームになろうとしているのです。」

 

原文はこちらです:http://www.infoq.com/news/2008/11/Comparing-EC2-App-Engine-Azure

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