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DevOpsとハイパフォーマンスの鍵 - DevOps Enterprise Summit LondonでNicole Forsgren博士に聞く

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原文(投稿日:2017/05/30)へのリンク

間もなくロンドンで開催されるDevOps Enterprise Summitを前に、InfoQは、DORAのCEOでチーフサイエンティストのNicole Forsgren博士と席を共にして、DevOpsの基本、適切なビジネス目標を設定することの難しさ、組織のパフォーマンスを測る方法などについて議論した。

博士との対話は、あらゆる種類と規模の組織が技術的変革を実現する上で、多くの人々が“DevOps”と呼ぶプラクティスとツールのセットこそが最も重要で、最も価値のあるものだ、と述べることから始まった。DevOpsが成功を収めたは、それが技術とプロセスと文化を含んだ大きな変革であり、スピードと安定性を兼ね備えたコードを提供する能力を通じて、価値を組織に提供する技術的変革を成果としてもたらすものであるからだ。

“重要な一指標”というものは存在しない、と博士は示唆する。組織が何をするのか、組織にとって何が最も重要か、さらには組織の現在の文化がどのようなものかによって、取り組むべき指標は異なるのだ。成果を念頭においた指標値を収集するべきである。これは多くの場合において、目標ないし成果の指標に加えて、その目標に直接的な影響を及ぼすと思われる他の指標をも収集することを意味する。ITのパフォーマンスを知る上で重要な指標としては、ソフトウェアデリバリのスピードと安定性の他、変更のリードタイム(コードのコミットからデプロイまで)、デプロイの頻度、平均修正時間(MTTR)、修正の失敗率などがある。

インタビューの内容を以下に紹介する。Nicole Forsgren、Nigel Kersten、Jez Humble、Gene Kim各氏による講演“The Key to High Performance: What the Data Says”の詳細は、DevOps Enterprise Summit (DOES) LondonのWebサイトにある。

InfoQ: Nicoleさん、InfoQへようこそ!DOES EU 17で行なう講演の要旨を話して頂けますか、セッションの参加者はどのようなことを期待できるのでしょう?

お招きありがとう!DOES EU 17の講演をとても楽しみにしています。今年はNigel Kersten、Jez Humble、Gene Kimが参加します。彼らはみな、PuppetとDORAが実施した2017 State of DevOps Reportの協力者たちです。彼らと一緒に今年の調査結果から要点をいくつかピックアップし、その研究成果から得られた驚きのいくつかについて、その背景や科学的な報告を行なう予定です。とても面白いものになりますよ!

InfoQ: DevOpsという用語それ自体、あまりに多くの意味があったり、人によって違う意味に解釈されたりしていますが、あなたはDevOpsをどのように定義していますか?

私はDevOpsを、安定性のあるコードを短期間に提供する能力を通じて組織に価値をもたらす、技術的な変革であると捉えています。重要なのはテクノロジ、プロセス、文化です。

InfoQ: State of DevOpsの調査結果は毎年変わってきていますが、これについて意外に思っていますか?

調査において私が心掛けているのは、仮説をテストするための調査を設定することと、調査の結果から新たな気付きを得ることです。この調査では、生産性や収益性、市場シェアといった組織のパフォーマンスを評価する上でのソフトウェア開発とデリバリの重要性のように、毎年新たな発見があります。それによって、ハイパフォーマンスな技術チームに必要な条件に対する私たちの理解も深まってきました。今年は調査の対象を、アーキテクチャ(これまでの調査による発見をより深く掘り下げたもの)やリーダシップといった分野にも拡大しています。

InfoQ: DevOpsの果たすべき役割を調査する上で、学界と業界の効果的なコラボレーションは実現していると思いますか?学術機関それ自体はDevOpsを受け入れていると言えるでしょうか?

