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Criteoにおけるエンジニアリング文化の進展

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原文(投稿日:2017/04/03)へのリンク

シニアマネージャには、エンジニアリング文化を最重要課題とし、優れたエンジニアリング文化を実現するためのフレームワーク構築が求められる。文化を発展させるには価値が必要だ。その価値は、物事の進め方を規定するルールによって支えられる。

Criteoのシニアスタッフで開発責任者のManu Cupcic氏はQCon London 2017で、 “Evolving the Engineering Culture @Criteo”と題した講演を行なった。このカンファレンスに関してはInfoQでも今後,Q&Aや要約,記事を通じてお伝えしていく予定だ。

エンジニアリング文化は価値以上のものだ – 私たちがどのように行動するかを規定する、一連のルールを含まなくてはならない、とCupcic氏は言う。氏はエンジニアリング文化を、次のように定義する。

分散意思決定(distributed decisions)を行うプロセス。

私たちは多くの意思決定を行っている。それをどのように行なっているのかを見極めることが重要だ。トップダウンによる意思決定にはスケーラビリティがない、とCupcic氏は主張する。我々の業界は変化が速い。意思決定を迅速に行うためにはアジリティが必要なのだ。

Criteoにおける文化のレシピは非常にライトウェイトだ。文化を発展させるための中心的な場所はなく、進化を“導く”ための“フレームワーク”がある。Cupcicはこれを次のように説明する。“中央から文化を発展させようという試みは無駄だという事実を、私たちは受け入れています。文化とは本質的に分散したものだからです。”

Criteoには技術者とマネージャによるシンクタンクがあり、新たなアイデアの相談役(sounding board)の役割を果たしている。ミーティングが週2回実施され、誰でもタイムスロットを予約してトピックを発表し、話し合うことができる。エンジニアとマネージャはそれに耳を傾け、議論し、アドバイスやフィードバックを提供する。相談者に対して、社内の特定部門に相談してアイデアを得るように提案することもある。相談者は次のミーティングの予定を決めて、状況がどのように展開したかを議論する。これがアイデアの成熟に有効なのだ、Cupcic氏は述べている。

トップマネージャと主要なインフルエンサ(influencer)からなる“Techleaders”グループもある。ここでプレゼンテーションされたアイデアが受け入れられれば、アイデア実現のための支援を受けることができる。

Criteoには、エンパワーメント(Empowerment)とエクスペリメント(Experiment)という、2つの文化的価値がある。これらの価値はグループよりも重要である、とCupcic氏は言う。グループが存在しない場合、それでも文化の進展は可能だが、より多くの失敗があるかも知れない。何かを試みる時、グループがその失敗の可能性について指摘することができないからだ。しかし、もし価値がなければ、文化は進展しないか、あるいは正しい方向には進展しない。誰もそれを正しい方向に向けられないからだ。

エンパワーメントとは、文化が全員の責任であるという意味だ。 エンパワーメントがなければ分散意思決定は不可能だ、とCupcic氏は主張する。Criteoでは報酬によってエンパワーメントを促進している。例えば、誰かが問題を解決すれば、それによって昇進の機会を得ることができるのだ。

エクスペリメントは、最初に小さなものを試して、そこから学ぶために使われる。文化を変えることは習慣を変えることだ、とCupcic氏は主張する。氏が提案するのは、エクスペリメントを速く進めることよりも、さまざまな方法を試してデータを集めることだ。

Criteoの人々がどのようにエンジニアリング文化を改善したのか、Cupcic氏は例を挙げて説明した。ベストプラクティスの共有によってコラボレーションを容易にすることを目指す“Voyagers”というプログラムがある。このプログラムでは、それぞれが現在従事している場所以外のチームに出向いてアイデアを共有し、アイデアを集めて、自分自身のチームに持ち帰る。

このプログラムのアイデアは、エンジニアとマネージャのシンクタンクで議論されて、人材の交流を容易にする方法が探求されると同時に、“航海(Voyage)”の適切な実施期間はどの程度の長さなのかが議論された。その結果がTechleadersグループに提示され、そこで交流のルールが決定された。この2グループでの議論を経て、Voyagerプログラムが同社の“総員(all hands)”ミーティングの席で導入されたのだ。

このプログラムはCriteoの文化の一部になった、とCupcic氏は言う。組織の柔軟性を高め、モビリティを促進し、“我々対彼ら”という考え方や行動を抑制する方向に進んでいる。

文化は、偶然に任せるにはあまりにも重要だ、とCupcic氏は言う。優れたエンジニアリング文化の確立には多くの時間がかかる。早く着手することが重要だ。シニアマネジメントはエンジニアリング文化を最優先にすべきだが、それに自ら取り組むことはない。彼らに必要なのは、優れたエンジニアリング文化の構築を支援するフレームワークを作ることなのだ、と氏は主張した。

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