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OASISがサービス指向アーキテクチャのための参照アーキテクチャの基礎のレビュー版を公開

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原文(投稿日:2011/08/24)へのリンク

OASISサービス指向アーキテクチャのための参照アーキテクチャの基礎(Reference Architecture Foundation for Service Oriented Architecture、SOA-RAF)のパブリックレビューを公開した。これはOASIS SOA参照モデル技術委員会の数年にわたる作業の結果であり、サービス指向アーキテクチャのためのOASIS参照モデルで定義された概念や関連を拡張したものだ。

SOA-RAFはサービス指向アーキテクチャ(SOA)をアーキテクチャパラダイム(スタイル)として定義し、ビジネスとITの境界に位置付ける。完全にITの領域にあるのではなく、完全にビジネスの領域にあるのでもない、しかし、両方の世界の関心事を反映するのだ。ビジネスもITもSOAのエコシステムを完全に所有し、運営し、管理することはできない。両者の関心事はその目的を達するためにSOAのエコシステムに包摂されなければならない。このような考えの結果、SOA-RAFはSOAをビジネスと情報技術を統合する方法として考えている。

SOA-RAFはモデル、ビュー、ビューポイントの視点からアーキテクチャを記述するという方針を採る。その中には次の3つの主要なビューがある。

... SOAエコシステムビューへの参加。これは参加者がサービス指向アーキテクチャのエコシステムの一部になれるようにする方法を考えます。次に、SOAエコシステムビューの実現。これはSOAエコシステム内でSOAベースのシステム構築に対する要望を対処するためです。そして最後に、SOAエコシステムビューのオーナシップです。これは、SOAベースのシステムが何を意味するのか考えるものです。

InfoQはSOA-RAFについてKen Laskey博士に話を伺った。博士はOASIS SOA参照モデル技術委員会の議長でこの標準の策定者の一人でもある。

InfoQ: 産業全体のSOAへの関心が少なくなっていることを考えた場合、今、新しいSOAの標準を作成するのは正しいのでしょうか。

Laskey博士私は関心の消失はそれほど大きくなく、誇張やごまかしが少なくなったのだと思います。SOAや関連する技術が魔法を生み出すと考えていた人が幻滅したのでしょう。SOAの価値を現実化するのは大変ですからね。この大変な作業から利益が得られると理解している人々にとっては、今が仕事を始める時です。SOA参照モデルはサービス指向アーキテクチャを"複数のドメインでばらばらに所有され、管理されている力を組織化し、利用できるようにするためのパラダイム"と定義します。本当のSOAの魔法が出現する前にも、このような力とこの力をどのように組み合わせれば問題を解くことができるかについての理解が存在しているはずです。あるサービスXを構築するはXという問題を解決する方法を理解することと等価ではありません。問題解決の方法を理解することで、SOAのパラダイムはより効率的な方法で個々のソリューションを組み合わせることができます。とりわけ、各ソリューションの所有が異なる組織に制御されているとき、SOAは大きな力を発揮します。そしてここで、オーナシップの境界という考えが重要になります。SOA-RAFはこれらの概念をエコシステムや現実化、オーナシップについての視点を通じて詳しく説明し、組織がSOAを推進するためのしっかりとした土台を提供します。

InfoQ: SOAには100を超える標準があると思います。このサービス指向アーキテクチャのための参照アーキテクチャの基礎と他の標準とはどのような点が異なるのでしょうか。

Laskey博士ほとんどの標準はある特定のやり方を説明しますが、そのやり方が全体にどのような影響を及ぼすのかという文脈をほとんど考慮していません。例えば、UDDIはレジストリへの登録の仕様を提供してくれますが、その登録内容の文脈やどうすればその登録内容へのアクセスや、登録内容の運営、管理がうまくいくかについては何も教えてくれません。SOA-RAFの目的はこれらさまざまな要素や文脈を結び付け価値を増大させる、ある種の接着剤を提供することです。

InfoQ:この標準で導入されたもっとも重要な概念は何だと思いますか。

Laskey博士:この参照アーキテクチャの基礎で最も重要なのはSOAエコシステムという概念です。委員会は技術や従来の分離されたビジネスの断片を超えてSOAを考えなければならないこと、利害関係者やその他の関係者が力を合わせてビジネスのニーズを満たすという複雑な環境について徹底的に考える必要があることに気付きました。普通、SOAに興味がある人や組織は構築したいITシステムに注力します。しかし、これでは各システムの間やシステムを所有し使用す利害関係者の間の橋渡しをするのに必要な基礎が欠けてしまいます。システムや利害関係者、そしてこれらの相互作用がSOAのエコシステムを作るのです。

