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実践のための透明性と自己統制型管理の展開

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原文(投稿日:2014/11/26)へのリンク

Lean Kanban France 2014カンファレンスでBjarte Bogsnes氏は,"脱予算(Beyond Budgeting)"をテーマとした基調講演を行った。プレゼンテーションの中で氏は,従来の管理方法の問題点,透明性と自己統制型管理による問題解決,予算編成より優先すべき原則とプラクティスについて語った。

パフォーマンスを管理しなくては何も始まらない,と氏は言う。必要なのは,より自己統制的な管理なのだ。その理由を氏は2つ挙げた。

  • 対処しなければならない不安定性,不実性が非常に多く存在する上に,状況はますますダイナミックになっている。
  • ほとんどの人たちは高い教育を受けている。彼らは有能であり,大人として扱われたいと願っている。

リーダシップは価値を基盤とした,人々に自主性を与えるようなものでなければならない。もっと透明性が必要なのだ,と氏は言う。人は自主性を失うことを恐れる一方で,指揮管理の権利を手にすると,その幻想に囚われてしまう。

チームはそもそも,自主的な管理を行うための存在だ。シンプルでよりダイナミック,かつ自己統制的な方法で行動する必要がある。チームは自ら決断できなければならない。何をするか,しないのかは,自分たち次第だ。その願望が違う方向に進もうとしているとき,それを視覚化してくれるのが透明性である。

InfoQでもニュースで伝えた氏の"Agile 2014閉会のキーノート"には,この転換の論拠,予算を超越する原則,Statoil(訳注:ノルウェーのエネルギ企業)が戦略を行動に移した方法などが解説されている。

従来型の予算編成の問題点は,それが我々に対してあまりにも早期に,優先度の高い決断を強いることにある。そのような仮定は,すぐに役に立たなくなる。この予算編成の方法が,付加価値を生む行動を妨げているのだ,と氏は言う。

予算が必要な理由は3つある - 目標設定,予測,そしてリソースの確保だ。問題は,これらの目的が組み合わされて,ひとつの数値になる時に起こる。相反する目的を持った数字が示されることになるからだ,と氏は言う。目標が分かっていれば,それに合うように予測を調整する。利用可能なリソースの量が予測に依存しているのならば,数多くの交渉が行われることになる。3つの目的には,それぞれ別の数値を立てる必要がある,というのが氏の結論だ。

どの企業も,同じ方法で予算編成を続けているのはなぜか?人は往々にして問題を認識せず,大きな障害がないと考えるものだ。あるいは,プロセスに問題があると気付いても,予算編成を超える別のソリューションを知らないのかも知れない。氏が提唱するのは,脱予算会議(beyond budgeting round table)だ。

InfoQは氏にインタビューして,透明性とリーダシップ,自己統制的管理,およびStatoilがこれを用いてアクションを成し遂げた方法について聞くことにした。

InfoQ: リーダシップがいかに人々に権限を与えるべきか,という話をされていましたが,この変更をサポートする上で,透明性の持つ役割について説明して頂けますか?

Bjarte: もしも管理が秘密裏に行われているのであれば,権限を与えられるのは難しいことです。権限を委譲するには,戦略や方向性,他の人たちの振る舞い,誰から学ぶかといったことを明確にする必要があります。これらすべてにおいて,透明性が必要なのです。さらに透明性は,自己統制の機構としても働いて,管理面に不安を持つマネージャの権限委譲を容易にしてくれます。泥棒や空き巣が暗闇を好んで動き回るのには,それなりの理由があるのです。

InfoQ: マネージャが管理権を持つ上で,透明性が優れた方法のひとつとなり得る理由について,詳しく説明して頂けますか?

Bjarte: 多くのリーダが権限の付与や委譲を口にしますが,管理権限を失うことを恐れている人がほとんどです。管理権限の大部分が単なる錯覚であったとしても,このような不安は強く,そしてリアルです。このようなマネージャは,透明性が優れた社会的管理機構であることを理解する必要があります。

InfoQ: "発言と行動の間にギャップを作らないように",と言われていましたが,これが重要なのはなぜでしょう?ギャップを防ぐには,どうすればよいのでしょうか?

