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アジャイル企業になるには

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企業は今、階層的な組織構造とマイクロマネジメントに分かれを告げて、アジャイル企業へと変わらなければならない — 従来型の官僚型構造に苛まれつつ小さな変化を積み上げるのではなく、管理モデルを根本的に変える必要がある。アジリティを阻害する行為をやめさせて、顧客指向、本質的モチベーション、リーダシップ、信頼関係に基づくリーダシップ、フォーマルでない計画、といったものに集中するべきだ。

Göran Nilsson氏とLennart Francke氏がAgile People Sweden Conferenceで、アジャイル企業について講演した。InfoQではこのカンファレンスを記事やインタビュー、論説でお伝えしている。セッションの概要は“Morning Sessions from Agile People Sweden”および“Afternoon Sessions from Agile People Sweden”で見ることができる。

InfoQはNilsson氏とFrancke氏にインタビューして、アジャイルになるための課題に企業がどう対処すればよいのか、持続可能な方法で完全なアジャイル組織へと変革するために何ができるのか、などを聞いた。

InfoQ: アジャイル組織になろうとする多くの企業が直面する、最も大きな課題は何でしょう?

Nilsson: 階層構造のすべての構成者 — オーナ、役員、トップマネジメント、中間マネージャ — に対して、その指揮権を支えてきた従来の方法論を放棄して、組織内の人々を信頼する勇気を持ってもらうことが大きな課題です。アジャイルになるためには、実行することよりも止めることの方が多い、と私たちは思っています。大きなリスクは、マネージャが自身の持つすべてのマネジメントと管理権限を前提として、その上にアジャイルの思想や方法論を加えようとすることです。そのような行為は、混乱を招く以外の何ものにもなりません。

Francke: 過度に詳細なビジョンや戦略文書を取り除くことで、ビジネスモデルや全般的なガバナンスがより明確になり、スタッフの把握もしやすくなります。予算管理を止めれば、顧客へのサービス提供や、ビジネスのダイナミックな発展への適応に集中できるようになります。

InfoQ: これらの課題には、どのように対処しているのでしょうか?

Francke: あまり成功しているとは言えない状況です。複雑な組織が真のアジャイル組織への転換に成功した例は、ほとんどありません。これまでの試みの大部分は、アプローチが十分に全体論的でなかったという理由で失敗しています。予算プロセスをローリング予測モデル(rolling forecast model)に変えても、アジャイルは実現しません。組織内の主要な人たちの目を社内計画の実現から外の世界、市場や顧客に向けさせることが必要なのです。そのために私たちは、マネジメントを根本的に変えるための4つの側面として、顧客指向、本質的な動機付け、信頼に基づくリーダシップ、フォーマルでない計画、を掲げています。これらを並行して実施するのです!

InfoQ: アジャイル企業のためのマニフェストの中に、“本質的ではない報酬ではなく、本質的な動機付けを”という節がありますが、これについて説明して頂けますか?

Nilsson: 個人的なパフォーマンスを基準とするボーナスのような、本質的でない報酬(extrinsic rewards)は、目先主義やデータ操作、さらには不正行為のように、さまざまな機能不全的な影響を及ぼすことが多いのです。同時にそれは、本質的な動機や創造性を低下させる傾向があります。それに対して、本質的な動機付け(intrinsic motivation)は、長期的な思考やロイヤリティ、創造性を支援します。そのためには社員に対して自律性や学習機会、さらには目的意識や所属意識といったものを持たせることが重要です。これらすべてが、本質的な動機付けをサポートするものであるからです。

InfoQ: SouthwestやVirgin、Handelsbankenといった企業は、どのようにして持続可能な変革に成功したのでしょう?何が違っていたのでしょうか?

