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アジャイル転換にパラドックスを利用する

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原文(投稿日:2018/02/08)へのリンク

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パラドックス(逆説)はアジャイル転換に有効だ – 立ち止まり、考え、共通の言語で議論することを可能にする。共感し、方向性を示す上でも役に立つ。ドイツの保険会社であるVIVATでは、トレーニングや日々の作業にパラドックスを用いることでアジャイル転換を進めている。

同社プログラムマネージャのPatrick van Ginneken氏に、ブレークスルーの実現や管理層へのアジャイル思想の導入、さらにはその思想を日々の作業に活かすためにパラドックスをどのように用いているのか、などを聞いた。

InfoQ: VIVATでは、アジャイル転換の推進にパラドックスを用いている、ということですが、これについて詳しく説明してください。

Patrick van Ginneken: VIVATは、ディジタル保険業界において主動的な役割を果たすことで、最も革新的な保険会社になりたいと考えています。イノベーションと変革を短期間かつ効率的に行うために、当社はアジャイルな組織を構築しています。パラドックスの利用は、アジャイル転換におけるブレークスルーのニーズに対して完璧に適合するのです。VIVATでは現在、変革を伝えるために3つの重要なパラドックスを使用しています。

  • 完成させるために開始するのを止める(Stop starting to start finishing)
  • 大きな成果を得るために小さくする
  • 短期的な成果を実現するための長期的なチーム

これらのパラドックスを利用することで、転換に有益ないくつかの効果を一度に作り出すことができます。

  • 立ち止まって考える機会を与えてくれます
  • 現状への共感を明らかにします
  • 進むべき道を示してくれます
  • 共通言語を作り出します – 矛盾した事実は覚えやすいのです

当社では、パラドックスを日々の会話に取り入れることで、実際にこのような成果をあげています。

InfoQ: 例をあげて頂けますか?

Van Ginneken: ポートフォリオ計画セッション中にプロダクトオーナが、重要なイニシアティブの開始を主張した同僚に対して、“すごくよいアイデアに聞こえるけど、新しい取り組みが始められるようになったのは何かが終わったからなのかな?”という疑問を投げ掛けたことがありました。この時の議論をベースにして、新しいことを始めるよりも、進行中のイニシアティブを遅らせている障害のひとつを取り除く方に重点を置くことが決められたのです。

InfoQ: VIVATでのパラドックスの使い方は“規範を明確にする”、つまり現在の行動を探索することから始まっていますが、なぜそうであって、どのように機能するのでしょう?

Van Ginneken: 現在の活動とその意図しない結果を理解することは、変革のための効果的なトリガとなります。一般的に人は、最高の意図を持って行動します。例えば、“何かを成し遂げたいのであれば、できるだけ早く始めるのがベストだ”と考えるのは理に適っています。行動に対するこのような理解の下で、 私たちは他者とその意図をポジティブに理解するのです。“早く取り掛かってもろくな結果にはならないよ”、などと言ったりはしません。彼らの意図は正しく、私たちは協力しながら、望ましい結果を達成するよりよい方法を学んでいるのです。

最高の意図に対する意図しない結果を示すことは、どのような変革が可能かを理解する上での基礎となります。こうすることで、彼らの意図を損なうことなく、現在の行動を放棄させることが可能になるのです。

このことは私たちのレポートでも強調されています。例えば、役員に対するポートフォリオレポートに、WIP(Work-in-progress)とベロシティを追加しました。当初は会話を変えるための追加情報という位置付けでした。変革前と変革後を並べて示すことで、以前のフレームワークと新たなアジャイルアプローチとの差を強調しているのです。

InfoQ: VIVATのマネージャに対しては、どうやって新たなアジャイル思想を導入するのですか?

Van Ginneken: アジャイル思想の導入にはさまざまな道具を使っています。最も明確なのは、上記のパラドックスを適用したトレーニングです。そのトレーニングでは、VIVATでの現実的な例を使って、変革を推進する個々人の立場に肯定的、否定的の両面から焦点を当てています。

ポートフォリオのレベルでは、計画セッションやスタンドアップ、デモ日程の他、組織全体でのケイデンスの同期なども行っています。これによって作業を視覚化し、議論を優先事項や価値観、作業の縮小に向けて集中させています。アジャイル思想の導入は、定期的なレトロスペクティブを通じて学んだことを適用し、状況の変化を変革の機会として利用するという、長い道程なのです。

例えば、最初の計画セッションでは、ユニット間の依存関係をどのように合意するかというような、大まかなアイデアしかありませんでした。それから後に、運用レベルでもっと多くの指針(ユニット間作業をどのように管理するか、といったような)を提供する必要があることに気付いたのです。しかしながら、そういった問題について誰も経験がなかったので、最初に試すまで、最終的なソリューションに至ることはできませんでした。レビューで学んだことを寄せ集めて、最終的な作業方法の調整についての合意に達したのです。

InfoQ: マネージャが日頃の業務にこの思想を取り入れるために、どのような支援を行いますか?

Van Ginneken: トレーニングでは、パラドックスをベースとした実践的な指導を行なっています。特に、変革におけるマネージャの役割に重点を置いています。“誰かが新しいアイデアを実施したい時は、新たな活動を始めるために何を完了させるかを問う”(完成させるために開始するのを止める)、“前提となっているものを理解し、作業を小さくするための基盤とする”(大きな成果を得るために小さくする)、“チームとその開発に投資して、レトロスペクティブを用いて改善領域を構造的に捉える”(短期的な成果を実現するための長期的なチーム)などがその例です。

最も望ましいのは、マネージャが熱意を持って同僚たちに影響を与え、それによって前進することです。例えば、当社のユーザおよびワークスペースサービス部門のマネージャは、ビジネス上のプロダクトオーナを探し出して、デモの日程を毎月設定し、すべての参加者に対して最新の開発成果を積極的に売り込ませるようにしています。インフラストラクチャは一般的にはアジャイル転換の主役ではありませんが、彼の部門はこの点で他部署を超越していて、新たな可能性を示しています。

InfoQ: これまでのアジャイル転換活動で、どのようなことを学びましたか?

Van Ginneken: おもな教訓は次のようなことです。

  • プロダクトオーナの質と可用性に大きな投資を行うこと
  • 戦略、行動、構造、組織システムのアジャイル性を継続的に強化すること
  • 何が可能なのかを可視化し、フロントランナを作り上げること
  • 自動化や技術移転といった構造的手段を講じることによって、ユニット間の依存性による影響を制限すること
  • ビジネス側の参画を得ること(すべてのレベルにおいて)

InfoQ: 今後について教えてください。

Van Ginneken: 当面の課題は、VIVAT内でのアジャイルの適用範囲を広げて、ポートフォリオのレベルにまでスケールアップすることです。継続的デリバリパイプラインのような実現手段(enabler)にも投資していますが、最終的には、やり続けること、構築すること、学ぶことも重要ですね。

 
 

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