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2017-2018 State of Scrumレポート公開

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原文(投稿日:2018/01/25)へのリンク

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経営者にとって、最優先事項は価値の提供だ。企業がアジャイルを導入すれば、顧客満足度が最も重要な改善指標となる。硬直的な慣習や指揮統制型リーダシップに縛られた企業では現代社会の競争を生き残れない、という必然性が、企業をアジャイル変革へと駆り立てている。スクラムを採用する先進的企業では、独自の企業や文化のニーズに対応する方法でスクラムを使用している。

2017~2018年版のstate of Scrum Reportでは、スクラムの採用と利用、スケールアップの傾向が説明されている。この調査はScrum Allianceが毎年実施しているもので、2017~2018年の報告書には、91カ国からの2,000人以上が、27を越えるさまざまな産業を代表して参加している。

InfoQはScrum Allianceの暫定CEOを務めるLisa Hershman氏にインタビューして、経営層がアジャイルとスクラムに期待するもの、成功と失敗を分ける要因、企業がアジャイル転換を目指す理由とそこに期待する効果、アジャイルの現実社会での応用、今回の調査の実施から学んだこと、それがスクラムおよびScrum Allianceに与える影響などについて質問した。

InfoQ: これまでの報告書と比較して、2017~2018年のState of Scrum Reportが違っている部分はおもに何でしょう?

Lisa Hershman: 2017年のレポートでは、スクラムがその適用範囲を拡大して、そのルーツであるITから遠く離れたビジネス部門にまで及んでいることが分かりました。2017~2018年のレポートの大きな目的のひとつは、より広範なアジャイル移行に注目して、さまざまな産業に存在する、スクラムの企業および地域的な採用に影響を与えるようなニュアンスに目を向けることでした。

今回のレポートでは、独自の企業ニーズや文化的ニーズに対応したアジャイル移行をサポートする目的で、企業がスクラムフレームワークの採用に踏み切っている様子が明らかになりました。例えば、スクラム運用を支援する手段として、スケーリングフレームワークを使用している企業が数多くありました。今年は、企業レベルでの大規模なスクラムの実施に着手する企業数に増加が見られるとともに、スクラムがIT以外の分野でも使用されるようになり、企業規模での移行をサポートしている様子も確認できます。

スクラムがその本来の目標を達成しているという意味で、この結果は素晴らしいものだと思います。まさに適応と変革であり、変化への対応です。

InfoQ: 経営層はアジャイルとスクラムにどのような成果を期待しているのでしょう?

Hershman: 容赦なく変化する企業環境において、企業は変化に迅速かつ柔軟に対処しなければなりません。そのことを経営者は理解しています。アジャイルの思想を取り入れてスクラムを使う企業が増え続けているのは、そのような理由からです。

スクラムベースのプロジェクトを立ち上げる経営層にとって最大のメリットは、顧客に価値を提供できることです。経営者の約4分の3は、顧客満足が最優先事項であると言っています。柔軟で応答性の高いこともまた、大きな要因です。

このような経営陣の理解は、スクラムの採用を拡げる上で不可欠なものです。 今年の調査では、スクラムを採用する場合に最も重要な検討項目は何かを質問しているのですが、60パーセント近くがシニアマネージメントによる積極的関与だと答えています。企業の戦略的および財務的な目標と整合するスクラムの能力を活かして、企業が独自の使命を達成するための支援となる方向でスクラムを活用しようとしている回答者も数多くありました。

InfoQ: 企業の期待するメリットは得られているのでしょうか?アジャイルとスクラムの成否を分けているものは何ですか?

