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Scrum Studioによるアジャイル原則の運用と組織の自立性向上

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原文(投稿日:2017/12/14)へのリンク

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Scrum Studioを導入し、アジャイル原則に基づいた変革アプローチを用いたことによって、オランダの年金資産運用会社は、構造的なコスト低減と反応性の向上を実現した。変革チームは、組織の目指すあるべき姿の特性を備えた透過的かつ反復的な変革を適応することによって、自らの主張を実践してみせた。人々とチームが公明かつ反復的に行動し、自立性を持ち、起業家精神を示す、という文化を確立したのだ。

戦略的変革プログラムマネージャのSabine Scheepstra氏と、スクラムマスタのEllen Aalbers氏は、2017年のAgile Consortium Netherlandカンファレンスで、クリエイティブなビジネス環境におけるアジャイルとScrum Studioの適用法について講演した。InfoQではこのカンファレンスについて、記事やインタビュー、論説でお伝えしている。

Scheepstra、Aalbers両氏に、アジャイルを始めた時に両氏が期待したこと、アジャイルプラクティスの導入にScrum Studioを用いた方法、チームの成熟度評価、アジャイル導入過程における文化的変化の状況などについて話を聞いた。

InfoQ: アジャイルを始めた頃、PGGMには何が必要で、アジャイルに何を期待していたのですか?

Sabine Scheepstra: オランダの年金資産運用会社のPGGMにおいて私たちは、2014年に“Daadkrachtig Vernieuwen”という野心的な企業変革プログラムを立ち上げました。3年間に及ぶプログラムの目標は、PGGMの組織を刷新し、反応性の高い組織と、年間5,000万ユーロの構造的コスト削減を実現することにありました。これらの変革は、急激に変化する世界と関わりあいを持つ上で、PGGMにとって重要なものでした。私たちが慣れ親しんでいた仕事の方法はコストが高い上に柔軟性がないため、変化が必要だったのです!

Daadkrachtig Vernieuwenの数年前から、私たちはアジャイルとリーンを使い始めていました。そのため、そこでの対応を全社レベルにスケールアップする作業に着手した時には、すでに多くの経験を積んでいました。私たちの主張を実践するため、組織のあるべき姿を目標として、それと同じ特徴を持った変革アプローチを選択することにしました – 透過的かつ反復的な変革アプローチであること、プッシュではなくプルを基盤とすること、作業量(output)ではなく成果(outcome)で評価すること、内部ネットワークを活性化すること、関係者に内在するモチベーションに立脚すること、などです。例えば、すべての進捗を評価し、四半期毎にレトロスペクティブを実施して、プログラムの結果をレビューしました。そこでの考察とデータに基づいて、次に行なうべき介入と、アプローチの変更方法を決定したのです。

3年間のプログラムの中で、私たちは45を越える変革イニシアティブを完了しました。その結果が、会社のすべての部分における大小さまざまな数多くの変革となりました – 新たな部署やチーム、これまでとは違う作業方法や新しいプロセス、透過性と自立性の向上、そして、その結果としてのコスト削減と反応性の向上です!

InfoQ: Scrum Studioとは何ですか?

Ellen Aalbers: scrum.orgには、Scrum Studioとは“新たな可能性やプロダクトを革新、創造、再生するために使用可能な(新しい)イニシアティブであり、プロフェッショナリズム、ベストプラクティス、プロフェッショナルとしての私たちが提供すべきものに基づく”とあります(出典: Scrum Studio – A Transition to Enterprise Agility by Dave West)。

Scheepstra: Professional Scrum Studioの要件は次のようなものです。

  • 組織の他の部分から分離されていなくてはならない
  • 独自の予算、管理、人員を持たなくてはならない
  • Studioに入って使用するには、事前に審査を受けなければならない

Scrum Studioの本質は、ビジネスバリューの顧客への提供にエンド・ツー・エンドの責任を持った、組織から独立した部署、真の独立性と真の結果責任を持った部署なのです!

InfoQ: クリエイティブなビジネス環境において、アジャイルプラクティスはどのように見えるのでしょう?

