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レトロスペクティブに関する初の年次報告書を公開

原文(投稿日:2017/08/07)へのリンク

レトロスペクティブに関する初の年次報告書は、レトロスペクティブが現実世界でどのように使われているのかを深く理解できる。世界中から集まった275を越える調査回答を基にして、結果は、レトロスペクティブがチームコミュニケーションと生産性の改善を導き、信頼の環境を作るのに役立つことを示唆している。主な課題には、議論されるトピックがチームによって解決されず、人々が話すことを快く感じないという事実があった。レトロスペクティブに様々なテクニックが採用されることはあまりない;多くのレトロスペクティブは未だ、"何がうまくいって、何がうまくいかなかったか"という質問によって行われている。

レトロスペクティブの報告書はAgile 2017カンファレンスの初日に発表された

Retrium (...)は本日、Agile2017カンファレンスで、初となるアニュアル アジャイル レトロスペクティブ レポートのリリースを発表しました。この類では初の調査となるアニュアル アジャイル レトロスペクティブ レポートは、世界中のアジャイルチームメンバーがレトロスペクティブをどう使っているのか、実感したメリット、克服した課題、チームの継続的な改善を助けるふりかえりの機会について光を当てています。

アジャイルレトロスペクティブに関する調査は、オンラインレトロスペクティブサービスのプロバイダであるRetrium社によって行われた。

InfoQは、Retrium社のCEOであるDavid Horowitz氏にインタビューを行い、なぜレトロスペクティブに関する調査を行おうと決めたのか、レトロスペクティブはどんな恩恵をもたらすのか、レトロスペクティブを行う際の大きな課題は何か、レトロスペクティブを進めるのは誰か、レトロスペクティブで様々なテクニックを用いること、アジャイルレトロスペクティブに未来は何をもたらすのかについて伺った。

InfoQ:アジャイルレトロスペクティブの調査を行うこととなった決め手は何だったのでしょうか。

David Horowitz氏:本当に単純なものです:レトロスペクティブはアジャイルのコアであるのに、その使い方は研究されておらず、システマティックな方法で分析されてもいませんでした。Retriumでは、レトロスペクティブを通じた組織の継続的な改善を助けることを、まさに存在意義としています。結果として、チームや組織が持つ最大限の可能性に気付くのを助けることにおいて、レトロスペクティブが果たす役割について考えるのに多くの時間を費やしています。それはチームミーティングや顧客との電話会議、アジャイルスペースでペアや同僚と話していることなのです。これらの会話はいつも、レトロスペクティブはチームや組織にとってうまくいっているか - うまくいってないか - という逸話的な話で満たされてきました。しかし、レトロスペクティブの重要性を考えれば、逸話は単純に不十分です。考えれば考えるほど、われわれの業界におけるレトロスペクティブの利用はもっと構造化され、秩序立った方法で研究されるべきだと実感するのです。時間をかけてトレンドを記録し、弱点を明確にし、前に進む機会を特定するために。

結果として、今年の3月から4月にかけて、この種の初となる調査に答えてもらえるよう、世界中の人々に依頼しました。初の調査の回答を見て興奮しました - 277の回答が世界中のアジャイリストから集まり、回答の85%がRetriumの顧客ではない個々人だったのです。

InfoQ:調査によると、レトロスペクティブはどんな恩恵をもたらしますか。人々の回答で驚くようなものはありましたか?

Horowitz氏:調査回答によると、チームがレトロスペクティブから感じた利点のトップ5は、チームコミュニケーションの改善(85%)、信頼の環境の構築(65%)、チームの生産性の改善(60%)、仕事の質の改善(60%)、アジャイルプラクティスの改善(58%)でした。これらの回答は特に、レトロスペクティブの目的はチームがプラクティスを調整して、順応するのを助けることだと誰もが知っているということを再認識させたと思います。わたしたちは正しい道にいるようです。

しかしながら、最も人気のなかった回答3つを見ると、回答はより興味深いものになっており、より広い機会を示しています - 前のスプリントのアクションアイテムをより良く行う(33%)、見積予測の改善(18%)、顧客の問題により速く交渉する(14%)。

スピードと予測が組織が業務を遂行する能力に必要不可欠であるため、ビジネスオーナーとして、わたしは改善の余地があるという事実をはっきりと認識しています。同様に、チームがアクションアイテムを遂行するのによく失敗するという事実は、このタイプのエンゲージメントを容易に促すソリューションの必要性を示しています。

InfoQ:レトロスペクティブを行うにあたり、最大の課題は何ですか。ファシリテーターやチームはそれにどう向き合えばいいでしょうか。

Horowitz氏:チームのやり方を変えるのは難しいですし、それはアジャイルレトロスペクティブにもあてはまります。わたしは調査の正確な結果を共有していますが、トップ3の課題が全て、チームが効果的にコラボレートする能力に関することだという事実を声を大にして言いたいです。具体的には、議論されたトピックがチームによって解決されない(48%)、人々は話すことを快く感じていない(44%)、チームがバラバラな場所に分散している(36%)。加えて、トップ5の課題のうち3つは、場所、性格、参加を妨げるようなどんな要素も関係なく、経験を共有する能力に直接関係しているのです。

