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新しいプライベートクラウドで"どこでも計算処理"を提供するWolfram

原文(投稿日:2016/10/26)へのリンク

MathematicaWolfram|Alphaなど,計算機能を中心とした製品を提供するソフトウェア企業のWolframが,計算業務の集中管理を望む企業をターゲットとした,新たなプライベートクラウドアプライアンスの提供を開始した。

Enterprise Private Cloud (EPC)は,計算処理のアルゴリズム製品化に関してWorframが培った基礎技術を自己完結型の仮想マシンに搭載し,AWSのようなパブリッククラウドやプライベートなデータセンタにデプロイできるようにしたものだ。これらの技術は,同社がこれまでデスクトップや自社のパブリッククラウドとして提供してきたものだが,戦略ディレクタのConrad Wolfram氏は,今回の製品の目標として,“社内のどこでも計算処理を可能にする”ことを挙げている

EPCは機能強化されたエンタープライズソフトウェアの“個人所有”を実現します — パブリッククラウドであるWolfram Cloudをパッケージ化して,企業が自己所有するインフラストラクチャや,Amazon EC2など任意のパブリッククラウドで運用可能にしました。私たちがクラウド計算サービスを提供する代わりに,すべてがあなたの社内で可能になるのです。つまり,Mathematica 11の計算処理やWolfram LanguageのRAD開発のすべてを,自社内のサーバやクラウドベースで行うことができるのです。(プライベートデータを使用するような)高度な計算処理を誰でも手軽に,すぐ使うことのできるセキュアな内部サービスとして利用可能です。CEOから開発者まで直接使用できる幅広いインターフェースに加えて,他のアプリケーションからアクセスできる簡潔なAPIも備えています。

EPCはCentOS上で動作し,単一ノードあるいは複数ノードの構成で運用することができる。さらにEPCには,主に3つのWolfram Cloudインターフェース — Development Platform, Mathematica Online, Programming Lab — が用意されている。データ科学者や開発者は,デスクトップあるいはブラウザベースのDevelopment Platform IDEを使用して,Worlfram言語(Wolfram Language)に基づいたアプリケーションを開発し,WebアプリケーションあるいはWebサービスとしてデプロイすることができる。Mathematicaはデータ分析や高度な数学的処理,画像演算などのための標準的な計算プログラムとして長い歴史を誇る。一方のProgramming Labは,Wolfram言語の学習を支援するためのものだ。

InfoQはEPCに関してさらに詳しく知るためにWolframにコンタクトし,Wolfram Research Europeで技術的なコミュニケーションおよび戦略を担当するディレクタであるJon McLoone氏から話を聞くことができた。氏は,Mathematicaのようなツールは計算プログラムの作成において重要であるが,そのように作成されたプログラムを実行するために,これまでは同じくMathematicaを所有している必要があったことを指摘した。これによって計算処理は,企業内の戦略的活動とは見なされず,ニッチな学問という立場に追いやられていたのた。McLoone氏はWolfram CloudとWolfram EPCについて,計算処理を企業のすべての場所で簡単に利用できるようにすることにより,企業における中心的な戦略的資産の位置にまで高めるものだと考えている。Conrad Wolfram氏も自身のブログ記事で,これと同じ点を挙げている。

従来の高度な計算処理は,大部分の企業において,少数の限られた専門家にのみアクセス可能なものでした。それ以外の人たちには,3つの現実的な選択肢がありました — 基本的な計算処理(Excelなど)を自身で行なうか,特定の目的で事前定義された計算処理を利用するか,専用プログラムの開発あるいは単発的な解答を提供してくれる専門家を探すか,です。

データ分析が企業において専門機能であった頃は,デスクトップソフトウェア — 特に当社の製品! — を利用することが適切な手段でした。しかしながら,いまやデータ分析は企業全体の問題であり,企業内で共有された計算ソリューションと組み合わせる必要があります — EPCはそれを可能にします。データ分析の問題を解決するには,個人のデスクトップではなく,企業レベルのモデルが必要なのです。

Wolframがプライベートクラウドバンドルを決定したのには,いくつかの理由がある。McLoone氏が指摘するのは,“ファイアウォールの内側”の計算処理を選択肢として提供することによって,既存のオンプレミスのデータセンタからの接続や,標準的な権限システムへの組込みが容易になると同時に,パブリックおよびプライベートクラウドへのデプロイメントが可能になることのメリットだ。エンタープライズデータベースへの接続用として,EPCはいくつかのリレーショナルデータベースコネクションを用意している。Eclipseの統合環境で開発を行なっているWolframユーザは,既存のソース管理やソフトウェア配信ツールを活用することも可能だ。Wolframのパブリッククラウドとプライベートクラウドのサービスを比較した場合,プライベートクラウドでは,ユーザ独自の管理,稼働中のAPIやエンジンコンポーネントの利用,タスクのスケジュール設定,共有可能なレポートの生成といったことが可能なメリットがある。Conrad Wolfram氏は,この統合型クラウドプラットフォームによって,最善のコンポーネントを個別に用意するよりも優れた計算環境を提供することが可能になると考えている。

重要な原則としてもうひとつ指摘したいのは,この集中型の計算サービスモデルには,当社の技術が特に適していることです — 当社のシステムは統合化されたオールインワンシステムであり,さまざまなシステムやタスクの寄せ集めとは一線を画しているのです。計算処理のすべての分野と機能を,単一のハイレベルでコヒーレントなWolfman言語に統合することで,完全な相互結合性を実現します。クラウドベースサービスの大半は,さまざまな処理 — 統計,レポート,モデリング — を行なう別々の“計算処理サーバ”を多数集めたものに過ぎません。これらはスイッチングに多大なロスを生み出す上に,一旦導入してしまうと,そのお仕着せのワークフローに従い続ける他はないのです。このようなシステムの寄せ集めは,計算処理を基盤とした広範な生産性にとって,百害あって一利なしの存在です。

Wolfram EBCの仮想インスタンスを単一で実行するには,最低で8コアCPUと16GのRAM,150GBのストレージが必要だ。サポート対象はAmazon EC2, VMware,VirtualBox,KVMである。

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