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AWS re:Invent 2018での発表を振り返る

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原文(投稿日:2018/11/30)へのリンク

もしあなたが、Amazon Web Services(AWS)がローンチすべきサービスを使い果たしてしまったのではないかと心配していたのなら、今年のre:Inventはそれを安心に変えてくれただろう。先日終了したイベントで、AWSは、さまざまなカテゴリにわたる発表を立て続けに行なった。re:Inventの発表に“テーマ”があることはめったにないのだ。それでも大きな注目を集めたのは、マシンラーニングやデータベース、ハイブリッドクラウド、アカウント管理といったものだった。

計算関連の発表から始めよう。AWSは、仮想マシンのインスタンスタイプを新たに2つリリースした。EC2 A1インスタンスはARMベースのプロセッサを使用するもので、Linuxワークロードに適している。最大100Gbpsのネットワーク帯域を持った仮想マシンが必要な場合には、新しいC5nインスタンスが利用可能だ。ウォームアップなしで新しいVMを即座にスケールアップしたいEC2ユーザには、実行状態の(Amazon Linux)インスタンスを休止状態にしておいて、必要時に起動するという方法がある。VMが休止状態にある間は、ストレージとElastic IPに対する課金のみ支払えばよい。AWSはさらに、ハイブリッドコンピューティングエクスペリエンスを構築する意向を発表している。2019年後半まで待たなければならないが、AWS Outpostsは、AWSのサービスとインフラストラクチャを任意のデータセンタに展開することを目的としたものだ。詳細は不明だが、今後数ヶ月内により多くの情報が得られると思われる。

サーバレスコンピューティングは、re:Inventで存在感を増していた。AWSは、指定された関数に最大5つのパッケージを注入可能なLamda Layerを発表した。これにより、コンポーネントの共有が促進され、コア機能のパッケージを可能な限り縮小することができる。Lambdaユーザはカスタムランタイムにもアクセスできるので、C++やRustといった言語を関数に使用するという選択肢も開かれる。HTTP(S)要求を処理するLambda関数では、Application Load Balancerの使用も可能になった。関数指向ワークフローサービスであるAWS Step Functionsも更新され、DynamoDBやAWS Batch、Amazon SQS、Amazon SageMakerなどのサービスと新たに統合された。最後に、Lambdaがサンドボックス機能に使用しているKVMをベースとしたオープンソースの仮想化テクノロジであるFirecrackerが発表された

次はネットワーク関連の発表を見てみよう。AWS Global Acceleratorというグローバルトラフィックルータが導入された。このサービスは、Anycast IPアドレスをエントリポイントとして使用し、地理やアプリケーション状態、独自の重み付けルールなどの特性に基づいて、TCPあるいはUDP要求をAWSグローバルネットワークを通じてルーティングするものだ。新しいAWS Transit Gatewayサービスでは、単一のゲートウェイを使って、VPC(Virtual Private Clouds)をオンプレミスネットワークに接続できるようになった。これによってユーザは、ポイント・ツー・ポイントのアーキテクチャから、ハブ・アンド・スポークのアーキテクチャに移行することが可能になる。サービスメッシュは最近注目のトピックだが、AWS App MeshがAmazonからの回答だ。ベータ版ではEnvoyプロキシ(と、IstioではなくAWSコントロールプレーン)を使って、コントロールフローとマイクロサービスの可観測性を改善している。関連サービスであるAWS Cloud Mapは、アプリケーションコンポーネントの追跡によるサービスディスカバリを提供することで、実行時のサービス検出を支援する。

ストレージサービスは何年も前にAWSがスタートした場所であり、今日もそのサービスを進化させ続けている。AWSのオブジェクトストレージサービスであるS3には、いくつかの重要な変更が行われた。最初はIntelligent Tieringの導入だ。S3ユーザは現在、必要なデータアクセス頻度に基づいてストレージクラスを選択しているが、Intelligent Tieringは、アクセスパターンを監視してアクセス頻度の低いオブジェクトを安価なティアに移動する、新しいストレージクラスを提供する。S3内のオブジェクトに対するバルク操作を簡単にするプレビュー機能(S3 Batch Operations)も追加された。さらに、データ保持要件をサポートするため、ユーザの定義した期間オブジェクトを“ロック”する機能も追加されている。ファイルシステム派とオブジェクトストア派に対しては、AWSは2つの関連する発表を行なった。Amazon FSx for Lustreは計算集約型のワークロードに対して、マネージドな分散ファイルシステムを提供する。そしてAmazon FSx for Windows File Serverは、ファイルストレージを必要とするワークロード向けに、マネージドなWindowsファイルシステムを提供し、SMBプロトコル、NTFS、Active Directory統合をサポートする。大量のデータをオンプレミスからAmazon E3あるいはElastic File Systemに移行したいユーザには、新しいAWS DataSyncが提供される。