最も言及が少なかった課題を見ると、より多くの傾向が見えてきます。事実、5人に1人以上の回答者は、自分のチームは全然ふりかえりを求めていない、または自分の組織はレトロスペクティブをサポートしていない、と答えたのです。明確な食い違いです。組織がどうにかしてより効果的になるためにアジャイルの原理を使っているなら、チームや企業レベルでレトロスペクティブをサポートしないとか、奨励しないといったことは、そのゴールと真反対のところにあります。ここに機会があるのです - アジリティのコアとしてレトロスペクティブの価値を理解することによって、またレトロスペクティブの採用を推すことによって、組織は本当の変化と継続的な改善を期待できるのです。

InfoQ:レトロスペクティブは主にスクラムマスターによって進められます。これについてどう思われますか。

Horowitz氏:アジャイルのあらゆることにおいてそうですが、チームによるでしょう。言い換えると、レトロスペクティブが既にハイレベルで機能しているなら、それは素晴らしいことです!何も変えてはいけません。しかしながらもし、レトロスペクティブに必死でエネルギーを注いでいるなら、またはチームが新しくてイノベーティブな方法のふりかえりを探しているなら、ファシリテーターの役割を回すのは有効でしょう。効果的なファシリテーターになるのは単純でも簡単でもないので、ボランティアのみを基礎にしておくのが重要です。興味がない人に強制するのはもちろん嫌だと思いますので。

ファシリテーターの役割を回すのは、チームのメンバーに限らないということを心に留めておいてください。わたしは全社でファシリテーターのサークルを作るのが大好きなんです。このアイデアについてブログを書きましたが、まとめると、このアイデアはスクラムマスターが組織の他のチームでレトロスペクティブをファシリテートして、新しいアイデアをもたらしたり、学んだことを共有したり、可能な限り干渉を受ける機会を減らすためのものなのです。

InfoQ:大抵のレトロスペクティブは"何がうまくいって何がうまくいかなかったか"という質問によってなされます。何百といった様々なテクニックが使えるというのに、驚きです。人々がなぜこれを使わないのでしょうか。

Horowitz氏:最も一般的なテクニックであるというのは驚くべきことではありません。調査では回答者の88%がファシリテーターまたは参加者として使ったことがあると答え、うち、実に46%がよく使っているテクニックだと述べています。他にチームが使える数え切れないほどのテクニックがあるのに使っていないというのもまた正しいです。

おそらく多くのチームが"何がうまくいって何がうまくいかなかったか"を守り続ける理由は、チームや企業、そして業界さえレトロスペクティブの価値に十分に重点を置いていないからです。キャッチ=22(訳注:矛盾した状態)になります。人々は自分たちのレトロスペクティブがつまらないと嘆くのに、エンゲージメントの欠如を乗り越えるために新しいテクニックを学ぶ時間や手間を掛けないのです。そして新しいテクニックを学ばないがゆえに、レトロスペクティブはつまらないままになってしまうのです。

この悪しきサイクルは断たなければなりません。残念ながら、"より広いバラエティのテクニックを使おう!"と言うだけではうまくいきません。そうではなくて、最もベーシックな"何がうまくいって何がうまくいかなかったか"フォーマットでさえも、レトロスペクティブの価値を証明するのは自分たち次第なのです。もしレトロスペクティブが本当の変化を促していると気付いたら、新しくてイノベーティブなテクニックを学ぶことへの興味が高まるでしょう。

レトロスペクティブの価値を強める最適な方法があります:やり通すことに集中して、"シンプルな成功"を得るのです。結局のところ、改善しないのだとしたらレトロスペクティブのポイントは何なのでしょう?

InfoQ:未来がアジャイルレトロスペクティブに何をもたらすと予想されますか。

Horowitz氏:今後もレトロスペクティブが継続的な改善のカタリストとして担う中心的な役割が広く認識されていくと強く信じています。

社員は発言するはけ口を求めているのです。経験、弱点、学びを組織で共有する方法です。しかし、現実は、彼らの意見はマネジメントの賛同を得ることなく不発に終わります。マネジメントにはフィードバックを聴くだけでなく、起こった問題に対する行動を取ることへのコミットが求められているのです。よりよいアジリティと継続的な改善のためには、この対話と結果として生じる組織の全レベルに渡る行動がないと、ほんの少しの進展しか期待できないでしょう。

これはレトロスペクティブの機会が最大になるところです。現在の環境は変化のための機が熟しています。われわれはみな、フィードバックに安全でオープンな文化の構築を特に重視する必要があります。そこにレトロスペクティブは重要な役割を持っているのです。チームメンバーがオープンに経験を共有できる環境を提供し、これらの経験を行動可能な学びに換え、より大きな組織でフィードバックを共有し、チームが問題を解決できるよう力づけることで、レトロスペクティブの価値がアジャイル企業で発展し続けるのを見るでしょう。特にエンタープライズがより分散し続けていくにつれ、成功するレトロスペクティブへの需要は伸びていくでしょう。

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