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World Government Summitで“Building the Hyperconnected Future on Blockchains”と題したペーパーが公開に

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原文(投稿日:2017/03/04)へのリンク

近頃開催されたWorld Government Summitで、Hexayurt CapitalとConsenSysは“Building the Hyperconnected Future on Blockchains”と題したペーパーを発表した。このペーパーの目的はグローバリゼーション2.0を駆動する次のイノベーションの波のための合意のインターネット(Internet of Agreements,IoA)の戦略を提供することだ。

World Government Summitは130以上の国のリーダーや政策の立案者や専門家が集まる。Elon Musk氏(Tesla,Space X)、Travis Kalanick氏(Uber)、Reid Hoffman氏(LinkedIn)、Sheikh Mohammed bin Rashid Al Maktoum氏 (ドバイの皇太子であり、アラブ首長国連邦の首相)が公演を行う。

Blockchainは取引を記録する共有台帳を使う新興の技術だ。Ethereumは最も人気のあるブロックチェーンのひとつであり、契約をコードで表現しブロックチェーンとともに実行できるようにするスマートコントラクトをサポートする。アクセンチュアやサンタンデール銀行、JPモルガン・チェース、マイクロソフト、インテルといった大企業がEnterprise Ethereumアライアンスに参加している。

InfoQはこのペーパーをレビューし、この記事で主要な内容を取り上げる。最初の部分はHexayurt Capitalによって書かれ、次にあげるトピックが取り上げられている。

脱中心化された世界でのフェアプレー

ブロックチェーンは、仲介者の必要性を減らすか、または排除する方法と見なされている。Hexayurt Capitalは、グローバル化された世界でのフェアプレーのためのテクノロジーと説明している。この世界は次の3つの公平さの利点によって促進される。

すべての場所が同じ場所になる

コンピューターを近くに配置するべき、中心となる取引機構が存在しない。取引は世界のどこで行われようと一定の時間内で明確になる。場所に関係なく誰にとってもフェアになるということだ。これは“ブロック"と呼ばれる小さなバッチで取引を実行することで達成される。

記録が恒久的に残る

脱中心化のメリットは極めて強力なサイバーセキュリティだ。世界中の多くのコンピュータにトランザクションを同時に処理させるということは、マシンが侵害された場合でも、その侵害はブロックチェーンを保持する残りのコンピュータには影響しない。ブロックチェーンはブロックの安全なシーケンス(チェーン)なのだ。

グローバルなブロックチェーンは誰のものでもない

公正な合意形成(アルゴリズム)で運用されているので参加者全員が平等に責任を持ち、平等に利用できる。ローカルなブロックチェーンは主権者や企業によって運営され、既存の企業ネットワークと同様に参加できる人を選ぶが、より安全だ。グローバルなブロックチェーンはインターネットに似ている。誰もが参加できるからだ。しかし、ブロックチェーン特有のセキュリティは損なわれない。

登録簿

ブロックチェーンとその分散型台帳は、価値の登録簿として機能する。例えば、“ブロックチェーンを使用すると、商品が一意であるかどうかを確認することができます。車や建物、ドメイン名がひとりによって所有者されていることが確認できるのです“。この登録簿のメリットを享受できるのは政府だ。Hexayurt Capitalは次のように説明する

ドバイのブロックチェーン戦略に成長した最初のアイデアを作成したとき、私たちの意図は、政府の既存の=強みの上に築くことでした。安全な記録保持は、国家の核となる能力です。 新技術により、政府は新しい方法でサービスを拡張できます。 BitcoinとEthereum(2つの主要なブロックチェーンプロジェクト)の元のコンセプトは、多くの政府型サービスが国家支援に強く依存することなく提供できるということでした。

シェアリングエコノミー

ブロックチェーンのプロジェクトがターゲットにする領域のひとつとしてシェアリングエコノミーがある。シェアリングエコノミーについて議論するとき、UberやAirbnbのような企業が頻繁に言及されるが、Blockchain Revolutionの著者、Alex Tapscott氏は、彼らを集約者とみなしている 。UberとAirbnbは、中央の決済機関の機能を果たし、サービスの提供者と消費者を結びつけ、両者の取引から手数料をとる。Zip Carの創設者であるRobin Chase氏は、著書Peers,Incで、このモデルがサービスの提供者にとって難しいと説明している。氏は次のように説明する

ピア(サービスの提供者)は中央の企業と公正な取引をします。中央の企業は企業であるため、多くのスタッフを抱えており、ピアは普通、共有できるリソースを持つ個人です。従って、争いになった場合に釣り合いません。

Hexayurt Capitalはライド・シェアリングの経済を金融機関や信用機関と同様に比較する

このパターンはあらゆるスケールの市場の作り手とベンダとの間で生まれます。例えばSWIFTとVISAはそれぞれの会員である銀行と比べ、とても大きな力を持っています。金融機関にとって彼らのネットワークから締め出されることは致命的です。VISAの創業者であるDee Hock氏はVISAを創業する前にインターバンクネットワークを構築しようとしましたが、このような商業的なダイナミクスのために失敗しています。

