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オープンスペーステクノロジーが主流に

原文(投稿日:2010/07/01)へのリンク

ほんの数年前は"オープンスペース"や類似の形式である"アンカンファレンス"、"バーキャンプ"は先端的なものだと思われていた。技術カンファレンスに参加するほとんどの人はこれらの形式を知らなかった。しかし、ここ数年ですべてが変わった。オープンスペースは一般化し、最も進歩的な企業は、そして危機の中にある企業も、方向付けや意思決定にオープンスペースを使っている。

参加者はカンファレンスが始まる前には、そのカンファレンスのアジェンダを知らないという点がオープンスペース形式の特徴だ。オープンスペースではアジェンダは参加者自身によってカンファレンスが始まった後にリアルタイムで構築される。

世話役は"スペースをオープンする"とき、オープンスペースの原則を決める。参加者はその原則を使って自分自身で決めた行動を通じてアジェンダを作成する。多くの場合アジェンダ全体の作成完了は90分以内に終わる。その結果、多数のセッションが生まれる。

セッションを提案した人は"招集者"と呼ばれる。実際のセッションは小さなグループで行う会話のようなものだ。各セッションには参加者全体の3から5%が参加する。全体の参加者数が200人の場合はひとつのセッションに6人から10人が参加する。

オープンスペースは最終的に、たくさんの学習機会と人々が個人的なレベルで結びつくための機会を生み出す。

 

オープンスペース族の"族長"、Harrison Owen氏

オープンスペースでの座席の配置は円形だ。先駆者であるHarrison Owen氏によれば、

オープンスペースは西アフリカのBalmahという小さな村から着想を得ました。私はしばらくの間、村長からこの村に滞在する許可を得ていました。この村で私が気付いたのは、重要なことはすべて円形の中から生まれることです。長老たちは円形で集まりますし、村のダンスも円形です。男性たちの評議会は円形で開催されます。女性たちも仕事や世間話をするときに円形になります。何かの魔法が円形の中から生まれているようでした。

今日、オープンスペースの世話役は参加者を円形に招集して参加者自身がカンファレンスの組織化に関わり、突然生まれる学習機会に巡り会うことを支援する。この分野の著名な世話役にはMichael Herman氏や"Doc" List氏がいる。Doc List氏は最近では、4月28日に開催されたAgile Boston Open Spaceで世話役を務めた。このイベントは今までボストンで開かれたオープンスペースイベントの中で最大のものだ。

オープンスペースの世話役であるSteven "Doc" List氏によれば、

Harrison Owen氏がオープンスペースのコンセプトを体系化したのは1989年で、氏は"Open Space Technology: A User's Guide"という本を著しました。では私たちがここ数年になって初めてオープンスペースという言葉を聞くようになったのはどういうことでしょうか。私の考えでは、この理由はオープンスペースが転換点に向けて発展してきたということだと思います。オープンスペースは西欧風のビジネスが行ってきた会議やイベントの開催方法とは完全に逆行しています。しかし、この方法はオーガナイザやマネージャを神経質にする方法です。本当に。私たちは指揮統制の文化の中に生きています。マネージャ/リーダ/オーガナイザが誰がどこでいつ何をするのか決めることになっている世界です。それにスケジュールや、プロジェクト計画、組織、スタッフ、材料までも...

さらに、オープンスペースの実質的な考案者であるHarrison Owen氏はInfoQに対して現代的な会議や組織について話してくれた。

オープンスペースは常に機能しますが、機能しない場合もあります。いままでほとんどの人が教えられてきた、組織や会議の開催についてのことが適用されている限り、オープンスペースはうまく機能しません。

 

転換点

私たちはオープンスペースが主流になる転換点に立ち会っているようだ。下記のような出来事がそれを表している。

1. スクラムアライアンスが過去に開催したいくつかのScrum Gatheringでは、オープンスペースを取り上げるのがイベントの定番になっていた。2009年のMunich Scrum Gatheringでは"ゲリラ"(100%スケジュールされていない)オープンスペースが Deb Hartman-Preussによって組織された。2010年3月のOrlando Scrum Gatheringでは考案者のHarrison Owen氏も取り上げられた。

