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文化変革のパラドックス

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原文(投稿日:2017/10/19)へのリンク

企業はアジリティを高める上で企業文化が重要な要素であることを認識し、その実現に向けて行動しなければならない、とDick Nijman氏は主張する。望ましい企業文化は、模範によるトップダウン(example top down)によって進められるべきである – すなわち、価値やコミュニケーション、顧客関与に関して、企業のトップで起こっていることが、その企業の“下位”層で起きるであろうことの予見となるのだ。

"Werkplaats voor Organisatiecultuur"の企業変革エージェント兼トレーナ兼コーチであるDick Nijman氏は、毎年開催されるAgile Consortium Netherlansカンファレンスにおいて、企業変革への企業文化の関与について基調講演を行なう予定である。カンファレンスのテーマは“企業変革の原動力としてのパラドックス”だ。

InfoQはNijman氏に、文化変革のパラドックス、アジリティ向上を望む企業が目指すべき企業文化はどのようなものか、企業変革をマネジメントする方法と文化変革におけるリーダシップの役割、過去から学ぶために企業ができること、変革を遂げる組織において社員を支援するためにマネージャは何をすべきか、などについて話を聞いた。

InfoQ: 文化変革のパラドックスについて、例を挙げて頂けますか?

Dick Nijman: 非常な速さで変革する顧客や市場と繋がりを持つために、企業は柔軟性を備え、ベストなものを提供すべく本質的に動機付けられると同時に、改善を常に忘れない心構えを持つ必要があります。変革は迅速に、完全なサポートを持って実施されなくてはなりません。

多くの企業が次のような問題に苦慮しています。

  • 自身の環境にもっと早く適応するには?
  • どうやって変化を予測するのか?
  • どうすれば顧客によりよいサービスを提供できるのか?
  • 社員の意欲を高め、自己管理能力を向上するにはどうすればよいのか?

そしてリーダは、次のようなパラドックスに対する答を求めます。

  • 企業変革を展開する最善の方法はトップダウンか、ボトムアップか?
  • 企業の構造や文化を変革する原動力は何か?
  • コーチングやリーダシップ育成といったスタイルが望ましいのか、あるいは指示を与えた方がよいのか?
  • 我々は学習組織か、計画組織か?

パラドックスは一見すると矛盾していますが、さらに追求すれば互いに矛盾していないものです。つまり、“一見すると”という点に、より重要な意味があります。ロンドンからアムステルダムに飛ぶ飛行機を考えてみましょう。飛行時間の94パーセントは、目標の方向に向かって飛行していません。それでも飛行機は、ほぼ予定時間に到着します。このパラドックスが企業変革にも当てはまります – “企業変革は計画できないが、必ず、たいていは予定通りに、目的地に到着”できるのです。

InfoQは以前、Michael Sahota氏に企業文化とアジャイルについてインタビューした際に、文化変革を試みる価値について尋ねたことがある。

Michael Sahota: 文化を変えることに代わる方法はありません。アジャイルプラクティスはカルチャーシフトを引き起こします。それがアジャイル移行が多くの反発を招く原因だと私は思っています。こんなルールは馬鹿げている、と人々は言い募りますが、私たちはもはや彼らに従うつもりはありませんし、企業もそれを認めます。そこに狼煙が上がり、騒音が発生し、爆発が起きるのです。これがアジャイル採用による課題を引き起こします。自分たちが実際にやっていることだとは知らずに、彼ら自身が文化変革を引き起こしているのです。

InfoQ: 企業のアジリティを高めるためには、どのような文化を目指すべきでしょうか?

Nijman: 企業文化の重要性を認識できれば、そこから得られるものはたくさんあります。後はその実現に向けて行動するのです。現在、企業文化にどれだけの時間を費やしているか、考えてみてください。たいていはプロセスや組織構造、ツーリング、技術トレーニングなどに多くの時間を費やしているでしょう。

成功する企業は、

  • 下流と上流、文化と構造、ソフトとハードの目標に日々注意を払う。
  • プログラムの変更において、ハードとソフトの目標を重視するという点でアジャイルである。
  • 変革プロセスの起案と実践に組織全体を関与させることにより、企業全体において、企業全体が重視されている。

アジリティを高めるためにどのような企業文化を目指すのかという点については、明確な答はありません。さまざまな要素が関係してくるからです。例えば、

  • 顧客は誰か?
  • サービスないし製品は何か?
  • 企業はどの段階にあるのか?
  • 企業内の人々はどのような責任を負っているのか?