Aalbers: PGGMでは2020年までに、ヘルスケア部門が担当する2,600万人の中の100万人を、オンラインの“PGGMアンバサダ”とする、という目標を持っています。Scrum Studioの目的は、地域社会のヘルスケアワーカの活性化と連携によって彼らがPGGMアンバサダとなるのを支援し、それを通じてこの目標を実現することです。私たちのStudioには現在3つのチームがあって、プロダクトマネージャ、オンラインマーケッタ、コンテントクリエイタ、オンラインエディタ、コミュニティマネージャ、ディジタルアーキテクト、テクニカルスペシャリストで構成されています。各チームはそれぞれの目標の設定に加えて、他チームの目標とのリンクやStudio全体にも責任を持っています。例えば、あるチームはオンラインの活性化とアンバサダシップを担当しています。彼らはオンラインでアクティブな人の数、コミュニティへのログオンの頻度、ディスカッションでの発言数などを測定すると同時に、これらの指標に目標値を設定しています。このことが、これらの目標がPGGMの戦略全体(ambition 2020)と直接リンク可能であるという事実とも合わせて、チームの任務に関する妥当性を更なるものにしているのです。

私たちはスクラムを使う上で、スクラムマスタとプロダクトオーナを採用していますが、プロダクトオーナの責任については、チームメンバの専門知識に基づいてその一部を委任する方法を採っています。その上で私たちは、MVP用の新たな抵当権サービスや新しいアプリの開発やデプロイ、テストを繰り返し、あらゆる種類のフィードバックや計測可能なデータを収集し、さらなる決定に役立てているのです。

InfoQ: チームの成熟度の評価はどのように行なっているのですか、それはアジリティの向上にどう役立っているのでしょう?

Scheepstra: PGGMでは“PGGM-way-of-working”とPGGM成熟度モデルを開発して、チームの成長と発展をサポートしています。このモデルは、リーンとアジャイルの考え方と継続的改善の基礎に基づいていますが、Carol Dweck氏の成長できる考え方(Growth Mindset)やPatrick Lencioni氏、あるいはJim Collins氏のGood to Greatなども取り入れています。成熟度モデルは、チームが成熟度を自己評価し、チームとして発展させたい領域を決めるために使用しています。

Aalbers: 成熟度モデルに基づいて、PGGMでは定期的に、数ヶ月単位で自分自身とリーダを評価しています。ここでの評価は、チームとして改善したいと考えているサービスや分野に関する対話をする上で役立つとともに、リーダがチームに適切な指導や支援を行なうために利用されます。成熟度スコアの正確さを問うのではなく、自分自身への挑戦を継続し、それによる改善と成長を目に見えるものにすることが重要なのです!

InfoQ: いくつかのプラクティスを再考した、という話題がありましたが、具体的な例をあげて頂けますか?

Aalbers: スクラムのプラクティスのいくつかを再検討しました。例えばチームの固定化(fixed team)です。私たちは昨年1年間、チームの編成をかなり頻繁に変更しました。創造性や、必要なビジネス価値をもたらす適切な人材を組み合わせることが、予測可能性よりも重要だという考えからです。Scrum Studioには20人程度で、お互いを知っていますから、チームの変更は大きな問題ではありません。また、全員を毎日オフィスに出勤させる代わりに、遠隔勤務とスカイプによるスタンドアップミーティングを行っていますが、非常にうまくいっています!

Scheepstra: ベロシティよりもはるかに多くの価値を提供できましたし、スプリント計画もすべて完了しています。そのため、1チームのみで最近、計画プロセスのサポートにストーリポイントの利用を始めてみました。他のチームはプランニングポーカーは使用せず、オンライン会話数やクリック数の最大化、トピックに対する肯定的な反応の向上、コミュニティの成功数の向上のように、できる限り多くの(ターゲットとして定義した)ビジネス価値を提供することによる、継続的な成果の最大化に集中しています。

InfoQ: アジャイルを導入する過程において、組織の文化はどのように変化しましたか?その変化を実現させたものは何でしょう?

Scheepstra: 反応性(responsiveness)は実際に、多くのPGGMの同僚の間で、日常的な業務と会話の一部になっています。チームもメンバも公明かつ反復的に作業し、自立性を持ち、起業家精神を示しています。メンバが自分自身の発達と業績について責任を負うことができるように、昨年のパフォーマンスサイクルで“コミットメントレター”を導入しました。

大規模な予算のプロジェクトを直ちに計画するのではなく、あらゆる種類の実験を行なって私たちのアイデアをテストしています。実験することが仕事の方法なのです – 実験の内容はそれほど重要ではありません。新しい(管理)職務、新しいバリューチェーン、ブロックチェーン、データインテリジェンス、新しい予算方法、新しいパフォーマンスサイクルなどを試しています。それぞれは小さいものに見えるかも知れませんが、組織には大きな影響を与えています。

PGGMでは全社的に変革の必要性を認識しています。変化する世界に対応し、関連性を保っていくためには、発展を続けることが必要なのです。そして、反応性とアジャイルの原則に基づいた私たちの変革アプローチと成熟性モデルなどのツールこそが、この変革を可能にしているのです。

 
 

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