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VersionOneがState of Agile Development Survey for 2012の結果を公表

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原文(投稿日:2013/04/27)へのリンク

VersionOneがState of Agile Development Survey for 2012の結果を公表した。今回もアジャイルの普及とトレンドを表す重要な指標となっている。

依然としてスクラムが最も人気のあるアジャイルの手法となっている。回答者の54%がスクラムを使っている(2011年は52%)。

54% スクラム
11% スクラム / XP のハイブリッド
9% カスタムハイブリッド
7% スクラムバン
4% カンバン
4% 不明
11% その他 (XP 2%を含む)

最も人気のある技術は前年と同じだったが、ほとんどの手法が2011年の調査からある程度増加している

85% デイリースターアップ
75% イテレーション計画
74% 単体テスト
72% 振り返り
69% リリース計画
67% バーンダウン / チームベースの見積もり
58% ベロシティ
57% コード標準
56% 継続的方法

アジャイルの失敗については、回答者の18%がプロジェクトは失敗していないと答えている。一方、失敗を経験した回答者は、企業の思想や文化がアジャイルの中心的な価値と相容れなかった(12%)、従来のウォーターフォールに従うように外部から圧力があった(11%)、組織的問題、コミュニケーションの問題(11%)、というような原因を上げている。今年の調査では、失敗の背景にある組織的な課題を掘り下げている。

34% 人々を糾合するのに失敗した
28% チームに基づく文化を教えるのに失敗した
21% 開発 / プロダクトオーナ間のコミュニケーション
9% 開発 / 品質保証チーム間のコミュニケーション
8% スクラムマスタの問題

また、今回の調査では、アジャイル全体の勢いが増していることも明らかになった。アジャイルを実施する計画があると答えた回答者は59%から83%へ上昇している。しかし、アウトソースするプロジェクトにアジャイルを適用すると答えた回答者は昨年の77%から49%へ下がった。

With so much data to interpret, InfoQはVersionOneのCEOであるRobert Holler氏に今回の調査結果について話を聞いた。

InfoQ: なぜこの調査を行ったのですか。

マーケティング、セールスのプロセスの一部として、私たちは定期的に市場について質問をしているのですが、そのような質問では十分な情報は集まりません。また、そのような回答はひとつにまとまっていません。この調査は7年前に始まり、毎年規模が大きくなって認知度も上がり、参加者も増えています。多くの知見が得られており、業界が、何が起こり何が変化しているかを理解する手助けになれば、と思っています。調査結果は毎年、ポジティブなトレンドを示していますが、今年は勢いが違います。例えば、アジャイルを実践しているか実践する計画があると回答したのは昨年は59%でしたが、今年は83%でした。また、普及の点では、1年以上アジャイルの経験がある人が74%から81%へ上昇し、回答者の4分の1は5年以上の経験があるようになりました。アジャイルはついに、爆発的に普及する体勢を整えた状況になっています。とりわけ、大規模な組織では顕著です。

InfoQ:このような調査は、第一にアジャイルやVersionOneについて知っている人の協力が不可欠です。そう考えると、この調査はアジャイルの現状の調査というより、アジャイルコミュニティの現状の調査と考えるほうが適切ではないでしょうか。

確かに、アジャイルコミュニティの調査です。80%以上がアジャイルを実践しています。実践していないのは、10%から15%ですが、明らかに少数派です。

InfoQ: 勢いと経験については先ほど伺いましたが、他にあなたの興味を引いた調査結果はありましたか。

今回、新しい質問として、経営幹部のサポートの重要さについて質問しました。これはアジャイルをチームを超えて拡大しようとするときに論点になります。私が興味深いと思ったのは、経営幹部が最もアジャイルの知識がないにも関わらず、もっとも重要なことはすぐに経営陣に上申されるということです。これは教育やアジャイルの成功の観点から考えれば、まだやらなければならないことがあるということを示しています。また、リスクの低減や市場投入への時間の削減、品質の向上のような成果が上がれば、経営幹部は考え方を変えるということも、私たちは経験しています。そして、このようなことが今まさに私たちが目撃していることなのです。

InfoQ:この調査はVersionOneが顧客やコミュニティ一般から何を見ているのかを反映していますか。

もちろんです。とりわけ、ここ2、3年で観測した変化は、アジャイルがチームを超えて、部門、組織全体へと拡大しているということです。そして、5つを超えるチームや10を超えるプロジェクトに対する調査結果を見れば、この拡大傾向が始まり、しかも成功していることがわかります。これは、私たちのセールスやマーケティング、開発の経験とも一致します。

