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Mono の現状と今後

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原文(投稿日:2011/05/09)へのリンク

Attachmate が Novell を買収したことによって,Mono プロジェクトの今後に暗雲が立ち込めている。買収には付きもののレイオフ,そして社員への箝口令によって,噂は高まるばかりだ。全容はいまだ明らかになっていないが,これまでに分かった事実を整理してみたい。

噂の嵐が巻き起こったのは,Sean Michael Kerner 氏が5月3日に発表した記事がきっかけだ。

"私たちは新たな SUSE ビジネスユニットの本社を,ニュルンベルグに改めて設定しました。いくつかの開発活動 – Mono も含まれます – の優先順位とリソース配置は,そこにいるビジネスユニットのリーダによって判断されることになります。" The Attachmate Group の会長兼CEO のJeff Hawn 氏は,InternetNews.com に宛てられた声明でこのように述べています。"この変更に伴って本日,米国の従業員の一部が離職することになります。先にも述べたように,技術的なロードマップは従来のものをすべて継承し,そのためにユーザの需要に沿ったリソースの追加投入を実施します。"

最初に起きた噂のひとつは Mono スタッフが全員解雇される,というものであり,もうひとつは Mono 開発者のうち30人(これも十分に大きな数だ)が解雇される,というものだった。Miguel de Icaza 氏によれば,"このような数字はでっち上げで,何の根拠もない"。同氏は Mono の創立者というだけでなく,Novell の開発プラットフォーム担当副社長という役職にもある。"この件について,あなたは詳細を話すことが許可されていないのか,あるいはまだご存知ないのですね。" という質問に対して,氏は Mono for Android メールリストで次のように書いている。

そのとおりです。しかし Attachmate の CEO は,ロードマップを継続すると言っています。現時点で確かなのはそれだけでしょう。

かつての Novell が2つに分割されることは確実だ。SUSE Linux ディストリビューション を所有する SUSE の本部は,ユタ州プロボ(Provo)に置かれる予定であり,その他の部署は,ドイツを拠点とすることになる。2009年の大規模な再編 で Novell は,社内的に2つのビジネスユニットに分割されている。ひとつは "コラボレーション・ソリューション" ユニット,もうひとつは "セキュリティ,管理,およびオペレーティングプラットフォーム" ユニットである。 SUSE Linux Enteprise, SUSE Studio,そして Mono がすべて後者のビジネスユニットに含まれるとすれば,Mono が新たな SUSE 部門の下で運営されることになるチャンスは十分にある。

Mono の長期的ビジョンを評価するためには,プロダクトラインの3つの側面を見なければならない。

コアになるのは Mono のオープンソースバージョンである。これは収益に直接的に結びつくものではないが,すべてのベースであることに加えて,.NET 開発者を Mono に誘う役割も担っている。Mono が Web サイトやバックエンド処理サービスなどのサーバサイドアプリケーションで良好に動作することによって,SUSE Linux Enterprise を Windows Server の代替とする上で一役買う存在になっているのだ。

ふたつめは,エンタープライズ開発者向けのコマーシャルな製品としての面である。最初に挙げられるのは,SUSE Linux Enterprise Mono Extension だ。その機能とメリットとされているのは,次のものだ。

  • ASP.NET on Linux
  • 広範なハードウェアサポート
  • Visual Studio で Linux を対象とする開発が可能
  • パフォーマンスとスケーラビリティ

しかしこれらは Mono のフリーバージョンでも同じように思われるので,この製品の利点とするにはいくぶん不明確な部分もある。(Novell とは連絡を取っているので,興味深い事実が見つかれば InfoQ でフォローアップ記事を発表するつもりだ。) このカテゴリに分類されるもうひとつの製品は Mono Tools for Visual Studio である。この製品は,クロスプラットフォーム開発者に便利な機能をいくつも提供する。例えば,

  • Vsual Studio 内で Mono Migration Analyzer を直接実行可能
  • Mono アプリケーションのリモートデバッグ,OS X や Linux での実行にも対応可能
  • アプリケーションの RPM パッケージ へのバンドル
  • "Linux アプライアンス" の生成。これは SUSE Linux,Mono,アプリケーションを予め設定した仮想マシンである。

.NET 開発者には,最後の機能の Microsoft 版というものは存在しない。その点を考慮した上で,開発したアプリケーションのみでなく,VM の Windows Server ライセンスをユーザに販売する方法についても,よく考えておく必要がある。

3つめはモバイルツールラインである。これは Mono にとっての,もうひとつのコマーシャル面での挑戦だ。同時に Mono コミュニティ全般において,最も不安の持たれる部分でもある。アプリケーションをモバイルデバイス対応で完全に書き換えるやり方に代わる手段として,MonoTouch と Mono for Android に転向する開発者の数は増え続けている。しかし Mono のフリー/オープンソースバージョンを使うことも,.NET に戻ることも可能なエンタープライズ開発者とは違い,モバイルデバイスの開発者はこの技術に大きく賭けている。もしプラットフォームが廃止されるようなことになれば,彼らは多大な書き換え作業に直面するのである。Nikolai Sander 氏は,そのような開発者のひとりだ。

私たちにとっては,まさに大惨事です! 私たちは MonoDroid と MonoTouch に多額の投資を行いました。そして Android と iOS の間で 90% のコードを共有し,NookColor (MonoDroid) 用のアプリケーションをリリースし,MonoTouch ですべて記述した新アプリケーションを Apple の審査に送っています。もしどちらかの輪が外れてしまったなら,半年分のコードを捨てることになるのです... 私たちのような小規模開発者にとって,それはまさに恐怖です!

どうか,そんなことになりませんように...

これらの製品にはすべて,1年ないしそれ以上のメンテナンス契約が含まれているので,仮に Attachmate が Mono プロジェクトを完全に停止するならば,事前に相当数の通告を行わなければならないだろう。その結果,クローズドソースとオープンソースのコンポーネントを交えた同社の他の製品ラインに対しても,コミットメントに関する疑問が持たれることになる。

明るい兆しとして5月5日,MonoTouch 4.0.2 がリリースされた。MonoTouch 4 のマイナーアップグレードで,次のものが含まれている。

  • Core Mono Runtime が Mono 2.10 (.NET 4.0 API,Parallel Framework サポート,C# 4.0 サポート)にアップグレードされた。
  • LLVM をバックエンドとする最適化コンパイラ
  • iOS SDK 4.3 の新 API をサポート

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