しかしながら、どのような場合においても、学習と責任の文化は常に条件となります。従って、個々人の持つ責任や焦点、オープン性、(自己)反映、内省、敬意、勇気、顧客および組織の関心事といった要素は、企業文化の成功において不可欠です。

Dan Mezick氏は、自身の著書“The Culture Game”に関するInfoQのインタビューの中で、アジリティを高める文化をサポートする部族的学習(tribal learning)について説明した。

Dan Mezick: 学習の早いビジネス組織は、そうでない組織によりも明らかに優れています。彼らはチャンスをものにするために、迅速な対応を日常的に行なっています。企業における部族学習のレベルは、主にこのような学習に対する文化的サポートの関数です。

部族的学習はグループレベルの社会的学習(social learning)であり、組織的学習です。変革が生み出す大きな機会に対して、迅速に対応するために必要な学習の一種です。真のアジャイルチームは、多くの部族的学習を生み出します。そのために彼らは、自分たちのチームの文化を積極的にハックします。彼らは情報放射(information radiation)やペアプログラミング、コーチング、会議ファシリテーション(meeting facilitation)といったプラクティスを意図的に用いて、学習の文化を作り出しているのです。

InfoQ: 企業変革は管理できるのでしょうか?もしできるとすれば、どうすればよいのでしょう?

Nijman: 簡単です – 企業とはそもそも変革するシステムなのです。そこで常に重要な役割を果たすのが、次のような要素です。

  • 変革の必要性。企業内部から生じなければ、常に顧客あるいは市場からもたらされます。
  • 上記の必要性が、社員の教育や訓練の必要性を正当化します。何を変えて欲しいのかという質問に対しては、これが答になります。
  • 企業変革に対する明確なビジョンはありますか?
  • トップダウンすべき適切な模範は用意されていますか?
  • チームリーダの結束したグループは確立していますか?
  • 過去からは学んでいますか?古い企業文化による行動では、新たな企業文化に到達することはできません。
  • 組織全体のサポートを受けた、明確な道筋はありますか?
  • リーダは専任ですか?従業員を指導するスキルを備えていますか?

InfoQ: 文化変革において、リーダシップはどのような役割を持つのでしょう?

Nijman: 企業組織とチームによる開発では、並列プロセスを取り上げました。要するに、価値やコミュニケーション、顧客関与について企業のトップで起こっていることは、今後、企業内の“下位”層で今後起きるであろうことの予見なのです。あるいはもっと単純に、家庭内の喧嘩と比較してみましょう – 両親が喧嘩をすれば、子供たちは同じテーブルで食事をすることを拒否するでしょう。

結論として、望ましい企業文化は、模範によるトップダウンで進められるべきである、ということなのです。

InfoQ: 過去から学ぶために、企業には何ができるのでしょう?

Nijman: アムステルダムのグローニンゲン地方の地図を持って旅をしている時、目的地が見つけられなければ、ほとんどの人が、あなたは間違った地図を持っている、と言うに違いありません。そしておそらく、あなたはそれを使うのを止めるでしょう。

ですが、仕事や人生がうまくいかなくても、自分のフロアプラン(世界観)を放棄するという人や企業はほとんどありません。やっかいな顧客や景気後退、聞く耳や理解力のない従業員のせいにするのが普通です。

なぜもっと、自分自身のフロアプランを問題にしないのでしょうか?

年次計画を立てるというのは、企業ではごく当然のことです。目標が達成されないことが普通なのは、企業が過去から学んでいないからです。

失望を口にするただひとつの理由、それは、そこから学ぶためなのです!

私たちの変革プログラムでは、過去から学ぶことを出発点にしています。“成功を繰り返すために何ができるか”、“どんな教訓を学んだのか”、“その教訓をもっと真剣に受け止めるべきではないのか”、“私たちの考え方にとってそれはどのような意味を持つのか”、といったことを問うのです。

主要な社員の中核的信念を変えなければ、事業計画を作ることはできません。

InfoQ: 企業の文化が変革している時、社員をサポートするためにマネージャは何をすべきなのでしょうか?

Nijman: マネージャではなく、リーダについて話しましょう。その違いは – 物事を正しく行なうのがリーダで、正しいことを行なうのがマネージャです。

この質問に対する答は、企業変革のフェーズによって異なります。まず第一に、リーダは社員に対して、顧客と市場のニーズを最優先させなければなりません。それができなければ、社員は問題を自分たち自身のものではないと主張して、責任を取ろうとはしないでしょう。

成功するリーダは、社員が抱える問題を彼ら自身に与えます。

このフェーズではある程度の対立が必要であり、緊張が生まれることもあります。社員が何を失うと考えているのかを、リーダは心に留めておかなくてはなりません。忍耐力、指導、限界設定、構造の提供といったスキルが必要になります。

社員が問題を自身のものだと主張し、より大きな責任を負うようになれば、コーチングや啓発が可能になります。そうなって初めて、より重要なレベル – 新しいコースや他のタスクなどが考えられるようになるのです。

成功するリーダには多くの能力が必要です。ここで救いとなるのは、失敗から学び、献身的である限り、プロセスでの失敗は許されるという点です。先程の飛行機のように、コースを外れてもよいのです – 目的地さえ分かっていれば!

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