InfoQ: 誰がアジャイルを知っているか、という調査の結果を見ると、品質保証、経営幹部、プロダクトオーナのような非技術的な領域でアジャイルの認知が低いのが興味深いと思います。ここから何がわかると思いますか。

驚かれるかもしれませんが、私はプロダクトオーナの一緒に働くことが多かったのです。今は、ソフトウエア企業で働き、他のソフトウエア企業とも協業しています。現在の環境のプロダクトオーナは最もアジャイルについて知っている人の部類に入ります。しかし、過去数年、顧客をソフトウエア企業から大企業や製造業、サービス業、通信業、政府などに広げていくと、教育が足りない業界があることが明らかになりました。プロダクトオーナになるのは簡単なことではありません。とりわけ、大きな組織では難しいです。様々な方向へ引き裂かれてしまいますし、権限を与えられ、バックログを管理し、正しい粒度に整え、現行のシステムに合うように刈り込むのは単純な作業ではありません。このような難しさが調査結果に現れているのだと思います。開発チームはアジャイルを身につけているか、身につけつつあるものの、開発チームの外ではまだ知識が足りていないということを示しているのです。

InfoQ:調査結果によれば、アジャイルの初期の擁護者の63%がマネジメント(経営幹部を含めれば76%)です。この結果は、アジャイルの導入を手助けしてくれるでしょうか。それとも邪魔をするでしょうか。

13%が経営幹部でした。この調査ではマネジメントとは、プロダクトオーナ、スクラムマスタ、そして、ソフトウエア開発プロセスの管理に携わっている人々を指しています。この調査を始めたことはアジャイルを擁護するのは開発チームでした。今、マネジメントはインターフェースであり、翻訳が行われ、知識が集まるところになっています。アジャイルの普及にとってはこれは良いことです。

InfoQ: アジャイルを使っているプロジェクト数について、回答者の59%が0-5プロジェクトと答えています。この結果は、片手で数えられるくらいのプロジェクトしかアジャイルを実践していない、ということでしょうか。それとも、プロジェクトの数自体が少ないのでしょうか。

この点は深い分析が必要です。しかし、アジャイルの勢いという点で言えば、5以上のプロジェクトを実施している企業でアジャイルの普及が広まっています。昨年は5以上のプロジェクトをアジャイルで実施しているのは、29%でしたが、今年は41%です。これは、大きな変化です。プロジェクト数が5つ以下の場合については、ほとんどのソフトウエア開発は小さく行われているということです。無数の組織がソフトウエア開発を行っていますが、大規模な開発を行っている組織は多くありません。大規模な組織も小さなアジャイル開発をしているのです。私の考えでは大部分は小さな組織だとは思いますが。

InfoQ: チームの数については、30%が10以上のチームを持ち、38%が2-5のチームを持っています。

ええ、組織全体の中央値のサイズは100近くになります。

InfoQ: 分散開発についての調査結果には驚きました。分散開発をしていると回答したのがたった35%しかいなかったのには何か原因があるのでしょうか。企業の種類や場所が原因でしょうか。

この調査の質問は単純なはい、か、いいえで答えられるものではありません。何らかの活動をしているチームはどのくらいありますか、というオープンエンドな質問をしています。このような質問に回答者がどのように答えるのかはわかりません。将来の調査では、はい、か、いいえで答えられるよう、分散チームを持っているかどうか単純に質問することになるでしょう。しかし今、人々はそう質問されても混乱してしまうかもしれません。私たち経験では、そのような質問は私たちが見ようとしていることを反映していないからです。半分の企業が分散チームのメンバーを抱えていることがわかります。しかし、分散チームとはどのようなチームでしょうか。異なる場所で働いているチームでしょうか。それとも、異なる地域、または、異なる都市で働いているチーヌでしょうか。来年の調査ではもっと質問を明確にするつもりです。しかし、それでもこの結果には私も驚きました。顧客が私たちの製品を購入してくれる理由のひとつが、分散チームをサポートしているからなのですが、この結果を勘案すると、私たち世界観は少しバイアスがかかっているのかもしれません。ただし、他の調査やコミュニティの活動を見る限り、分散開発を実施するのは大部分にとって難しいことではないはずです。

