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リーンプラクティスによるアジャイルプロセスの品質向上

原文(投稿日:2017/06/29)へのリンク

アジャイルマニフェストとリーンプラクティスは極めて相互補完的であり、強力なアジャイルプロセスの品質を向上する上でリーンは有効に作用する — Renaud Wilsius氏はこのように主張する。実際のクライアントや代理人にインタビューして彼らの痛点を深く理解し、プロセスを部門間のハンドオーバに分割して視覚化することにより、企業の問題点がより早く発見できると同時に、それらの問題を低コストでより効果的に解決することが可能になる。

BISAMのR&DディレクタであるRenaud Wilsius氏はLean IT Summit 2017で、品質に重点を置いたアジャイル環境へのリーンプラクティスの適用について講演した。InfoQはこのカンファレンスに関して、これまでにもQ&Aや要約、記事を通じて報告している。

講演を終えたWilsius氏に、氏らがアジャイルにリーンを適用した方法と、そこから得た結果について聞いた。

InfoQ: 講演では品質上の問題について話されていましたが、状況を詳しく説明して頂けますか?

Renaud Wilsius: FactSet企業のひとつであるBISAMは、ソフトウェアエディタとして、常に製品の品質を重視してきました。eXtreme Programmingを2006年に採用して以来、ペアプログラミングを100%実施しています。開発者がビジネスロジックより先にテストを書くというテストファーストのアプローチによって、このプラクティスは完全なものになりました。テストファーストアプローチをサポートするために私たちは、強力なテストフレームワークを開発しました。現在では20,000以上のテストをサポートするに至っています。

しかしながら、リーンプロジェクトを始めた頃の品質は、私たちの期待したレベルには達していませんでした。ソフトウェアの複雑性は、新たなクライアントの獲得に伴って増大します。技術的な組み合わせの数が多くなるにつれ、考え得るテストの数も無限に近くなってきています。さらに、さまざまなパターンで製品を使用するクライアントが増えることにより、クライアントが直面する問題を再現するためのクライアントデータの必要性も高まっています。クライアントの資産であるデータを収めたデータベースは巨大である上に、当社のソフトウェアは主に自社内に配置されているため、クライアントデータを要求することは不可能です。

クライアントは当社の製品を気にいってくれていました。機能が豊富であり、新機能も好評です。しかしながら、初期バージョンを使いたいと言うクライアントはありませんでした。インストール上の問題が多い上に、改善計画のない未対応チケットの数が増えていくことに対する不満が募っていたのです。

InfoQ: そういった問題を解決する手段として、リーンアプローチを選択したのはなぜですか?

Wilsius: トップマネジメントからはこの状況を解決するように指示があったことと、プロジェクトのKPIが当社株の大半を所有する株式保有者に公開されていたからです。注目を浴びたことで好都合だったのは、選択肢を作る上で、会社の上位層によるフルサポートが受けられた点です。迅速で目に見える対応策を示すために、彼らには投資する意思がありました。

品質保証を外部チームに委託するという選択肢を検討するために、多くの推奨を得ている、非常に優秀な企業のいくつかに接触しました。このアプローチは、クライアントに対して明確に説明するには非常に好都合です。“品質上の問題を特定しました。解決に向けてチームを編成します。そのためにXドルの投資を行なっており、問題点を洗い出したリストがこちらです。品質上の問題が二度と起こらないよう、これらについて彼らが対策を実施します。”

それにも関わらず、当社のR&Dマネージャたちと私は、“問題を外部化する”アプローチには納得できませんでした。委託した企業がこの完璧な“品質の壁”の構築に成功したとしても、問題を解決し、根本原因を是正する必要は残ります。私たちはソフトウェアエディタの知識を信頼していました。誰かが問題に取り組まなければならないとすれば、その問題を起こした本人に、タイムリかつ効果的な方法で問題を戻すことがより自然な方法だと思ったのです。それに最も適しているのは、私たちのグループの開発者だと私たちは考えました。時に彼らが失敗したとすれば、多分それは知識の不足であるか、さらにはシステム上の問題によるものなのです。

このアジャイルマインドセットによって私たちは、リーン手法による問題特定を支援してくれるOperae Partnersとごく自然に出会いました。まず第1に、品質に関してクライアントが何を望んでいるかを理解すること。そして第2に、品質達成のためにすべてのチームが作業環境の再構築と改善を行なうことです。

InfoQ: どのようにしてリーンを始めたのですか?

Wilsius: 最初はクライアントから始めました。実際のクライアントや代理人(クライアントの代理をする内部アカウントマネージャ)にインタビューして、彼らの苦労を深く理解したのです。次にその情報を使って、問題点の詳細な具体化を行いました。

  • ソフトウェアインストールの失敗が多過ぎる
  • 退行(リグレッション)の問題が多過ぎる
  • ソフトウェアリリース時に多くの資料が更新されていない

私たちはすべての部門を集めて現行プロセスを見直し、部門間の引き継ぎに重点を置くことを決めました。部屋のひとつを大部屋(Obeya)として確保し、パフォーマンス指標をすべて公開しました。

ある特定のクライアントに対して、完成度の高いバージョンを最初に提供することを目標に置きました。

チーム側では、当初すべてをR&Dが行なっていたのですが、一部のメンバがリーンアプローチに消極的であったために、プロジェクトが牽引力を失っていることがすぐに表面化しました。自身の領域において専門家である人たちの一部には、問題を解決するよりも、むしろその問題を抱え込もうとする傾向があります。問題の根本原因の解明には非常に時間のかかることがあるため、多くの作業時間を浪費していると感じる人も少なくありません ... そのために私たちは、変化を率先して受け入れる気持ちのある人たちやチームに重点を置き、その他のチームには逐次情報を提供することで、大規模な変革に備えてもらうことにしました。

このトレンドセッタが示した進歩が目覚ましく、他のチームからの注目を集めたために、彼らの抱えていた不安や懸念を取り除くことができたのです。

InfoQ: リーンを導入して3ヶ月でよい結果が得られたということですが、短期間で成果をあげることができた理由は何でしょう?

Wilsius: 新たなプラクティスを導入するためには、混乱を起こすことがいつもよい方法です。私たちのケースでは、不満なクライアントから早急な結果を求められていました。アジリティは私たちのDNAの一部であり、それが企業として他に比べて非常に早く対応できた理由だと思います。

成果をあげる上では、アジャイルマニフェストとリーンプラクティスは極めて補完的な関係にあります。Deming氏と同じように、私たちは常々“品質は全員の責任である”と考えていました。可能な限り早い問題発見に役立つ方法論であれば、それが何であれ、チームとしての明確な進歩だったのです。忘れてはならないのは、リーンアプローチがマネージャによって選択されたものであり、上層部のサポートを得ることのできた点です。リーンの導入プロセスでは、このことが大いに役立ちました。

最終的には、問題を早期に発見し、低コストで迅速に解決するための強力なアジャイルプロセスを実現する上で、リーンの導入は適切な手段であったと思っています。

InfoQ: 今回の活動で学んだことは何ですか?リーンを続ける上で、それはどのように役立ったのでしょう?

Wilsius: 教訓としては、現場で仕事をしている人たちを信頼するべきだ、という点を挙げたいと思います。彼らは作業に最も精通していますし、最善の方法で仕事をしたいと考えています。彼らにリーン思考を教えて問題を顕在化し、その修正に取り組んでもらうのです。これらのプラクティスが浸透した後は、マネジメントが職務階層の各レベルでリーンプラクティスをサポートして、プラクティスが組織全体に根付くようにすることが必要です。

 
 

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