関連するトピックとして、re:Inventでのデータベースとアナリティクス駆動(analytics-driven)に関する発表を見てみよう。AWSはNoSQLデータベースであるDynamoDBに、2つの重要な変更を加えている。ひとつはDynamoDB Transactionsで、指定されたAWSリージョン内の複数のテーブルに対して、ACID準拠のトランザクションを提供する。もうひとつのDynamoDB On-demandは、標準的なDynamoDB機能をすべて提供しながら、事前の容量計画を必要としない、新たな料金モデルである。同社のリレーショナルデータベースであるAmazon Auroraには、Amazon Aurora Global Databaseというジオレプリケーション機能が新たに設けられた。これはAuroraのMySQLに適用されるもので、あるリージョンが機能停止した場合に即座にプライマリに昇格可能な、読み出し専用のレプリカを生成する。AWSはさらに、インフラストラクチャ管理の不要な時系列データベースであるAmazon Timestreamのプレビューを近日中に公開すると発表した。新たに提供されるAmazon Quantum Ledger Database (QLDB)は、不変(immutate)ログを提供するマネージドな台帳データベースで、近くプレビュー提供されるAmazon Managed Blockchainを補完して、ブロックチェーンネットワークのアクティビティをQLDBにレプリケーション可能にする。

データアナリティクスに目を向けると、AWS Lake Formation(プレビュー未提供)は、さまざまなデータソースからS3ベースのデータレイク(data lake)を生成するためのものだ。もうひとつのプレビューサービスである、Amazon QuickSight用のML Insightsは、異常検出や予測などの機能を提供する。データ処理に関しては、マネージドなKafkaクラスタ(ZooKeeperクラスタを含む)を提供するAmazon Managed Streaming for Kafka(プレビュー)が発表されている。

上にあげたサービス以外にも、AWSは、いくつかのアプリケーション指向の機能をローンチしている。コンテナベースのデプロイメントでは、AWS CodeDeploy for blue/green deploymentを使って、ダウンタイムを最小化することができる。AWS Transfer for SFTPは、データをAmazon S3バケットに取り込むための、可用性の高いマネージドサービスを提供する。マネージドなSFTPに興味のある人々とはほぼ重複しないと思われるが、ロボティックスに興味のあるユーザ向けには、大規模なロボットアプリケーションの開発、シミュレーション、デプロイを行うためのAWS RoboMakerが新たに提供される。最後のAmazon Personalize(プレビュー)は、マシンラーニングを使用して、リコメンデーションモデルの構築と利用のための機能を開発者に提供する。

モノのインターネット(Internet-of-Things)も今年のre:Inventで注目された分野のひとつで、一連のプレビューが発表されている。AWS IoT Eventsは、IoTセンサやアプリからのイベントの検出と応答を行うマネージドサービスで、数千種類のセンサーを対象としてイベントを検出する。AWS IoT Things Graphを使えば、デバイスとサービスを視覚的に結合したIoTアプリの開発が可能になる。一般的なデバイスタイプ用の構築済みモデルが含まれている他、独自のモデルの開発も可能だ。AWS IoT SiteWiseは、産業用機器と連動するためにデザインされたものだ。オンプレミスの産業データを、ゲートウェイ経由でAWSに格納し、分析することが可能になる。

マシンラーニングは間違いなく、今年のイベントにおけるAWSの重点分野であった。週の始めには、開発者ならば誰でも参加可能な“Machine Learning University”が発表された。続いてAWSは、Amazon SageMakerを中心としたAI/MLサービスに関する一連の発表を行なった。新設されたSageMaker Ground Truth機能が、マシンラーニングシステムのトレーニングに使用されるデータセットのラベル付けを支援する。ラベリングでは、アクティブラーニングによる自動化と、人が介入するAmazon Mechanical Turkが選択できる。SageMaker Neoは、一度トレーニングしたマシンラーニングモデルを任意のクラウドやエッジ内で実行可能にする新機能だ。さまざまなフレームワーク(TensorFlow、PyTouchなど)とハードウェアアーキテクチャ(ARM、Intelなど)をサポートする。限られたデータセットによる強化学習に関心を持つデータ科学者向けには、SageMaker RLがある。Gitリポジトリを使ってSageMakerノートブックを保存することも可能になった。その他のML関連の発表としては、光学式文字認識(OCR)用のAmazon Textractのプレビュー、任意のEC2(およびSageMaker)インスタンスにGPUアクセラレーションを追加するAmazon Elastic Inferenceなどがある。最後に、AWSは、AWSマーケットプレースのプロダクトとして、新たに“マシンラーニング”プロダクトのカテゴリを設けた。

発表の最後のカテゴリは、アカウント管理とベストプラクティスに関するものだ。AWS Control Tower(プレビュー)は、ブループリントによる安全なコンポーネントのデプロイを使用して、マルチアカウントAWS環境を簡単にセットアップできるようにする。同じくプレビューのAWS Security Hubでは、アカウント全体に対するセキュリティ警告の一元表示や、サービス構成の定期的なチェックが可能になる。アカウント内で使用されている商用ソフトウェアライセンスの管理に苦労しているのであれば、AWS License Managerが有効だ。ユーザが使用可能なアドオンサービスのカタログを制限したい企業には、AWS Private Marketplaceが役に立つはずだ。最後にAWS Well-Architected Toolは、AWSワークロードがベストプラクティスにマッチしていることを確認するためのセルフサービスエクスペリエンスを提供する。

 
 

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