InfoQ:大多数のSOAの標準は開発者やアーキテクト向けで特定のSOAの実装方法を持っていますが、SOA-RAFはかなり抽象的です。どのような利用者を想定していますか。

Laskey博士:SOAのパラダイムを有効に使うにはSOAベースのシステムを設計するアーキテクトやコードを書いてそれを実装する開発者以外にも対象を広めなければなりません。システムを所有に責任を持つ人、十分な信頼を持つシステムの利用者も対象に含む必要があります。そして、システムが提供される状況や受容され、実際に効果を発揮する状況を考慮しなければなりません。したがって、SOAエコシステムの中のすべての人が対象です。

InfoQ:エコシステム内で働くすべての人が対象だというのは少し包括的すぎるように思えます。

Laskey博士:しかし、この言い方によってエコシステムの範囲がはっきりと示しめされます。もし設備の用務員が設備についての問題を報告するためにサービスを使うのなら、その用務員はエコシステムに含まれています。したがって、その用務員にはエコシステムのセキュリティが適用されます。用務員側にもシステムを信用してもらう必要があります。投稿した問題が最小限の労力で適切に把握され、何らかの対処ができる関係者に届くという信頼を持っていれば、用務員はより慎重に問題を報告するようになります。ここでは、サービスが何をするか、どのようにしてサービスに要求を出すか、そしてその結果現れる現実世界への影響をどのように知るかについての明確な説明をしています。SOAエコシステムの作用はこのエコシステムの中でビジネスをする人すべてに効果を発揮しなければなりません。自分には効果がないと感じる人がいたら、想定している効果を無くしてしまうような代替手段があるのだと思います。

InfoQ:この標準のかなりの部分が共同作用のモデルと信頼性に割かれています。SOAコミュニティの既存の相互作用/セキュリティの仕様/標準とどのように異なるのでしょうか。

Laskey博士:これもエコシステムという概念に関わります。SOA-RAFは私的な状態と共有の状態について述べています。相互作用の結果発生する操作は共有の状態、つまりエコシステム内の要素に対する共通の見方を変更します。共同作用は複数の作用が協調して動作するものであり、複数の利害関係者が関係します。その中には人もマシンも含まれます。特定のセキュリティの定義やその他の標準は細かい点を定義していますが、SOA-RAFはそのような細かい点が共同作用の実行に関係するときの全体的な文脈を提供します。

InfoQ:この標準には約6年の月日が費やされています。完成までに長い月日がかかるのはなぜだとお考えですか。

Laskey博士:いくつか原因があります。SOA参照モデルは最小限の統一的な概念や原則を提供します。したがって、SOA-RMが提供する構成要素を適用して拡張するのは大変な作業です。また、アイディアを学習し、成熟させ、技術委員会のメンバの日々の仕事から得られた経験を分解して取り込むのに一苦労でした。委員の経験はアプリケーションの世界からベンダの商品についてまで多岐にわたります。どんな製品からも独立した幅広く適用できる概念を作ろうとするのは大変なことです。そして、SOAに関連する領域にはたくさんの成果物が必要な領域があります。個別の課題についてたくさんの説明をしなければ、それらの多様な課題を公平に扱えないのです。より完璧なものを提供できたかもしれません。しかし、これらの領域ではどの程度の完璧で十分なのか分かりませんし、その完璧さを満たすための文脈も提供できません。最終的に私たちは完璧な状態でないからこそ、よりしっかりと利用者の役に立つと考えるに至りました。個別の参照アーキテクチャはSOA-RAFが確立する基礎の上に構築されるでしょう。私たちはその結果を見てSOA-RAFの積み残し部分を具体的に作り込んでいきたいです。

InfoQ:レビューに何を期待しますか。

Laskey博士:このビュー版は私たちが意図したすべての範囲を網羅した最初のドラフトでしています。以前のレビューはこの標準の進化に直結するコメントをいただいたのでとても役に立ちました。今回は個別の問題を越えた、エコシステム内のリソースの定義や構築や所有についての課題に対してコメントを期待しています。今回のレビューが長くてたくさんの領域を含んでいる文書であることは認識しています。60日間のレビュー期間を提供してコミュニティに査読して消化していただいて、この基礎となる仕事を完成させる手伝いをお願いしているのはこのためです。

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