Bjarte: 発言と行動の間には非常に多くのギャップがあります。"我が社は君なしでは成り立たない。君はとても重要だ。私たちは君を信じているよ。"ですが,本当のところは ..."私たちには当然,旅行予算の詳細が必要なんだ。でなけければ,どうなるか分からない!"あるいは"私たち全体,そしてチーム!"でも,個々人のボーナスだけ。... ことばは意図したより,はるかに強い意味を持つものですから,こういったギャップは非常に危険です。価値やリーダシップを唱えることばと,管理プロセスで実行される内容には,一貫性が必要なのです。

InfoQ: もっと自己統制的な管理が必要だ,と話されていましたが,自己統制的な管理が組織においてどのような働きをするのか,例を挙げて説明して頂けますか?

自己統制が必要なのは,私たちを取り巻くVUCAビジネス環境(V:不安定性(Volatility),U:不確実性(Uncertainty),C:複雑性(Complexity),A:あいまい性(Ambiguity))がもはや管理不可能なものになっていること,そして,知識を持った作業者が管理を受け入れないこと,ことの2つが理由です。財務や人事などといったサポート部門は,このような事実の下で行うパフォーマンス管理や人員育成が,自分たちの考えているよりもはるかに制限されたものであることを理解しなければなりません。ですが,本当のパフォーマンスを発揮するための条件を作るとなれば,そのための方法は少なくはありませんから,必ずしも悪いニュースという訳でもないでしょう。

自己統制とは,組織が機能するための広範な(ただし境界のない)フレームワークを作ることで,フレッシュでリアルタイムな情報を使って,チームの継続的な最適化を可能にするためのものです。信号機のないラウンドアバウト(環状交差点)は自己統制の一例ですね。

相対的な表現としての"よくやった"というものに対して,固定的な目標を持たない競争というのが,具体的な例になります。 絶対的な目標でなくても,成果がより多ければより多くを使ってもよいという,単位コストの目標であってもよいでしょう。年間計画や予算のような年次の大仕事なしで,必要に応じてコースを修正する権利を有する,という意味にもなります。透明性は,自己統制の管理メカニズムなのです。

一般的に言って,自己統制に依存する部分が大きいほど,"共同作業"による管理や介入の必要性は小さくなります。進捗監視に重点を移して,必要な時に限って手を差し出せばよいのです。

InfoQ: 自己統制的管理と自己組織化チームは,互いに強く結び付いているように思います。これについてどう思われますか?

Bjarte: そのとおり,2つは表裏一体なのです。自己統制的な管理機構は,管理者の権限委譲を容易にすると同時に,自己組織化チームの運営も容易にしてくれます。

InfoQ: Satoilであなたは,組織全体を変えるための"行動願望(Ambitions to Action)"ということばを使われました。これがどういったものなのか,説明して頂けますか?

Bjarte: "行動願望"は私たちの管理プロセスです。変換戦略,セキュアな柔軟性,中心的価値の活性化という,3つの目的を持っています。戦略を目標(どこへ行くのか),KPI(進捗をどのように把握するか),アクション(どうやってそこに着くのか)に転換するのが行動願望です。Staoilでは,1,400のチームが自身の"行動願望"を持って,上位からブレークダウンしたコンテントよりも,関連する他の行動願望を転化することによって達成しようとしています(これも自己統制の一例です)。チームには,必要に応じていつでも,行動願望を自由に変更することができる権限が与えられています。唯一の管理機構は,大きな変更を行う場合,1レベル上による承認が必要であるということです。ただし小さな変更については,その報告のみが必要です。大きな変更なのか,小さな変更なのかは,チーム内で判断します(これもまた,自己統制です)。

InfoQ: 自己統制型管理と自己組織化チームの場合,そのチームの行動が組織全体で統一されたものであることをどうやって保証すればよいのでしょうか?

Bjarte: そのようなチーム(レベルがどうであっても)には当然,下位の解釈が合理的に統一されていることを保証する責任があります。そしてそこに,透明性の果たす役割があるのです。全体と一致していない部分を,同じレベルのものから隠すことはできません。

InfoQ: 実際に行われた"行動願望"と,そこからStaoilが得たビジネス価値について,いつくか例を挙げて頂けますか?

Bjarte: 私たちのビジネスそのものが,行動願望の発現であり,行動願望を通じて実行されています。

私たちが競合他社に対して財務的に好調を維持していること,持続性,社会的責任,透明性においてトップないし上位にいることが,私たちの管理方法に優れた部分があることを強く示しているのです。

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