Hershman: そうですね、スクラムを忠実に実践し、アジャイルの原則を適用して、それを文化の一部としている企業は、素晴らしい成果をあげています。ですが、それは必ずしも単純で容易な変革ではありません。調査に回答した企業の約半数にはスケールアップの問題がありました。これはスクラムプラクティスの大規模な採用が増えていることが原因かも知れません。

それだけではなく、スクラムの実践にはさらなるサポートが必要な場合もあります。スクラムチームと組織との間に生じる緊張には、大きく3つの原因があります。

  1. 指揮統制型リーダシップに対するマネジメントの執着
  2. 変革全般に対する抵抗
  3. 理解ないしサポートの全般的欠如

実地でチームをコーチすることのできる人たちの協力なくしては、パラダイムシフトを起こすことはできません。

社内トレーニングやオンライントレーニングのための複数の選択肢を用意することで、スクラム採用を進めることに成功した例もあります。回答者の90パーセント以上が、企業内でスクラムトレーニングやコーチングを提供していると答えています。このようなタイプのサポートを活用している企業では、スクラム導入時に期待した結果が実際に得られているのです。このフレームワークは機能しています。

InfoQ: 企業がアジャイル変革を進めるのはなぜなのでしょう?

Hershman: 他に代わるものがないからです。硬直的な慣習や指揮統制型のリーダシップに縛られた企業には、現代社会の競争を生き残ることはできません。必然性がアジャイル変革を進めているのです。

InfoQ: 変革にはどれほどのメリットがあるのでしょうか?

Hershman: 調査結果からは大きな効果が示されています。ほぼすべての回答者 — 97パーセント — が、今後もスクラムの使用を続けると答えていることからも、それが機能していることが分かります。

今回の調査では、製品満足度の向上、市場投入時間の短縮、製品の品質向上、スタッフのモラル向上など、すべて変革後に測定可能なさまざまな指標によって、変革の成功を測定しています。その結果、スクラムプロジェクト実施に対する経営層の最も高い関心事である顧客満足度の向上が、アジャイル導入を決定した後に最も改善された指標でした。

85パーセントの回答者が、スクラムによって企業における生活の質(quality of life)全般が向上した、と答えているのも注目すべき点です。起きている時間の大部分を仕事に費やしている私たちにとって、これは非常に重要です。

InfoQ: 2017~2018年のレポートには、スクラムとアジャイルの現実社会での応用に関する補足記事が添付されていますが、この記事は何を目的としたものなのでしょう?

Hershman: この記事がレポートに加えられてよかったと思います。これらはスクラムのユニークで、人間的な面を物語っています。それぞれの記事からは、さまざまな業界の幅広い企業が、スクラムのプラクティスを指向していることが理解できます。

その中には、スクラムを導入するとは思えないような分野もあります。例えばオーストラリアのあるメンタルヘルスクリニックでは、治療中の患者に対して、医師と心理学者にフィードバックを提供することを奨めています。もうひとつの例はシンガポールのGovTechで、政府のイニシアティブと民間セクタのコラボレーションを促進する機関です。この組織では、バスルートの改善からAEDの普及に至るまで、市民の日常生活の改善を図っています。これらの記事に示された成功例は、どの産業においても、世界中のどの地域でも、スクラムが機能することを証明するものです。

InfoQ: 今回の調査を通じて、どのようなことが分かりましたか?それはスクラムやScrum Allianceにどのような影響を与えるのでしょう?

Hershman: 調査から分かったのは、今後数年間にわたってスクラムが成長し続けるであろう、ということです。今回の調査プロセス自体が、それを雄弁に語っています — 私たちは今回、世界中の2,000人以上から回答を得たのですが、大陸や産業を問わず、その回答には一貫性がありました。アジャイルとスクラムはどこでも、誰にでも使えるのです。

Scrum Alliance®では、今回の調査で明らかになったスクラムの進展とフレームワークの大規模化への予測を反映すべく、教育と認証の拡大を図っていきます。今後数ヶ月の間に、これら新たなイニシアティブの詳細を発表する予定です。

それは別として、この一連の質問に対する反応には見るべきものがあります。今年の調査は、アジャイル移行というこの世界が世界そのものであるということ — Scrum Allianceのメンバたちは、その大きな世界の一部であることを強く印象付けるものになっています。

 
 

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