InfoQ:たった34%しかAPMを知らなかったという事実は、多くのチームがスクラムの基本的な実践で止まっているということでしょうか。

もし18ヶ月前なら、誰もAPMを知らなかったでしょうから、これは自然な進歩だと思います。コーチとして思うのですが、私たちは最前線にとどまる傾向があります。しかし、マーケットの主流は近づいていないのです。私は、少なくとも4分の1がAPMを知っているなんて!と、この結果を見て思いました。事実これは、強烈な結果です。18ヶ月前は5%もいなかったでしょうから。

InfoQ: つまり、私とあなたでは見方が違うということですね。

そうです。私たちはアジャイルに囲まれています。アジャイルが第2の本性なのです。アジャイルや最新の動向について知っていなければなりません。例えば、カンバンはそれほど多く実践されていませんが、ソフトウエア開発コミュニティに受け入れられたのは少なくともここ5年のことです。思うに、APMもエンタープライズアジャイルも自然な進歩をしています。しかし、調査に回答してくれたコミュニティは実際のコミュニティの評価をフェアに表しているのだと思います。彼らはアジャイルの最先端にいる必要はないのですから。

InfoQ: 大規模な組織や北米やヨーロッパでの大きなユーザベースを考慮すれば、54%がスクラムを使っていると回答したのは驚くべきことではありません。一方、カンバンは4%でした。今年は2になったとコメントに書かれていましたが。

注意しなければならないのは、Kanbanは手法としては5%に満たなかったが、調査結果の同じページを見ればわかる通り、技術としては3分の1の企業が使っているということです。カンバンボードであれ、ワークインプログレスであれ何であれ、手法としてではなく技術としてはカンバンは多く使われています。

InfoQ: スクラムマスタの役割についての結果は興味深いですね。質問に答えたときに実際にスクラムマスタの肩書きで仕事をしていた人との整合性を示すデータはありますか。

直接的にはありません。しかし、マネージャのために時間をあわせようとしている開発者を多く見ています。スクラムマスタは新しいプロダクトマネージャであり、時間を上手く割り当てるようとしています。これはとても難しいことですが、スクラムマスタだけでなく、チームのメンバにも同時に3つのプロジェクトで働いている人がいます。そのような働き方が望ましくないのは明らかですが、大きな組織では普通のことなのです。しかし、このような風習に立ち向かっている人もいます。3年前は普通のことでしたが、今はチームが増え、“この仕事をやるキャパシティはない。このプロジェクトをやりきるには複数のことをやらずに注力して一気に終わらせる必要がある”と言えるようになっています。最近は少し、揺り戻しが発生しているようですが、5つや6つや10のプロジェクトではなく、多くの場合、2、3の範囲に収まっています。

InfoQ: 52%の回答者がいまだに組織の文化を変えることに苦しんでおり、この点は過去の調査でもテーマになっています。このようなバリアがあることはアジャイルコミュニティに更なる努力が必要だということを示しているのでしょうか。

スクラムやカンバンを自動化プロセス、あるいは機械的なプロセスとして扱うのは正しくありません。変化を管理するシナリオとして扱わなければ、絶対にミスを侵します。変化を管理することについて完全に理解していない人はこのようなミスを頻繁に犯しているのではないでしょうか。この点は、ソフトウエア開発の仕方を変えようとするなら、ふたつの独立したプロジェクトを実行しなければならないことを示していると思います。ひとつは製品開発をすること、そしてもうひとつは組織を変えることです。組織を変えるということは、ふたつのことを考える必要があります。文化を変えること、そして変化に対する自然な抵抗です。このふたつは相互に関連しています。文化を変えるとは、命令制御型の環境ではない文化にするということです。そして、変化に対する自然な抵抗とは、人的要素や人間は一晩では変わらないということです。このふたつは長年、問題の中心にあり続けています。状況はすぐにはかわらないでしょう。ソフトウエア開発かどうかにかかわらず、根本的な変化について話す場合、変化に対する自然な抵抗に出会います。技術的、仕組み的に今までと違うことをするだけでなく、思想的に今までと違うことをすると、克服するべき変化へ障害や惰性に直面するのです。そしてそのような惰性は何度も克服しなければなりません。文化の変化は強制できないものです。時間の流れが変化を生み出すしかありません。

