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Apple Macの30年

原文(投稿日:2014/01/23)へのリンク

30年前,Apple Computerは,BladerunnerのRidley Scott監督による象徴的な1984のコマーシャル一度だけの放映で,Apple Macを発表した。そこで公開されたMacintoshオペレーティングシステムが,GUIベースオペレーティングシステムの歴史の幕開けとなった。ベースとなったアイデアはかつてXerox Parcで開発されたものだったが,当時WIMP(Window Interface Mouse Pointer)と呼ばれた,ポイント・アンド・クリックによるマウス操作はAppleが開発したものだ。Mac自体のデモンストレーションが行われたのは,その年の後半のことだ。

他のGUIオペレーティングシステム(AmigaとWindows 1.0はともに翌1985年に公開されている)がそれに続いたが,オリジナルのMacintoshは,音声合成やアンチエイリアス処理されたテキストなどの機能で,CGAからXGAへの移行期にあった競合相手を引き離していた。さらにMicrosoft Wordの最初のバージョンを得たMacは,一連のソフトウェアを中心とした新たなビジネスをもスタートさせた (VisiCalcがApple II用に最初のスプレッドシートを提供したのは,その数年前のことだ)。

翌年1985年の9月,Steve Jobs氏はApple Computerを離れてNeXTを創立した。そこで開発されたNextStepオペレーティングシステムが,それまで知られていなかったObject-Cというオブジェクト指向言語を普及させることになる。NeXT cubeとworkstationはともにオプティカルドライブとファックスを内蔵し,ディスプレイポストスクリプトを装備していた。IBM PCクローンがXGAからVGAに移行しようとしていた時代に,任意の解像度のディスプレイとモニタの上で24ビットカラーの表示を行う能力を備えていたのだ。NeXTはハードウェア,ソフトウェアとも商業的には成功を収められなかったが,Tim Berners Lee氏がNeXT workstation上で開発したWorld Wide Webによって世界を変えることになった。

会社を追われてから10年後の1997年,Steve Jobs氏は当初アドバイザとして,そして同年中に暫定CEOとしてAppleへの復帰を果たした("暫定"というタイトルは,2000年まで外されることはなかった)。そして1997年にはJony Ive氏が,同社の成功に対する,おそらくはJobs氏よりも重要な貢献によって高い評価を得始めている。1998年にリリースされた半透明カラーのプラスチックに収められたiMacは,過去のMacへのオマージュであると同時に,フォームよりもデザインが優先されたものでもあった。その上部にはユニークにバランスされたキャリーハンドルがあり,ステレオスピーカを内蔵していた。 広範に出荷されたデスクトップPCとしては始めてフロッピードライブを持たず,コンピュータ周辺機器としてのUSB人気の火付け役であったことも間違いない。iMacにはCDドライブが内蔵されていて,基本的には電源とキーボード用USBという,2つのケーブルがあるのみだった。モデムとイーサネットネットワークを内蔵していたiMacの’i’は,’internet’を表す俗称でもあったのだ。

MacにはOS 8が同梱されていたが,翌年まで待たずしてOSXがリリースされた。iMacにはClassic MacOSXとOSXのデュアルブートが継続されている状態が,Classicの最終リリースとなるOS9まで続いた。そしてミレニアムの変わり目には,NextStepがApple Computerの標準オペレーティングシステムとなっている。

Appleについて確実に言えるのは,同社がコンピュータ会社として立ち上がった以降,2回の大きな変革を経験しているということだ。そのひとつが2001年のiPodのリリースである。最初は当時のモバイルプレイヤに比べて仕様面で劣勢と思われていた(“ワイヤレスでない,nomadより容量が少ない,面白みのない製品” という評価だった)が,ハードウェアとソフトウェア両面での細部へのこだわりが,消費者製品としての新たな革命を引き起こすことになった。その動向はカラーから始まり,タッチセンサディスプレイへと続いている。一般用デバイスへと市場を拡大したことは,Apple Computerから単にAppleへという,その後の社名変更の理由ともなった。iPodはまた,その後の進展から誕生したOSXのモバイル版であるiOSの起源とも言える。ただし初期リリースにはまだ内蔵されず,iOSという言葉自体も後になって作られたものだ。

第2の変革は2007年のiPhone発表だ。iPodをOSXベースのオペレーティングシステムと携帯電話機能と組み合わせることで,Appleはまず米国人の,続く翌年には世界中の人々のポケットにインターネットをもたらした。販売戦略では,ユーザがロックフリーなデバイスを購入して他のネットワークで利用することを可能にすると同時に,キャリアに対して無制限の常時接続の提供を認めさせる独占的契約を実現している。それ以前も携帯電話でインターネットをブラウズすることは可能だったが,多くはデータが途方もなく高価でであったため,広く利用されることはなかった。エンタープライズ市場はBlackBerryが常時接続のパケット機構によって独占し,携帯電話市場の王者はNokiaだった。iPhoneは結果的にこの両社を凌駕し,モバイルフォン市場をリードする2大メーカのひとつになった。そしてモバイルブラウザのエンジンであるSafari (元はkhtmlのフォーク)は,人気モバイルデバイスすべてに加えて,Chromeのようなデスクトップデバイスでも動作している。

App Storeもまた,Appleとビジネスあるいは趣味の開発者の両方に収益をもたらしている。続く2010年のiPadのリリースによって,Appleの収益の多くが,従来のコンピュータよりも一般向けハンドヘルドデバイスによってもたらされるようになった。Macは現在のコンピューティングの歴史では脇役に過ぎないかも知れないが,読者が今この記事を読んでいるデバイスも,元をたどれば1984年のあの瞬間に行き着くのかも知れない。

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