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Volkswagenのエンジニアに懲役40ヶ月の実刑が下る

原文(投稿日:2017/08/28)へのリンク

New York Times他のメディアが伝えるところによると、排気ガステスト装置を欺いて排出量のレベルを過小報告する目的でソフトウェア開発を行なったとして、同ソフトウェアの設計と開発に携わったエンジニアのJames Liang氏に対して懲役40ヶ月と20万ドルの罰金が宣告された。ハードウェアとソフトウェアに排出ガステスト対象デバイス特有の入力属性を登録しておいて、排気ガス中の排出レベルを減少させるために、エンジンのモードを変更可能にしたものだ。通常の運転中はソフトウェアのコントロールをオフにして、トルクを改善したり、あるいは燃料消費量を削減したりしていた。

このスキャンダルによる損失は米国内だけで240億ドルを越え、ソフトウェア工学における倫理に関する議論を再燃させた。

今回の状況における倫理について検討したIEEEの記事の中で、イスラエルのネゲヴ・ベン=グリオン大学でビジネス倫理を担当する上級講師のYotam Lurie氏は、次のように述べている。

衝撃的なのは、Volkswagenのソフトウェアエンジニアたちがプロフェッショナルとしての受託者責任を看過した、という点です。たとえ効率性ないし経済性で劣ったとしても、安全性 – 今回の場合は環境安全性 – を確保するため、組織内で半永久的な責任を負うのがプロフェッショナルなのです。

同じ記事の中で、カリフォルニア州サンタクララ大学哲学科のShannon Vallor氏は、次のように述べている。

企業が不正行為を行なうのは、もはや当然のことになっています。今回の問題は、少数のエンジニアによる行為ではありません。企業階層のもっと上の部分が関わっているのです。このデバイスが幅広い製品ラインにわたっていることが何よりの証拠です。テストやアップデートが繰り返されてきたはずなのです。これは人々の健康に影響する、重大かつ大規模な企業犯罪です。関わっていたすべての人たちが、これが非倫理的であると認知していたのは間違いありません。

このスキャンダルを取り上げた"Business Ethics Case Analysis"の記事では、同社によって侵害されたさまざまな倫理的な原則について検討している。

Volkswagenがクリーンなディーゼルエンジンの開発にもう少しだけ時間と資金を使いさえすれば、今回のスキャンダルはすべて回避できたはずです。しかし同社は、品質のよい乗用車の販売よりも、セールスを重視していたのです。

エンジニアの倫理が入る余地はどこにあるのか?ソフトウェアエンジニアは、その社会的責任を第一義に果たしているのか?関係したエンジニアたちは、規制当局を欺く目的で設計されたソフトウェアやハードウェアへの協力や開発を拒否するべきだったのだろうか?

ソフトウェアエンジニアリングの倫理規定や行動規範を扱う専門家組織は数多い。例えば米国計算機学界(ACM – Association for Computing Machinery)の"Software Engineering Code of Ethics and Professional Practice"では、ソフトウェアエンジニアの責任について次のように述べている。

ソフトウェアエンジニアは、ソフトウェアの分析、仕様、設計、開発、テスト、保守を、社会的に有益かつ評価される職業とする立場を明確にしなければならない。社会の健全性、安全性、福利への責務に従って、ソフトウェアエンジニアは以下の8つの原則を順守するものとする。

1. 公衆(PUBLIC) – ソフトウェアエンジニアは、一貫して公益のために行動しなければならない。

2. 顧客と雇用者(CLIENT AND EMPLOYER) – ソフトウェアエンジニアは、顧客と雇用者の利益のために、公益に合致する方法で行動しなければならない。

3. 製品(PRODUCT) – ソフトウェアエンジニアは、自らの製品および関連する変更が、専門的基準を可能な限り高いレベルで満たすことを保証しなければならない。

4. 判断(JUDGEMENT) – ソフトウェアエンジニアは、専門家としての判断において、その良心と独立性を保たなければならない。

5. 管理(MANAGEMENT) – ソフトウェア技術のマネージャとリーダは、ソフトウェア開発および保守管理への倫理的アプローチに参画し、それを促進しなければならない。

6. 専門性(PROFESSION) – ソフトウェアエンジニアは、職業の品位と評価の向上に、公益に合致した方法で努めなければならない。

7. 同僚(COLLEAGUES) – ソフトウェアエンジニアは、同僚に対して公平かつ協力的でなければならない。

8. 自己(SELF) – ソフトウェアエンジニアは、専門知識の向上のため生涯にわたって学習するとともに、その実践において倫理的アプローチを促進しなければならない。

ソフトウェアエンジニアリング知識体系(SWEBOK – Software Engineering Body of Knowledge)には"Software Engineering Professional Practice"のみを扱った章があり、その中で職業倫理とプロフェッショナル意識のあり方を取り上げている。

 

 

 

 
 

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