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エンタープライズ領域にリーンスタートアップの手法を導入する

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原文(投稿日:2013/10/24)へのリンク

どの製品を作るのか、既存製品にどんな機能を追加するのか決定するのは難しい。リーンスタートアップの手法は顧客のニーズを理解し、ニーズにあった製品とサービスの周囲に持続可能なビジネスを構築することを手助けする。企業がより革新的で競争的になるには、どのようにしてリーンスタートアップの手法を導入すればいいのか。

James Donelan氏はdo lean startup principles have a place in the enterprise?と題したブログ記事で、リーンスタートアップの概略を説明している。

リーンスタートアップは、要約すれば、新しいビジネスモデルや製品を立ち上げるときに、検証された学習、実験と頻繁なリリースをベースするということです。こうすることで顧客からの価値あるフィードバックを測定し獲得することができるのです。言い換えれば、すばやくビルドし、頻繁にリリースし、計測し、学習することを繰り替えるということです。

氏は、なぜリーンスタートアップの手法をエンタープライズ領域に持ち込むことに効果があるのか説明する。

リーンスタートアップでのエンジニアリングはコンシューマ向け製品には有効だと思われます。しかし、企業向けの製品やプラットフォームの場合はどうでしょう。コンシューマ向け製品と同じ速さで作業できるでしょうか。もちろんできます。リーンスタートアップを使って成功している企業はたくさんあります。Dropbox、IMVU、Etsyなどがそうです。リーンスタートアップの背景にある哲学は企業向け製品でも通用します。哲学とはすなわち、速く動き、素早くビルドし、テストを自動化して、意思決定をデータで検証し、可能な限りオープンソースを使って、MVPを構築し、可能な限り継続的に開発し続けるということです。

今年の初め、HBRはSteve Blank氏の記事を掲載した。Why the Lean Start-up Changes Everythingと題したこの記事で、氏は企業はプロダクトイノベーションを起こすための方法を変える必要がある、と指摘している。

企業はこの20年間、コストを削減することで効率化を図ってきました。しかし、既存のビジネスモデルを改善することだけに注力するのはもはや不十分です。ほとんどの大企業が継続的なイノベーションで外部の脅威に対処する必要があることを理解しています。生き残り、成長するためには、企業は新しいビジネスモデルを発明し続けなければなりません。そして、そのためには完全に新しい組織構造とスキルが必要なのです。

氏はリーンスタートアップがアジャイルソフトウエア開発を使い、反復的に製品を開発して、顧客から学ぶことで、どのようにして企業のビジネス機会創出を手助けするかを説明する。

あらゆる種類の新しいベンチャーはリーンスタートアップの原則であるフェールファーストや継続的学習に従うことで成功の機会を手に入れようとしています。そして手法の名前とは裏腹に、大企業がリーンスタートアップを取り入れる場合が長期的に見てもっとも大きいリターンを手に入れられる可能性があります。

(…) 起業家は当初の目論見は検証されていない仮説であり、基本的には確度の高い推測だと考えています。したがって、複雑なビジネスプランを書くより、ビジネスモデルキャンバスというフレームワークで仮説を要約します。このフレームワークは企業がどのようにして、企業自身と顧客に価値を提供するかを図示したものです。

(…) リーンスタートアップはアジャイル開発と呼ばれる手法を実践します。アジャイル開発とはソフトウエア産業からこともあります。アジャイル開発は顧客と密接に関係しながら進みます。顧客の問題や製品のニーズに対する知識を前もって推定する、年単位のよくある開発サイクルとは違い、アジャイル開発は、反復的かつ漸進的に製品を開発することで、時間とリソースの無駄を省きます。スタートアップはこのようにして実用最小限製品を開発しテストするのです。

Maxim Wheatley氏はwhy large corporations should behave like startupsと題した記事で、企業は競争的であり続けるために変わらなければならない、という。

起業しやすくなるにつれて、大企業は優位な位置を失うという現実的なリスクに直面しています。既存のビジネスモデルを維持するためには、企業は自らの動きを遅くし、非効率にする仕組みを背負わなければなりません。

企業は内部にインキュベータや‘スカンクワークス’部門を持ち、新しいアイディアやプロトタイプ製品を開発してマーケットや顧客のニーズを学習することができる。そして、専任のチームと、専任のリーダーシップによってプロトタイプを製品にすることができる、と氏は説明する。

この起業家的アプローチを拡張するには、大企業は関連するコンポーネント(マーケティング、ウェブ開発、広報、ビジネス開発など)のための専任のチームを作ります。これらのチームは特定の製品にのみかかわります。各製品にはそれぞれの“CEO”がいて、製品の方向性を決め、意思決定をします。

氏は企業がどのようにしてリースタートアップのメリットを生かすかを説明する。

起業的環境を促進し、仕組みにすることにより、大企業は創造性と革新性を開放します。このモデルは新しいコンセプトを開発を素早く効率的にするだけでなく、イノベーションを起こす能力を平等にします(従来の“トップダウン”手法ではなく)。

InfoQはYammerのエンタープライズ戦略部門のディレクタであるBrian Murray氏に話を聞いた。氏は顧客に対する仮説を検証するためにどのように実用最小限製品を使っているか説明してくれた。

(…) 私たちは小さな推測を行います。そして、小さな仮説を作り、それを数ヶ月、数年ではなくて数週間で素早く検証しています。私たちにはYammerが顧客のニーズの方向性に合致していることを保証し、生み出そうとしている価値を達成しない機能を開発したり、提供したりしないようにする方法があります。

また、起業がリーンスタートアップの手法を取り入れるべき理由も説明してくれた。

素晴らしい製品には"終了日"がないということを自覚する必要があります。顧客や市場の要求は常に変わるため、常に反復開発をし続ける必要があります。変化のペースは速まっています。製品(そして起業)は進化する要求に対応するために進化をし続ける必要があります。これを念頭に置き、そしてすべてが旅だということを理解するのが重要です。この理解がエンドユーザが本当に愛する製品を生み出すことになるのです。

nurturing lean startup in the enterpriseと題した記事で、Lane Halley氏は起業にリーンスタートアップを導入する方法について書いている。リーンスタートアップの手法は製品開発とは異なるマインドセットだ、と氏は説明する。

ビルド-計測-学習のサイクルは考え方や働き方に対して根本的な変更を迫ります。リーンスタートアップは組織内での意思決定の方法を変えます。個人の意見よりも証拠を重視し、要件を集めるよりも顧客から学習することに価値を置きます。

氏は企業内に起業的環境を作るのに役にたついくつかのアドバイスをしている。

  • 役割を横断したスキルを持つ小さなチーム
  • 注力
  • 実験的手法
  • 素早いビルド-計測-学習サイクル
  • 本当の/実際のエンドユーザとの緊密なやり取り
  • たくさんの小さな実験

あなたはリーンスタートアップをエンタープライズ領域で活用しているか。どのような利点があるだろうか。

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