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ソフトウェア開発に専門分野の重要性を取り戻す

原文(投稿日:2017/02/08)へのリンク

今日の業界紙を読めば,世界中のビジネス側の人たちがITについて,自分たちの足を引く邪魔者だと考えていることが分かるだろう。ビジネスが80年代以降からアジャイルを語っているのに対して,ITがアジャイルを始めたのは2000年初頭になってからなのだ,とDavid West氏は,先日アムステルダムで開催されたDDD Europe Conferenceでのプレゼンテーションで述べた。

Object Thinking”の著者であるWest氏がITの仕事を始めたのは60年代後半の銀行で,氏は銀行家ではない始めての従業員だった。そのため氏は四半期に30時間,銀行業務のトレーニングを課せられていた。結果として氏は,コードを書けるその分野の専門家になった。つまり氏は,その分野のニーズに応じて開発を行なう,当時としての専門家の立場にもあったのだ。

ソフトウェア工学の高等教育が発展するにつれ,ユーザ分野に関する関心事とプログラミングの関心事が乖離している。その乖離が,ITを戦略的優位性ではなく制約であるとみなすビジネスの見解を増長しているのだ。

ITとビジネス間の関係を再構築する試みは,長年にわたって行われてきた。共通の語彙を構築する手段としてのオブジェクト指向の導入などはその例だ。ドメイン駆動設計(DDD)が登場した時,それもまた,マシンのみを排他的に重視することが誤りであるという事実を私たちに認識させるものだった。有用なシステムの構築においては,私たちの関与するドメインを理解することが必要なのだ。

残念なことに,これらの試みはいずれも持続的な効果を有してはいない。West氏の示す方向に向かうためには,いくつかの前提条件が必要だ。まず私たちは,システムとその仕組みをもっと理解しなくてはならない。 次に私たちは,マシンに背を向けて,ドメインに向き合わなくてはならない。さらに氏は,コンピュータ科学とソフトウェア工学における問題の大部分は,私たちが解決しようとしている問題において本質的なものではなく,問題を解決する上で使用する実装に関するものであることを指摘している。

優秀なプログラマであるだけでは大して役にはたたない,とWest氏は強調する。優れた設計や優秀なソフトウェアは,T型ないしπ(パイ)型のスキル,すなわち,ひとつあるいはふたつの専門家であることに加えて,他分野の専門家と協力できる幅広さと能力を備えた,複数のスキルセットを持った人たちによって構成される,多様性を持ったチームによって実現されるものだ。このような領域のひとつとしてWest氏が特に強調するのは,問題解決において有用なメタファが多く使用される生物学の分野だ。

まず最初に始めるべきなのは,私たちの従事する分野に関する書籍を読むことだ,とWest氏は言う。銀行であれば,まずは銀行業務,次にはそのドメインに関連する分野を中心としたビジネス一般,銀行ならばマーケティングやマネジメントについて読むべきだ。さらにWest氏は,ビジネスが変化に適応する方法についても学ぶことも推奨している。しかしながら,仕事に関係のないものを楽しみとして読むことも時には重要だ,とも氏は述べている。

 
 

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