BT

最新技術を追い求めるデベロッパのための情報コミュニティ

寄稿

Topics

地域を選ぶ

InfoQ ホームページ ニュース マネージャのいない組織管理 - セルフマネジメントの実践例

マネージャのいない組織管理 - セルフマネジメントの実践例

ブックマーク

原文(投稿日:2018/11/05)へのリンク

スウェーデンのストックホルムで先日開催されたAgile Peopleカンファレンスで、Doug Kirkpatrick氏が基調講演を行い、組織内におけるセルフマネジメント(Self-Management)の採用に必要なものを深く掘り下げるワークショップを開催した。

セルフマネジメントとは、機械的な階層や、他者に対する独裁的かつ一方的な命令権限を持たず、従来の管理機能を個人が自由かつ自律的に行うという組織哲学です。

セルフマネジメントは2つの簡単な原則に基づいている、と氏は言う。

  • 個人は他の人々や財産に対して力を行使してはならない
  • 個人は他の人々に約束したコミットメントを守らねばならない

この2つの原則はすべての民法および刑法の基礎であり、人々がそれに従って行動する結果が、平和で調和の取れた社会である。これらの原則を適用する組織で働くことで積極的かつ協力的となることができ、優れた成果をあげることができるのだ。

氏は、組織における階層構造の源流として、1800年代にアメリカで建設された大陸横断鉄道を指摘した。大陸全体で働く何千人もの人々の調整には専門の管理者を必要とし、これがその後200年間、米国におけるほとんどの管理組織の基礎となったのだ。従来型の管理を行っている組織では、(意思決定者である)管理者と、指示されたことを単に実行しなければならない労働者の間に明確な境界がある。業務の専門化も、このアプローチの帰結によるものなのだ。

これらの構造とアプローチは、19世紀から20世紀にかけて組織で運用されたが、経済が機械的作業から知識作業に移行するにつれ、その有効性は徐々に低下している。業務における慢性的な積極性の欠如と不満は、指揮統制型の管理が21世紀では有効ではないことの証明だ。

セルフマネジメントは合意書(CLOU, Colleague Letter of Understanding)から始まる。組織内の全員が自分自身のCLOUを書き、関係を持つ人々との間で合意する。合意書には、“Personal Commercial Mission”と“Process Accountabilities”という2つのセクションがある。

“Personal Commercial Mission”では、次の3つの問いに回答する。

  1. なぜ私はここで働きたいのか?
  2. 私の役割における卓越性とは何か?
  3. 私の行なうことは、組織のミッションにどのように役立つのか?

“Process Accountabilities”では、その人が行なう特定のタスクやアクティビティ、そのアクティビティに関わる決定権、アクティビティを評価する上で重要なパフォーマンス指標を明確化する。

ここで重要なのは、これが本人によって書かれ、同僚と合意されたものであることだ。従来の職務明細書のように、他人が書いて手渡されるものではない。新たに人を雇用する場合には、採用する側のグループがニーズとのギャップを列挙することが可能だが、CLOUを書くのはあくまで本人である。

CLOUは、従事する業務内容を変更する必要がある場合や、自身の責任範囲を他の分野に拡大したい場合には、更新することも可能である。この時は職場で共に働く人たちや、あるいは新たな職場で共に働く予定の人たちと交渉し、合意することが必要になる。

セルフマネジメント組織における対話と意思決定は、コミットメントの流れでなければならない。すなわち、要求が行われ、必要条件が交渉されて明確化され、契約が結ばれ、コミッタが納得した時にデリバリが宣言され、要求者がアクティビティの完了を宣言する(あるいは不完全だというフィードバックを行う)。

コミットメントのネットワークは、絶え間なく進化する組織構造の表現である。Kirkpatrick氏は、自身が最初に関与したセルフマネジメント組織であるMorning Starで、コミットメントが、時間とともに変化し、進化するネットワークを形成する様子を示した低速度撮影ビデオを紹介した。

厄介な問題である報酬について、氏は、Morning Starにおける給与の設定方法について説明した。同社では、その役割に対する業界標準を調査した上で、その給与範囲の最も高い金額を支給する。さらに、通常であればマネージャが負う責務(計画、編成、コーディネート、人員管理、指揮)を全員が行なっているので、その部分も加算される。

氏はさらに、行動の業務的側面について個人が同意できない場合に使用可能な、多段階からなる紛争プロセスについても説明(ワークショップではロールプレイによるデモも)した。このプロセスは、当事者同士による合意点の模索から始まり、ひとりの仲介者を含むステップ、仲介者グループによるステップへとエスカレーションされる(この2ステップの仲介者は、アドバイスすることは可能だが、決定を下すことはできない)。最終的には、拘束力のある決定権を与えられた者による調定が実施される。Morning Starでは、最後の調定プロセスが実施されるのは年に数回に過ぎず、大部分は自分たち自身で何らかの結論を出している、と氏は述べた。

Kirckpatrick氏の基調講演は、同カンファレンスの他の全講演と同じく、YouTubeで公開されている。

 
 

この記事を評価

採用ステージ
スタイル
 
 

この記事に星をつける

おすすめ度
スタイル

BT