環境を平にするためにHexayurt Capitalは変化が必要だと感じている

集合的表現かその代替となる所有のモデル、または政府による規制。未来はピアが労働組合のように団体交渉のブロックになるか、ピア自身が企業のような構造を持つか、政府がシェアリングエコノミーを規制し公正な取引をする保証するようになるかもしれません。

その結果、Hexayurt Capitalはピア通しの取引から多くのコストが削減されると考えている

自動車や住居などのリソースのシェアリングエコノミーマーケットの走らせるためのコストと複雑さがブロックチェーンのインフラによる自動化によって、90%から95%削減された場合、自然な経済的均衡はひとつの大きな組織ではなくネットワークの中で働く小さな多くの参加者に味方するでしょう。

政府のブロックチェーン導入

ブロックチェーンエコシステムのための脱中心的アプリケーションとツールの開発を行うConsenSysもこのペーパーの作成に参加している。同社はブロックチェーンの導入を模索している政府に次のようなアドバイスをする

多くの潜在的なブロックチェーンユーザーと同様、政府も自分たちのビジネスの弱点を探し、それをスマートコントラクトとブロックチェーンの利点を活用するプロセスとして描きなおしてみるといいでしょう。

この新しい技術との間にあるギャップのひとつは幹部とITスタッフの両方の教育だ。ブロックチェーンに適しているビジネスプロセスを特定するのには実験が必要だ。ConsenSysは次のように示唆している

ITプロフェッショナルがこの技術を実験できる場所が必要です。‘手を汚して’、素早く学習します。MicrosoftはMicrosoft Azure上でサンドボックスを用意しています。開発者はこれを使って10分でEthereumのサンドボックスを用意し試すことができます。ここにはブロックチェーンとスマートコントラクトを試すための開発ツールやプラットフォーム、テンプレートがすべて揃っています。

これに加えて、ConsenSysは次のような戦略も提供する。

画像の元: https://worldgovernmentsummit.org/api/publications/document?id=c5717dc4-e97c-6578-b2f8-ff0000a7ddb6

R&Dの研究課題とコスト効率

開発者が実験をするサンドボックスを越え、ConsenSysは次のような導入を推進する手法を提案している。

ハッカソン、研究、ラボはブロックチェーン技術を調べるのに良い方法です。

として、アメリカ合衆国保健福祉省は2016年8月、“Use of Blockchain in Health IT and Health-related Research Challenge”という課題を発表し、70の応募を受け取った。

プライバシー、パフォーマンス、カスタマイズ

ブロックチェーンはさまざまな形態で現れる。Bitcoinはパブリックなブロックチェーンの一例だ。ブロックチェーンは非公開にもできる。共有されたインフラの上で活動している会員だけが利用できるようになる。大きくカスタマイズされた非公開のブロックチェーンを探している企業には、将来のリスクがつきまとう。ConsenSysはそのような企業は慎重に進めるべきだと示唆する。

現在、ブロックチェーンのエコシステムは、新しいイノベーションで溢れています。 一部の企業では、ファイナンスから資産の追跡にいたるまで、企業のユースケース向けのカスタマイズされたブロックチェーンを構築しています。カスタムのプライベートな実装が将来の相互運用性を妨げる可能性があるため、Enterprise Ethereumなどのコンソーシアムでこれについて議論されています。

アイデンティティ

アイデンティティの管理はブロックチェーンの利点のひとつだ。現在の銀行部門では、顧客プロセスのスピードを遅らせ、コストを増加させる非効率性が存在するConsenSysは次のように考えている

顧客が金融機関に提出しなければならない情報を識別するための標準化はなく、これらの機関では顧客確認の努力は重複します。これによって銀行と顧客の両方に非常に高い取引コストを課されています。しかし、世界の金融システムより安全にはしていません。

これらの問題に対する解決策がブロックチェーンにある。ConsenSysは次のように説明する。

証明書として知られているデジタル署名は、他のアイデンティティや機関が、あるアイデンティティのプロファイルデータの正当性を検証し、証明することを可能にします。これは、顧客のチェックに利用できるでしょう。銀行は年齢、住所、またはその他の属性などの確認済みの顧客データを使って証明することができる顧客を把握するのに役立ちます。

ConsenSysはブロックチェーンのアイデンティティーシステムがエンドユーザーに利益をもたらす次のようなユースケースを提案している。

  • 個人のアイデンティティ、評判、データ、およびデジタル資産を所有し、管理する
  • データを相手に安全かつ選択的に開示する
  • パスワードを使用せずにログインし、デジタルサービスにアクセスする
  • 請求、取引、および文書にデジタル署名する
  • ブロックチェーン上で価値を制御し送信する
  • 分散アプリケーションとスマートコントラクトとの相互作用
  • メッセージとデータの暗号化

