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プロダクトオーナバリューゲームをプレイする

原文(投稿日:2015/03/23)へのリンク

プロダクトオーナバリューゲーム(Product Owner Value Game)は,可能な限り多くの価値を提供することを目標として,チームで行うカードゲームだ。参加チームはバックログの優先順位付け,繰り返し計画,結果のデリバリについて学ぶ。ゲームを通じてアジャイル原則について話し合い,経験を交換することができる。

このゲームはクラウドゲームで,Agile Holland(オランダのアジャイルコミュニティ)が,コミュニティプロジェクトとしてサポートしている。プロジェクトの目的は,プロダクトオーナおよびプロダクトオーナと活動を共にする人たちが,アジャイルプラクティスを学び,自身のスキルを開発するための,実用的なゲームを開発することにある。

XP Days Benelux 2014カンファレンスで開催されたプロダクトオーナバリューゲームのワークショップでは,Dajo Breddels氏とPaul Kuijten氏が,ゲーム参加者のサポートを行った。

InfoQでは,プロダクトオーナゲームの開発,プロダクトオーナの役割と価値駆動(Value Driven)化,ゲームのプレイ,コミュニティプロジェクトへの参加などについて,両氏にインタビューした。

InfoQ: プロダクトオーナゲームの開発が始まったのは2年前ですが,どのように開発が始まったのか,その間にはどのようなことがあったのか,説明して頂けますか?

Kuijten: 私たちが当時参加していたKuzidi共同体では,最高のプロダクトオーナを目指す上で,自習に役立つリソースがほとんど存在しない,という結論に達していました。そこで私たちは,プロダクトオーナとして重要なポイントの学習を支援するために,ゲームを開発することにしました。最初に目指したのは,オンラインでもオフラインでも,あらゆる場所から学習材料を収集することでした。それが終わってから,投票と優先順位の設定を行いました。学習材料が集まったので,次にゲームのデザインに入りました。コミュニティイベントを何度も開催して,学習目的に合ったゲームを設計するという,素晴らしい時間を過ごすことができましたこれらのセッションからは,山のようなアイデアを得ています。コミュニティ構築にはたくさんの献身的努力が必要だ,ということも分かりました。開発すべきゲームはたくさんあります。その中から的を絞って,ひとつを実現したのです。これがプロダクトオーナバリューゲームです。最高ですよ!

InfoQ: プロダクトオーナゲームをプレイすることで,何を学ぶことができるのでしょう?

Breddels: このゲームでは,指導のために2つの方法を用いています。

ひとつは,私たちがゲームの中にデザインした,ゲームのメカニズムを通じてです。このゲームは,可能な限り早いビジネス価値の提供に注目することを学び,スマートに洗練していくようにデザインされています。他の機能やユーザストーリに比べて,期待が薄いと分かっている機能やユーザストーリを,改善する必要があるのでしょうか?ゲームをすることで,改善しなければならない理由を考え,価値が最も大きなユーザストーリを開発することを学びます。改善にはコストも時間も必要ですから,賢明な判断が必要なのです。

ふたつめは,プレイの支援に関するものです。アジャイルゲームにはサポートが必要だと,私たちは強く信じています。コーチあるいはスクラムマスタが,ゲームに新たな価値を加えることができるのです。このゲームでは毎回,意義のある議論が行われています。例えば: ゲームはできる限り単純になっていますから,内容を説明したり,プレイするのは簡単です。ゲームで用意されたユーザストーリはすべて相互依存していない,といったようにです。おそらくは参加者の誰かが,これらのユーザストーリを実際に体験したことがある,と言い始めるでしょう。これはゲームの進行役にとって,このトピックを議論するチャンスになります。例えば: ユーザストーリが依存性を持つことによるマイナス面は何か,回避は可能か,将来的にそのような状況に遭遇した時はどうすればよいのか。

Kuijten: プロダクトバックログの継続的な改善と,そこから期待できるメリットが,重要な学習目的です。状況を考慮に入れながら,継続的な改良と製品のバックログ項目のデリバリを両立させることで,提供する価値を最大限にすることができるでしょう。

InfoQ: アジャイルで,プロダクトオーナの役割がこれほど重要なのはなぜでしょう?

Kuijten: スクラムでの役割の説明を見れば分かるとおり,プロダクトオーナは,その製品のミニCEOなのです。つまり製品には,優秀なCEOが必要なのです,そうですよね?製品が組織に提供するメリットの責任者,それがプロダクトオーナです。ですから,そう,極めて重要な役割なのです。

InfoQ: プロダクトオーナはとても難しい役割だ,という印象があります。優れたプロダクトオーナを探すのは大変だと思うのですが,そうではないでしょうか?