InfoQ: ツールの満足度はVersionOneが一番高かったです。なぜでしょうか。

毎年、ツールについての質問をしています。私たち自身がこの質問をしていることは自覚しています。なるべくバイアスがかからないようにしていますが、この質問は私たちのコンタクトデータベースにある人にも送っていますので、明らかにバイアスがかかってしまう可能性があります。正直に言うと、この質問をしたとき、どのように回答されるかわかりませんでした。多少のリスクを冒してした質問でしたが、ありがたいことに私たちにとって望ましい結果になりました。結果については、まず第一に素直に喜びました。そして、どうしてこのような結果になったのか考えました。私たちの製品の販売方法は、コミュニティに対するコミットメントの中で必死に働き、顧客の声を聞き、重要な問題を積極的に解決することです。そして、しっかりと支持していただけるコミュニティを持っています。小さく、機敏で、顧客サポートやセールス、マーケティングからの意見にしっかりと反応し、ポジティブなフィードバックを受け取っています。私たちは政党に評価されていると思います。この調査結果に載っているほかのベンダ、例えば、LeanKitは顧客から素晴らしい反応を得ていますし、AtlassianのJIRAも常にポジティブな反応を得ています。このような製品と肩を並べられたのは光栄なことです。

InfoQ: 公表していないが注目に値する回答はありましたか。

公表した回答は私たちが重要だと判断したものです。私が回答を読んで感じたのは、アジャイルの基礎は教育とトレーニングだということです。ナレッジベースもなく、コーチもいないということは、成功するための能力を低下させているということです。また、アジャイルは一日にして成らず、ということも回答から読み取れることです。時間が必要であり、擁護者が必要であり、組織全体を通じてアジャイルを駆動しなければなりません。短い期間では成功できないということではありません。しかし、アジャイルを拡大しようとすれば時間が必要です。アジャイルとは、文化の変化であり、組織の変化であり、思想の変化であり、メトリクスとプロセスの変化であるということです。

InfoQ: この調査を自分たちの製品に適用したことで何を得られましたか。

今年は少し違う質問をしました。どのツールを使っているかではなく、どのくらいのツールを使っているのか聞いたのです。結果は興味深いものでした。15の異なるツールを使っている人もいましたが、平均は3-4のツールでした。プロジェクトマネジメントの観点からは自分の製品は中心にあるハブなのかもしれないが、独立していると仮定してはならないということを、この調査結果は示しています。ソースコードも継続的統合もビルドツールもデプロイツールもそれぞれ依存しながら動作しており、そのような環境の中で私たちの製品もしっかりと動作するようにしなければならないのです。私たちは今、45の異なる統合機構を持っていますが、常に作業を容易にし、楽にし、他のツールとの統合レベルを改善しようとしています。開発者が常に複数のツールを扱う環境にあるということ。したがって、私たちにはそのような作業環境を改善する責務があるということ。これが私たちの製品についてこの調査でわかったことです。

InfoQ:調査とは関係ないのですが、近い将来、VersionOneからわくわくするような製品は現れますか。

初回リリースは完了していますが、継続的に改善を行っているふたつの製品が該当するでしょう。ひとつはバブルチャートやプロジェクトの依存関係、ツリーダイアグラムなどを視覚化する製品です。ソフトウエア開発のライフサイクルの中で大量の作業項目を扱い、それらの項目が変化し相互に依存している状況で、そのような作業項目を視覚化できたら素晴らしいと思いませんか。私たちは2012年末にそのような製品をリリースし、引き続き素晴らしいフィードバックを受けています。開発要望が多く寄せられた製品ではありませんが、変化志向のプロジェクトマネジメントをハイスピードで実行していくと、作業間の依存関係や物事のまとめ方、並べ方を見失ってしまいます。そこで、そのような作業を視覚化するツールを提供しようというわけです。もうひとつは、チームルームです。これは製品からマネジメントのオーバヘッドを取り除きます。開発チーム専用のUIを提供して、日々の活動やコミュニケーションに注力できるようにします。また、最近ではチームと顧客のコラボレーションに注力しています。面白いものが出来上がりますよ。また、より簡単に統合ができるようにするため、私たちのAPIの次世代版も模索しています。もちろん、エンタープライズアジャイルとAPMにも注力し続けています。企業はアジャイルを拡大したがっています。また、戦略と実行の連携を共有したいと思っています。このようなことに私たちはコミットするつもりです。

調査結果はVersionOneで入手できる。2011年の調査結果の要約はInfoQで読める

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