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新しいCIO像 - IT推進役としてのMark Schwartz氏の提案

原文(投稿日: 2018/07/05)へのリンク

米国市民権移民局の元CIOで、現在はAWSのエンタープライズストラテジストであるMark Schwartz氏が、ロンドンで開催されたDevOps Enterprise Summitで、ITをリードすることの意味について講演した。

氏は、従来の古いモデルがビジネスとITを区別している状況を述べた上で、CIOが他の役員(CXO)と同じように活動し、同じように扱われる新たなモデルについて説明した。IT部門をリードするということは、ビジネスとは別の組織を運営することや、ビジネスの要件を満たすこと、あるいはビジネスとしてITを運営することではない、と氏は言う。

Schwartz氏の言う古いモデルでは、ビジネス部門が要件を立案し、別の場所にいるIT部門に対して壁越しにそれを引き渡す。IT部門は計画を立案して実施をコミットし、ガントチャートを書き上げる。その後は別の場所で作業をして、出来上がった成果を壁越しにビジネス部門に投げ返すのだ。この従来型のモデルでは、IT部門はカスタマサービスを提供して皆をハッピーにする役割であり、いわば企業内の請負業者という位置付けである。このモデルならば、IT機能の外部委託化は極めて論理的な帰結だ、と氏は言う。

氏はこれを“非常に恐ろしい現状”であると表現し、IT部門とのネゴシエーションという考え方の無意味さと、そのオーバーヘッドを強調する。

Mark Schwartz: ITをひとつのビジネスとして運営することは、望んでも不可能です。必要なものすべてを管理できないからです。雇用と解雇、拡張と縮小を思い通りに実行し、開発対象を決定できなければなりません。

Schwartz氏は、ビジネス部門の顧客全体が要求を持ち込む状況を“ユーザストーリの吐出(vomit)”と表現して、このような状況が需給管理のプロセスになり、一部の人々には喜ばれるが、他には受け入れられない結果になっている、と説明した。このシナリオであれば、意思決定はビジネス戦略と結び付いていてもいなくてもよい、と氏は言う。

Schwartz: IT部門がアジャイルを導入した時も、何も変わりませんでした。その代表的手法であるスクラムでは、プロダクトオーナがビジネス部門を代表し、ビジネスで価値のあるものは何かを技術チームに伝え、それを実行させます。これはスケールが小さいだけで、ウォーターフォールモデルと同じです。結局はモデルを縮小しただけなのです。何に価値があるのかは自分たちが決める、あなた方はそれをやればよい、という意識は変わっていません。

この状況が何十年も続いていた、それらを受け入れ難くするようないくつかの変化が最近になって起きていなければ、今でも続いていたかも知れない、とShwartz氏は言う。まず第1に、ディジタル時代が到来したことだ。これによって、なぜビジネス部門が技術チームに対して技術的な要件を提供するのか、という疑問がビジネス部門に出始めた。技術部門からビジネス部門へという別の流れがあって然るべきではないか、というのが氏の論理だ。その例として氏は、クラウドサービスが出現して、これまでになかった計算能力と、マシンラーニングのようなハイレベルなサービスの利用が可能になった点を挙げた。さらにはDevOpsも、サイクルタイムの短縮や計算能力の向上という点で、このモデルの進化に貢献している。このすべてが、最良のアプローチはリーンスタートアップ、試験、フィードバックに基づくものである、ということを私たちに教えてくれている、と氏は言う。

Schwartz: それでも企業がこのような変革に抗うことは簡単ですが、そうすべきではない本当の理由は、それが競合企業に対して、より速い行動を可能にすることになるからなのです。

Schwartz氏が説明する新たなモデルでは、CIOが他の役員(CXO)と同列にあって、ビジネス戦略に機能的な専門知識を提供する。他のCXOと同じく、新たなCIOが顧客としてのビジネスを語ることはない。彼らは等しく、ビジネス全体の重要な部分なのだ。

Schwartz: 理想的な要件は誰にも分かりません。だから実験するのです。皆で仮説を立て、それをテストするのです。

氏は、eVerifyでの自らの経験として、インパクトマッピング(impact mapping)が混成チームとして実施されたこと、その過程においてプロジェクトチームがアウトプットを無視するように言われたこと、などを説明した。彼らは次のような質問をした — ケースはいくつ消化できているか?どれくらいの費用を使ったか?今後は何をする計画なのか?何に費用を使う予定なのか?障害となるものは何か?これに答えることで、資金投入の継続を決める上で必要な情報がすべて提供される、と氏は言う。試験のアイデアが枯渇して行き詰まった時は、新たな目標に資金が振り向けられたこともあった。

Schwartz氏の定義する新たなCIOは、技術的な専門知識を持って(他のCXOと同じように)企業の戦略立案に貢献する役割だ。CIOが技術側の人間であることが必要なのは明白だが、一般的な認識に反して、氏は次のように言う。

Schwartz: 企業が目標を定めて、それをビジネス価値として定義します。CIOはこのビジョンを取り入れて、チームと協力して目標達成のために活動することによって、チームと目標を結び付けると同時に、進捗を常にフィードバックします。CIOはエンタープライズアーキテクトとして、将来的なアジリティを促進するという方法によって、ITシステムに関わる品質の問題に現実解を与えます。システムは技術的負債に満ちているかも知れませんが、それでもあらゆる瞬間において、すべてのITシステムはまとめてひとつの資産であり、企業の将来を保証するものなのです。価値はアーキテクチャだけではなく、人やプロセスにも存在します。それは企業の今後の収益とコストを左右する無形の資産であり、CIOにはその将来的なパフォーマンスを確実なものにする責務があるのです。

新たなCIOは障害の排除し、目標を継続的に微調整することで、継続的改善を実現する責務も負う。

我々はCIOの役割を、単に自らの部門を運営する者としてではなく、ビジネスへのインパクトという文脈で考えなくてはならない、として、氏は講演を締め括った。

 
 

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