2. ユーザグループがオープンスペースの力を発見した。前述したように、Agile Bostonのような先進的なユーザグループは250人程度の参加者がいるオープンスペースのイベントを実施している。このグループは9月に500人くらいのイベントを開催することを計画している。BayAPLNのようなグループは何年も前からオープンスペースのイベントを開催してきた。Agile Open Californiaは2007年から大規模なオープンスペースのイベントを開催している。

3. スクラムアライアンスは純粋なオープンスペースのイベントを開催しようと計画している。例えば、アリゾナ州チャンドラーで2010年9月25日、26日に開催される"Scrum beyond Software Development"イベントだ。このイベントはスクラムにテーマを絞って行われる、2日間の純粋なオープンスペースのイベントだ。

4. オープンスペースの世話をすること技術や能力として注目されつつある。専門職にすらなりつつある。ThoughtWorksのSteven "Doc" List氏のような技術を持つ世話役が必要とされている。これはひとつにはオープンスペースを世話することはグループでの作業を"規模"に注意を払って世話することだからだ。単純に世話をすること以上に、オープンスペースを世話することは"規模の世話"をすることだ。しかがって、世話役はオープンスペースイベントの成功にとって重要な要素になる。

オープンスペースのイベントはほとんどのアジャイルのカンファレンスで定番になっている。ほとんどの技術系のカンファレンスが正式なアジェンダをオープンスペースに合体させるようになるのも時間の問題だろう。より大きな問題は、いつ組織の中でオープンスペーステクノロジーが主流になるのか、ということだ。

Michael Herman氏は著名なオープンスペースの世話役であり、ライターでもある。氏の刊行物のひとつの中で、私たちは、観察できる"組織やコミュニティが混沌としながら徐々に進化していくときの不快さ"について書いた。氏の魅力ある組織と題されたウェブ上の記事には何度も急激に変化する不安定な状態の中での組織やリーダーシップについて理解するための物語が書いてある。

氏によれば

長年の間、私たちは指揮統制の及ばない空間の端にいて、誰が指揮をするのか戸惑っていたり、制御されることから大きく外れていると感じています。営利企業の中には'学習型組織' 、つまり、教育や再教育を自律的に行うような組織もあります。しかし、たいていの場合、そのような組織が見せるのは説教と指導、計画と販売、そして質問と回答です。これらはすべて指揮統制の水で薄められた姿なのです。

しかし、'教育'の字義的な意味は'引き伸ばす'ということです。今、私はこのことを魅力的に感じはじめています。そして、指揮統制の力が国際的ビジネスや国際政治、世界に広がる不確実性の中へと場所を移していくとき、このような魅力がすべて置き去りにされてしまったということは残念なことではあります。しかし同時に、この魅力はすべて私たちが必要としているものだろうということは吉報です。オープンスペーステクノロジーについても同じことがいえます。

  

オープンスペースは大量の学習を生み出し、個々人や人とその人が属している組織の間に本物の結びつきを生み出すための会合を組織する方法だ。今までのところ、私たちが体験したのは、アジャイルのカンファレンスでオープンスペースが広範囲に開催され、主流になりつつあるということだ。

では、主流のカンファレンスがオープンスペースに傾き、普及し始め、オープンスペースのカンファレンスを開催するようになるのはいつごろだろうか。

企業はオープンスペースが組織の境界を侵食していくのを妨げることができるだろうか。

オープンスペースはアメリカ実業界の主流になれるか。

多国籍企業はオープンスペーステクノロジーを活用して、企業全体に影響をは耐えるような方向付けの意思決定を行う準備ができているか。

先進的で革新的な働き手はオープンスペースを活用している組織に惹きつけられるようになるだろうか。その結果、そのような組織はより強力な労働力を生みだせるようになるか。そして、熱心な働き手だけでなく、その組織の意思決定にも良い影響を与えるのか。

時が経てばこれらの問いの答えがわかるだろう。

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