Francke: スタートアップ企業はすべてアジャイルです。必然性があるからです。ですから大企業は、組織の成長に伴う官僚化を回避するか、あるいはHandelsbankenの例のように、中央集権的かつ機械的な組織を根本的に分権化する — アジャイルになる必要があります。このためには包括的なアプローチだけでなく、一貫性のある変革プロセスも必要です。1970年代にHandelbankenが実施した革命的な変革プロセスと、それに続く継続的な変換によって、そのモデルは時間とともに充実し、これらを考える上でのひとつのモデルとなりました。ですから私たちは、この変革を実現した当時のHandelsbankenの伝説的CEOであるJan Wallander氏に関する話を、私たちの本で取り上げたのです。組織を根本的に変えるためのJohn P. Kotter氏の8ステップモデルは、20年以上前に作られたものですが、このHandelsbankenの変革を説明する上で適切なフレームワークを提供してくれています。

InfoQ: 完全なアジャイル化を目指す企業に対して、何かアドバイスはありますか?

Nilsson: アジャイルな組織であっても、すべての階層構造や必要な管理まではやめていないのが普通ですが、重要なのはそれに捕われ過ぎないことです。ですから、私からのアドバイスは、やめなければならないことは想像以上にある、ということです。想像よりもはるかに多いのです。あまり変わっていない企業はたくさんありますが、変わり過ぎた企業というのはありません!それから、少しずつの変化を積み重ねることはしないでください。何の効果もありません。従来の官僚的な組織構造に埋もれてしまうのです。アジャイルへの道程を完遂したいのならば、必要以上に妥協したり、小さなステップで行おうとはしないことです。

Francke: 例えば、セールスやマーケティング担当者に対して、毎月あるいは毎週のセールス目標にブレークダウンした予算の達成を求めながら、彼らを真の顧客指向にするというのは不可能なことです。また、中央集権型のヒーロー的なリーダがトップに立って中級以下のマネージャを動かしているのならば、アジャイルな組織には不可欠なサーバント(奉仕型の)リーダシップを育てることは期待できません。変革へのアプローチは、最初から一貫していなければならないのです。

Nilsson: 何人かでワゴンを急な坂の上まで押し上げるようなものだ、と考えてください。努力が足らなければワゴンは坂を戻ってくるだけで、どこにも行くことはできません。ですが、全員があらん限りの力を振り絞って、ワゴンが頂上に到達するまで押し続ければ、きっとうまくいくでしょう。頂上に達したならば、つまり企業がアジャイルになったのならば、強く押す必要はもはやありません。そこからは小さな、段階的なステップによる改善を始めることができます。私たちはこれを、“革命に続く進化(a revolution followed by an evolution)”と呼んでいます。

Francke: アジャイル転換とは、企業や組織のマネジメントモデルを刷新するという意味です。優れたリーダシップの原則の導入や、予算の廃止だけでは十分ではありません。現実問題として、このような根本的な変革は、CEOの指導と幹部会の完全な支持、さらに言えば主要なステークホルダによって推進される必要があります。その見返りは顧客や従業員など、すべての利害関係者に及びます。特に株主に対しては、継続的かつ良好なリターンという形で現れます。

InfoQ: アジャイル変革を進めるために、企業には何ができるでしょう?

Francke: マネジメントモデルについては、全員が明確に伝えて共有すると共に、重要な株主や取締役会、CEOの支持を受ける必要があります。コスト管理の効率化や従業員の満足度向上といった分かりやすい成果は、スタッフにもすぐに伝わります。しかしながら、アジャイル管理モデルにおける長期的な持続可能性を得るためには、トップマネジメントが組織の重点をアジリティに置き続けなくてはなりません。これは意識的な企業文化の問題であって、懐疑的な批判を受けた場合においても、企業としてその管理モデルを維持するために必要なものです。

Nilsson: Googleの官僚主義バスター(bureaucracy busters)が好例です。企業がアジャイルであるかどうかに関係なく、官僚主義は常に頭をもたげるものです。ですからその兆候が見えたならば、すぐに刈り取らなくてはなりません — あるいは少なくとも、それを主張する人たちに十分な説得力のある議論のあることを確かめてください。

 
 

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