次の分野で企業に、利点を与える。

  • コーポレートアイデンティティの確立
  • 新規顧客や従業員を簡単に獲得する
  • 改善された他動的な顧客確認プロセス
  • 従業員にとって摩擦の少ない安全なアクセス制御環境を構築する
  • 機密性の高い顧客情報を保持しないことによる責任の軽減
  • コンプライアンス強化
  • ベンダーのネットワークを維持する
  • 特定の権限を持った役割固有でアクターに依存しないアイデンティティ (CTOなど)の確立

スマートシティ

ブロックチェーンは、多くの都市や企業がスマートシティに投資する機会を提供する。例えば

中国の自動車大手Wanxiangは、最近、電気自動車に使用されるバッテリーを証券化するためにブロックチェーン技術を使用することを含む新しいスマートシティイニシアチブに300億ドルを投資しました。

このシナリオでは、Wanxiangがバッテリーを自動車の所有者にリースする。バッテリーを事前に購入することは求めない。このモデルはコスト削減を実現するが、パフォーマンスやメンテナンスの目的でバッテリの使用状況を監視することも可能になる。このデータによってバッテリーを“投資家に売却できる資産のように扱い、費者や製造業者のための新技術の融資を円滑にする”ことができる。

Wanxiangのようなビジネスモデルを立ち上げるは従来のビジネスの実践では難しいかもしれない。不換紙幣と既存の信用機関が関連する複雑さがあるからだ。ブロックチェーンを使えば、“デバイス、人、ビジネスの間のより円滑な支払いフローが可能になります。スマートコントラクトによって、例えば、電気自動車がバッテリ充電ステーションに行くたびに発生する、トランザクションに対する当事者間の支払いフローのロジックを指定することができます。”

ブロックチェインの進歩により、スマートシティで生まれる機会は他にもある。例えば、ConsenSysはブロックチェーンが使える自動運転車を提案している。

車やタクシーがその周りの車よりも速く走りたいのであれば、より多くの料金を支払うことができ、周りの他の車両との経済的な交渉を自動的に交渉するより速いルートを得ることができます。 政府にとっては、特定の時間や特定の場所で道路利用のために柔軟に料金を支払うことができるため、渋滞や公害を減らし、利用可能な道路を最適に活用することができます。

エネルギー

エネルギーの分野でブロックチェーン技術のユースケースが多く生まれている。エネルギークレジットを管理し、二重計算問題を削減する点に機会がある。“電力会社は、地元の電力供給源が再生可能であることを確認するRECを受け取った後、これらのRECを他の電力会社に売却します。再生可能電力の生成会社が電力を売る場合、まず、電力を売って、そのあとにクレジットを売ります。”ブロックチェーンを使うことで、これのエネルギークレジットは、公開されている台帳に取引が記録されることでより透明になります。

ブロックチェーンは マイクログリッドにも多くの機会をもたらす。ソーラー発電とスマートメーターの増大によって消費者は巨大な発電所に依存する割合を減らす機会を作りました。この結果、消費者は余分な電力を生成して、ブロックチェーンを使ってそのエネルギークレジットを隣人と交換できる。このようなブロックチェーンのマイクログリッドのプロジェクトのひとつでConsenSysが関わっているのがBrooklyn Microgridだ。

ヘルスケア

ヘルスケア業界も広範なブロックチェーン導入で恩恵を受ける。多くの区域が電子医療または健康記録(EMRまたはEHR)プログラムに着手しているが、多くが失敗し、患者や病院に問題を起こしている。例えば

アメリカの平均的な患者は19の別々の治療記録を持ち、2010年の調査では障害で18.7人の医者に診察を受ける。

ブロックチェーンは既存のEMR/EHRソリューションに見られるような情報の分散に対処する用意がある。

患者は自分の医療情報を別々の医療システムに分散させるのではなく、どこへ行こうと追跡できるようになります。許可がある医療専門家は患者に関連する医療の履歴を、電話や紙のファイルではなく、最初に出会ったときに確認できます。改善された患者記録によって、ケアの提供者はより良い医療を提供し、より正確に治療の経過を観察することができます。

医療記録の分散元帳を実現するためには、セキュリティを確保する必要がある。ConsenSysは次のように考えている

ブロックチェーンは組織間で安全に共有できる、アクセス制御情報のリポジトリになりえます。新しいタイプの医療情報交換関として、暗号化された安全な状態で患者が持ち運べる情報になるのです。

ブロックチェーンはまた、医薬品の完全性を支援することもできる。独自のサプライチェーンを通じて流通し、とくに治験で利用できる。ConsenSysは治験のプロトコルの領域でを挙げている。

“実験のあとにデータを改ざんさせないようにするために分散台帳に記録しタイムスタンプを打ちます。サンプルや検体はフィンガープリントが取られ、追跡できるようになります。他のラボに送られ分析と検証がされるからです。ひとつのサンプルが複数の治験で利用できます。”

 
 

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