BT

最新技術を追い求めるデベロッパのための情報コミュニティ

寄稿

Topics

地域を選ぶ

InfoQ ホームページ ニュース ソフトウェアを越えたアジャイルの活用

ソフトウェアを越えたアジャイルの活用

ブックマーク

原文(投稿日:2016/03/21)へのリンク

オーストラリアのメルボルンで開催された1st conferenceカンファレンスにおいて,Eduardo Nofuentes氏が“agile beyond software”と題した講演を行なった。その中で氏は,アジャイルの原則と価値をソフトウェア開発以外に展開する手法を解説し,コールセンタなどソフトウェア以外のチームにおいて,ビジネスのアジリティ向上にアジャイルを活用した実例を紹介した。

Nofuentes氏は,アジャイル宣言の中の“ソフトウェア開発”や“動くソフトウェア”といった専門用語を一般的な表現に置き換えることで,より汎用的に適用できることを示してみせた。

私たちは,仕事の実践あるいは実践を手助けをする活動を通じて、よりよい仕事の方法を見つけだそうとしている。この活動を通して,私たちは以下の価値に至った。

プロセスやツールよりも個人と対話を

包括的なドキュメントよりも成果

契約交渉よりも顧客との協調を

計画に従うことよりも変化への対応を

続いて氏は,Jeff Sutherland氏のアジャイルの原則と価値に関する著作に言及した。アジャイルの原則には汎用性があり,対象をソフトウェア開発に限定していない。チームないし組織がこれらの考え方や原則を適用しているのであれば,すでに彼らはアジャイルを実践しているのだ,とNofuentes氏は言う。

アジャイルのプラクティスはビジネスニーズにも合致するはずだ,と氏は言う。使用するプラクティスが何であれ,ビジネスの目的に適応することは可能である - ただしそれには,アジャイルの方法論やプラクティスからではなく,解決すべきビジネス上の問題を開始点として,その問題に相応しいアジャイルプラクティスを適用することが必要だ。

アジャイルプラクティスを採用したチームとして,氏は,自身のブログ記事“4 agile practices you can start with your team tomorrow”で取り上げた例をいくつか紹介した。その中のひとつでは,チームが毎日のスタンドアップを利用して,個々の担当する作業を報告し,互いの調整を図っていた。チームが取り組むすべてのプロジェクトやタスク間のシナジーを見出す方法として,毎日のスタンドアップは利用可能だ,と氏は述べている。不要なものとして省略されることも少なくないスタンドアップだが,代わりに電子メールを送るようならば,逆に時間を浪費することになる。

次に氏は,Charlie Rudd氏の“アジャイルの3つの波”に言及した。最初の波は,よりよいソフトウェアを生み出すための小規模なアジャイルチームの確率だった。第2の波は,アジャイルチーム間の作業の統合と調整に関するものだった。そして第3の波は,組織全体でのビジネスアジリティの実現だ。

組織のアジリティを達成するための重要な要素として,氏は次の3つをあげる。

  1. 真の顧客重視
  2. リーンアプローチ
  3. 勇敢なリーダーシップ

真の顧客重視に関して氏が言及したのは,株主価値のトラップについてだ。多くの企業は,株主価値の最大化が最も重要な目標であるべきだという考えから,ユーザニーズよりもコスト削減や価格の上昇を重視する。これに対して氏は,“株主価値から離れて,企業の注目点をユーザに戻さなくてはならない”,と指摘する。サイロを克服して組織のフローを確立するためには,システム思考やデザイン思考が有用だ。

リーンアプローチを実現するには,組織としての無駄を排除し,顧客価値を追求し,作業フローを改善するような企業内文化を育てる必要がある。不必要なミーティングや報告,予測,詳細なビジネスケースなどは,ここで言う無駄なものの実例だ。講演では参加者のひとりが,1週間のスプリントを計画するために4時間を費やした例を報告していた。物事をシンプルにする方法を見つけなくてはならない。シンプルさは競争上のアドバンテージになり得るのだ。

勇敢なリーダなくしては,アジャイル転向は成功しない。勇敢なリーダシップの大きな特徴は,奉仕者の考え方を持つことだ。勇敢なリーダは人々に何をすべきかを告げるためではなく,障害を取り除くために存在する。ビジョンを設定し,学ぶべきものを与え,経験と失敗の機会を提供する。勇敢なリーダは不完全な行動を敢えて選択し,正解を知らないことを認めるのをためらわない,とNofuentes氏は言う。

講演の締め括りとして氏は,REA Group Contact Centreにおけるアジャイル転向のケーススタディを公開した。最初に氏は,価値と障害要件(failure demand)を理解し,システムから障害を取り除くというJohn Seddon氏の哲学を適用したシステム思考アプローチについて,その概要を説明した。

REA Group Contact Centreでは,アジャイルのプラクティスと方法論として,毎日のスタートアップやかんばんボード,レトロスペクティブ,回答の必要なすべてのコールを対象としたコンタクトセンタ内の作業可視化などを導入している。このアプローチにより,従来的なシステムから離れて,より人間的なシステムによるコンタクトセンタ運用を実現することができた。

このアプローチは,結果的に顧客満足度と従業員参加の大幅な向上を実現したが,それよりも重要なのは,チームのやりがいとレジエンスが改善されたことだ。

 
 

この記事を評価

関連性
形式
 
 

この記事に星をつける

おすすめ度
スタイル

BT