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フィードバックの技法

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原文(投稿日:2016/03/17)へのリンク

QCon London 2016にてDan North氏がフィードバックを与える、受けることについてのモデルと技法について話をした。

フィードバックはどのように動作するか

フィードバックという言葉はシステム理論から生まれている。動的システムでは、ある種の出力はフィードバックループを経由して再度システムの入力になる。適応的システムはこのフィードバックに依存している。

人々をシステムとして見て、一群の人々をシステムのシステムとして考えてみようとNorth氏は言う。例えば、小さな変化で大きな影響を与えるフィードバックポイントとなるレバーを見つけてみよう。

システムは遅延することもある。フィードバックの遅延は不確実性を生む。これが小さい単位で前のめりで動こうとする理由だ。こうすることで遅延を減らし、不確実性とストレスを減らすことができる、とNorth氏は言う。

フィードバックループにもいくつかの種類がある。ひとつはループを強化するものだ。振る舞いを増幅、促進するか、振る舞いを抑圧し減少させる。

North氏ははしごの上にバナナがある檻の中の猿を例に出す。1匹の猿がバナナを取ろうとすると、すべての猿に水がかけられるようになっている。この仕組みで、猿はバナナをとるべきではないと学ぶ。新しい猿が入ってきてバナナを取ろうとすると、ほかの猿が止める。濡れたくないからだ。時間が経って、すべての猿が入れ替わって、どの猿も濡れた経験がなくても、どの猿もバナナを取ろうとしない。これは、学習性無力感と呼ばれる、とNorth氏は言う。間違っているかもしれないと考えるとき、あることをしたことがないとしても、人々はそのことをしようとしない。

また、安定化を目指すフィードバックもある。システムを安定に導くフィードバックだ。システムが状態の間を揺れ動くようにする振動性のフィードバックもある。フィードバックの時間が比較的短く、システムが素早く反応する場合に振動が起きる。フィードバックへ反応する前にシステムが一時的に停止するようにすれば解決する。.

小さく頻繁なフィードバックが大きく頻繁ではないフィードバックより望ましい、とNorthは言う。フィードバックの遅れはシステムの適応能力に影響が起こる。年に1度のパフォーマンスレビューは大きな、そして、長い期間のフィードバックだ。このような仕組みだとフィードバックの大半は失われる。

フィードバックと与える、受ける

フィードバックの仕組みを説明したあと、氏はフィードバックの授受について話をした。自分の振る舞いを改善、変化させるため、困ったときに助けを求めるため、自分がうまくやっているかどうか考えるため、我々はフィードバックを求める。

フィードバックを提供する理由もいくつかある。ひとつは、仕事の仕組みを改善するため、例えば、チームの仕事を改善するためだ。また、フィードバックを促進する文化をモデル化し、フィードバックを受け入れられるような状況を作るためでもある。

フィードバックを提供することが誤った使い方をされる場合もある。誰かをコントロールしたり、優れた知識を披瀝するためだ。例えば、誰かが間違っていて自分が正しい答えを知っているということを認めさせるためにフィードバックを使う。

フィードバックのサイクルが始まるのはフィードバックが与えられたときか求められたときだ。次のステップはフィードバックが聞かれ認識される。そして3番目のステップはアクションが実行されることだ。氏はフィードバックを探るときはこの3つのステップを意識してすべてのステップが効果をあげるようにするべきだ、と言う。

氏はユーザーインターフェースを実際のユーザーでテストするときにどのように効果的にフィードバックを使うかを例に挙げている。システムをどう思うかをユーザーに聞くのではなく。ユーザーと共に座り、ユーザーが何をしているのかを見る。システムを見てため息をついたとき、何か問題があるのが普通だ、と氏は言う。そして、そのときに、ユーザーに何が問題なのかを聞くのだ。

フィードバックの技法

North氏は効果的にフィードバックをする方法を説明する。フィードバックは実際の振る舞いについてするべきであり、具体的であるべきだ。ほとんどの場合、フィードバックは個人のレベルで受ける。その結果、フィードバックを与える人と受ける人フィードバックの解釈が異なってしまう。例えば、"あなたの仕事はずさんだ"が"あなたはずさんな人だ"になってしまう。

フィードバックを構造化する上でもっとも効果的なモデルはSituation, Behavior, Impact (SBI)だとNorth氏は言う。このモデルは観察された振る舞いについて、その振る舞いによって受けた影響と共に、フィードバックする。観察された振る舞いは事実であり、判断ではない。そしてどのように感じたかを説明する。

North氏は、ふたりの人物がそれぞれ指摘し合い、話し合いではなく議論になってしまうような状況でSBIをどのように使ったかを説明している。氏はふたりにお互いに座って振る舞いの例を挙げ、その振る舞いから互いにどのような影響を受けたのかを示すように言った。そして、実際の振る舞いとその状況がが思い当たらないならそれは起きなかった出来事なのだと伝えた。

North氏はChris Argyris氏の推理の梯子を説明する。この概念は人々の取得する情報がいかにしてフィルターを通過するのか説明したものだ。観察された情報と経験はフィルタされてしまい、その後、意味付け、仮説作成が行われ、アクションを起こす前に結論が導かれ、考えが固まる。これが無意識のレベルで怒っていることだとNorth氏は言う。

フィードバックを構造化する3つのモデルがあり、それぞれ、フィードバックの技術を開発するため活用できる。ひとつ目はイルカのフィードバック。これは、ポジティブなフィードバックだけをする。うまくいったことだけを褒め、悪い点は無視する。しべての悪い点は自分で治すことができるという前提。まだ信頼関係が薄い状態で使われる。

次のモデルはサンドイッチフィードバック。3つの部分でできている。具体的でポジティブな敬意、のびしろ、そして、全体的にポジティブな総括だ。致命的に重要なことが安全にフィードバックできるのはこのモデルだけだ。このフィードバックは批判としてされるべきではない。動機付けから"離れる"のではなく動機付けに"向かって"されるべきだ。一定の信頼関係がある状況で使われるモデルだ。

3つ目はアトキンスのフィードバック。のびしろしか指摘しない。パンのないサンドイッチフィードバックだ。しっかりとした信頼関係がない状況で使える。互いが互いの意見に価値を見出し信頼しているという前提がある。

フィードバックを受けるためには、よく聞いて"ありがとう"ということだ。

フィードバックはシステムに影響する。自身の動機、つまり、なぜフィードバックをするのかに正直でなければならない。そして、自身のスキル向上のためにフィードバックの授受を活用するのだ。

 
 

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