バリュードライバ(value driver)としてのDevOpsを学術的にも実務的にも信じるものとして、私は常にコラボレーションを求めています!学術研究の一部の分野はまだ、業界で見られるDevOpsの活動に追いつこうとしている段階ですが、すでに受け入れている分野もあります。

教育という面に関しては、革新的なことも実際に起きており、コンテンツの開発や提供も進んでいます。それが学術的にDevOpsと呼ばれているかは分かりませんが、その重要な側面(技術、プロセス、そして文化!)は理解されていますから、DervOpsの原則を採用することには大きなメリットがあると思います。

とは言いながら ... 学術界はソフトウェア業界とは違いますし、独特な問題もありますから、DevOps的なモデルを採用するには、ある程度の創造性と柔軟性が必要でしょう。私は学術界に対して、研究と教育の両面で関わりを持ちたいと思っています。どのような方向に進むのか、最終的にひとつに収束するのか、非常に興味があります。

InfoQ: ハイパフォーマンスな組織を実現するための移行過程においては、どのような指標やKPIを監視する必要があるのでしょう?移行の成功を判断できるような“重要な一指標”は存在するのでしょうか?

一般的なガイドラインとして私がいつも勧めているのは、成果を念頭に置いた指標の収集を行なう、ということです。多くの場合これは、目標や結果に関するものに加えて、その目標に影響すると思われるいくつかの指標を収集するという意味になります。

テクノロジ分野の組織には、私たちの調査が明らかにしたITパフォーマンスの指標を特に推奨します。非常に多くの分野において、それらが価値を生み出しているからです。このようなITパフォーマンスの指標が捉えるのは、ソフトウェアデリバリのスピードと安定性、すなわち、変更のリードタイム(コードのコミットからコードのデプロイまで)、デプロイメントの頻度、平均修正時間(MTTR)、変更の失敗率といったものです。これらはすべて、互いに緊張関係にある(スピードと安定性を例にすれば、いずれにも開発チームと運用チームの優先順位が反映されます)と同時に、チーム全体の目標を反映するものであることから、すべてを監視することが重要です。さらにこれらの指標は、全体として組織のパフォーマンス向上を示すものでもあるのです。

“重要な一指標”というものはあるのでしょうか -- いいえ、そんなものはありません。少なくとも私は見たことがありません。言えるのは、常に“状況次第”である、ということです。組織が何をしているのか、組織にとって最も重要なものは何か、最も価値のあるものは何かによって異なるのです。例えば、NPS(ネットプロモータスコア)という指標があります。これは優れた指標ですが、推薦(referral)が重要な業界であることが前提なため、公共財や公的サービスでは重要でない(あるいはまったく適用できない)可能性があります。

単一の指標を用いる場合のもうひとつの問題は、人為的操作が簡単に可能であるという点です。私としては、2つないし3つの緊張関係にある指標を選択して、近視眼的な集中を難しくすることを勧めます。

InfoQ: 端的に言って、迅速な行動を目指す現代企業に対して、DevOpsはどのように関わっていくと思われますか?あなたの経験から、一般企業の世界において重要なのは、組織的な変革と技術的な変革のどちらのニーズなのでしょう?

少なくとも現時点において、DevOps(あるいは名前は何であれ、私たちの多くが“DevOps”と呼んでいるメソッドやプラクティス)は、組織の種類や規模を問わず、技術的革新を進める上で最も重要で価値のあるプラクティスとツールのセットです。

これを凌ぐものはありません – 今日の環境におけるビジネスのペースや、セキュリティ/コンプライアンス/規制の変化に追いつくには、ウォーターフォールメソッドでは遅過ぎます。従来のアジャイルメソッドは、ウォーターフォールからの大きなステップではありますが、スケーラビリティに欠けています。迅速に移行し、高品質のソフトウェアを信頼性の高い方法で提供したいと願う組織にとって、DevOpsは真の価値を提供してくれます。将来的にはもっとよいメソッドが見つかるかも知れませんが ... 現時点ではDevOpsが最高の手法なのです。

質問の後半についても、回答を保留しなくてはいけないでしょう!DevOpsが成功したのは、技術とプロセス、さらには文化をも包含した変革であるからです。すべてが重要なのです。その第一歩として何が重要なのかは、企業の現在の文化やコンテキストに関わってきますので、それぞれ固有のものになります。

InfoQ: 今日は時間を頂いてありがとうございました。他に何か,InfoQ読者に伝えておきたいことがありますか?

ありがとう!私からは、間もなく公開されるState of DevOps Reportの一読することをお勧めします。DevOps転換で真の成功を収める上で必要となる、重要な能力に関わる洞察やヒントが数多く含まれています。

DevOps Enterprise Summit Londonカンファレンスは6月5日と6日、QE II Conference Centreで開催される。詳細はIT Revolution EventsのWebサイトを見てほしい。

 
 

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