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自己組織型チームを構築し維持するには

原文(投稿日:2014/02/03)へのリンク

Scrum Guideはスクラムチームを,“自己組織型でクロスファンクショナル”として定義している。では実際に,自己組織的なチームを作り上げるには,どうすればよいのだろうか? Scrum Guideには “自己組織型のチームは,部外者から指示されるのではなく,仕事を完成するために最適な方法を自ら選択する” ,とある。最近では数多くの解説者が自らの経験やアイデアを公開して,チーム自身の手による組織構築を促進する上で,自己組織化の基本原則がいかに有効かを論じている。彼らの経験は,自己組織化を達成してその効果を持続する上で,指導が重要な要素であることの証明でもある。

スクラム黎明期に貢献し,Scrum Allianceの創設メンバでもあるMike Cohn氏が先頃,自己組織型チームの形成と持続の過程において,支援とトップダウン的指導とのバランスが必要であるとレポートした。氏はその中に,支援が転じて統治的行動となった自身の経験を記している。作業方法やミーティングなど,意図の明確な行為に関するルールを作るのは簡単だ。しかしながら,“たったひとつの不用意なルールがチームを窮地に追い込んで”,自己組織化から引き離してしまうこともある。氏は次のように警告する。

それぞれのルールについて,単独でリスクに見合う価値があるものか検討してください。価値のないルールを適用していはいけません。同じように,チームのルールを増やそうと考える場合は,他のルール(あるいは作業方法に対する制約)で削除可能なものはないか,必ず確認してください。

先日の記事で自己組織型チームについて書いたスクラムマスタのRok Prešeren氏は,自身のプロジェクトでの経験を元に,自己組織型チームが継続的成功を収めるためには,チームのフォーメーションが重要なファクタであることを示した。その中で氏は,アジャイル勢力によって次の主流となるパラダイムは,チームフォーメーションのプロセスに関するものになるだろう,と書いている。また,トップダウンのチーム構築では一般に,能力の組み合わせよりも個々の能力が重視されるという点も指摘する。

... 管理者はまず,チームの自己組織化を支援することから始めなければなりません。多くの場合,それがプロジェクトの成果を向上する手段だからです。何と言っても,実際にプロジェクトに携わっている人たち以上に,理想のチーム構成について分かっている人はいないのですから。

氏はCraig Larman,Ahmad Fahmy両氏の,BAML(Bank of America Merrill Lynch)のGlobal Securities Operations Technology部門での経験を紹介している。両氏はそこで,5つの機能特化グループから招集した35人を,わずか3時間のセッションで4つのクロスファンクショナルなチームに再編する作業を促進することに成功した。彼らは業務面での制約と自己組織化の3つのサイクルを使用して,各人がコンフォートゾーン(現在の居場所)の外に出て,チームを形成するように強制した。制約は,チームはバランスよく,場所を共有し,クロスファンクショナルかつクロスコンポーネントでなければならない,というものだ。ここでPrešeren氏は,フォーメーションを指導すると同時に,命令や指揮構造の重複を回避するための支援が必要だ,と指摘する。

指導者は各メンバに対して,チーム構成を制約に照らし合わせて評価するように告げて,人々をコンフォートゾーンから追い出します。そうすることで初めて変化が始まるのです。第2のサイクルに入ると,チームの自己形成が始まります。しかしここで,自然発生的にリーダが現れて,チーム構成にトップダウンのアプローチを取り始めたのです。内部的なトップダウン形成を回避するため,指導者が再度介入しなければなりませんでした。

Mastering Software Project Management: Best Practices, Tools and Techniquesの著者であるThomas Cagley氏は昨年,チーム構成の安定化によるトップダウン的干渉が存在する場合に,アジャイルシナリオに起こり得るチームの問題について記事を書いた。その中で氏は,アジャイルは“チームが安定していて,スプリントあるいはイテレーション中はメンバシップや注目点は変化しない”という基本的前提の上に構築されている,と指摘する。その上で氏は,チームメンバ間の関係の重要性を説くと同時に,チームが変更されればチーム内の人間関係も変わることを指摘して,次のように述べている。

チームメンバの構成や所属期間に関する基本前提が覆されると,チームの信頼性や有効性が崩壊することになります。そこから得られるのはアジャイルチームではなく,ただ漠然とした個人の集まりでしかありません。

InfosysのNitin Mital氏も先日,自己組織型チームを作り上げる上で必要なファクタについて論じている。氏は,自己組織型チームの成立と継続は,チームのコンピテンシ訓練,作業を効果的に楽しむためのチーム指導,メンタリングとラーニングの継続,という3段階のプロセスからなる,と書いている。氏の言によれば,

...自己組織型チームには“指揮統制”は必要ありませんが,コーチとメンタは必要です。

Cagley氏とCohn氏の記事も同じように,フィードバックループの支援と指導を行うことで,チームの自己評価とアジャイル採用を促進するという,コーチの重要性について論じている。Cagley氏は,アジャイルプラクティスを離れて放浪した挙げ句,作業の割り当て行為を始めたチームに関する逸話を公開している。コーチングと新たなフィードバックメカニズムの導入によって,そのチームをトラックに戻すことができた,と氏は説明している。

最後にMital氏は次の点を指摘する。

... 自己組織化チームの構築は継続的なプロセスであって,決して終わることはありません。チームの構成が変われば,すべてのプロセスをやり直す必要があるのです。

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