Kuijten: プロダクトオーナは確かに難しい立場です。複雑な環境で価値を提供しているチームにいるのならば,その仕事が合っているということでしょう。

ですが,優れたプロダクトオーナを見つけるのは難しくはないと思っています。アジャイルソフトウェア開発を実践している組織には,優秀な人たちが本当にたくさんいます。組織的な問題の方がずっと大きいのです。

組織の"ビジネス"側は,アジャイルと十分なコネクションを持って,製品のオーナシップを通じて成功する方法を理解しているでしょうか?現場に対して,本当に意思決定権を委譲しているでしょうか?

プロダクトオーナに対して,必要とされる時間と製品知識,権限のコンビネーションが十分に与えられることが,あまりにも少な過ぎるというのが実情です。

Breddels: さまざまなスキルを要する,難しい役割だと思います。何が起きているのかを知るためには,十分なビジネス知識が必要ですが,その一方で,ビジネス上の意思決定を適切に行うためには,特定のソリューションに取り込まれてしまわないよう,ある程度の距離を置くことも必要です。開発チームだけでなく,ビジネスやユーザとも会話するためには,両方のことばを理解できなくてはなりません。誰でもできる仕事ではないのです。ですが,大規模な組織をコーチングしていると,この役割に合った人が必ず何人も見つかります。そこで大きな問題になるのは,このような人たちが,プロダクトオーナよりも組織内でステータスの高い,別の役割をすでに持っていることです。例えば,外部からプロダクトオーナを雇用しようとしていたある組織が,時給80ユーロ(アナリストと同額)以上は払いたくないと考えていたことがありました。プロジェクトマネージャに対しては120ユーロ払っているにも関わらず,です。

InfoQ: プロダクトオーナゲームの目的のひとつに,“プロダクトオーナをより価値駆動(Value Driven)にする”ということがありますが,この価値駆動の意味について,詳しく説明して頂けますか?

Kuijten: アジャイル宣言には,“顧客満足を最優先し,価値のあるソフトウェアを早く継続的に提供する”,とあります。これが最優先であるとすれば,“価値のある”ためには,何をすればよいのでしょう? 私にとって価値駆動になるということは,プロジェクトの巨大なビジネスケースよりもはるかに詳細な粒度で,自分の行動の影響を継続的に見ていく,ということです。その価値を表現し,すべてのステークホルダと価値に基づいた対話を行っていくのが価値駆動なのです。ところで,価値のことを“ビジネス”価値と呼ぶことがよくあります。あたかも他の種類の価値があるような言い方ですが,組織にとっては唯一のものであるという意味からも,単に価値と呼ぶべきでしょう。

要するに,価値駆動であるということは,価値に対して共通理解に到達し,価値に対して十分に広い視点を持ち,次に行うことを決定するために価値を用いる,という意味なのです。

InfoQ: XP Days Benelux 2014では,プロダクトオーナゲームをプレイするワークショップの進行役を務められていましたが,そこでの参加者が学んだことについて,いくつか教えて頂けますか?

Breddels: ゲームでは,すべてのカードに期待される価値を書き込みました。参加者のひとりはこう言っていました – “なるほど,でもビジネスの価値が分かっていれば,大して難しくないよ。” 素晴らしいですよね!

Kuijten: 参加者が喜んでくれたのが何よりです。学習にはそれが必要ですから。今回の参加者は経験豊富なアジャイルコーチや実践家たちでしたから,大勢のプロダクトオーナで行う場合とは,学習する内容も違っていました。ですから,継続的改良や提供価値の最大化戦略に関するレッスンだけではなく,参加者はビジネスゲームの素晴らしさを土産に持ち帰ることができたのです。発見へと導く,素晴らしい方法です。毎日の作業を行う上でも,学習と発見を促進する上でも,ゲームをプレイすることは優れた方法だと確信しています。現実の仕事は,改良の余地を多く残した,設計の不十分なゲームのようだと,ある参加者が言っていました。まさにその通りだと思います。基本的に私たちは,アジャイルのコーチングを始めて以来,ワークライフゲームエンジンのルールを変えて過ごしてきました。

InfoQ: ゲームについてもっと知りたい,あるいはゲームをプレイしてみたいという人たちが,コミュニティプロジェクトに参加するにはどうすればよいのでしょう?

Kuijten,Breddels: 現在はアルファ版の,別のゲームエンジンの開発を手伝ってくれる人を歓迎します。ゲームカードやルールが必要なのであれば,info@agilematters.nlにメールを送って頂ければ,pdf形式で送信します。カンファレンスでゲームをプレイしたいという人たちもいますので,2015年はもっとゲームができるようになると思います。

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