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リーン原則を使って増員せずにデリバリを倍増する

原文(投稿日:2018/12/13)へのリンク

KeepeekのCEOであるThomas Larzillière氏はLean Digital Summit 2018で、急成長するソフトウェア企業がそのデリバリを倍増させる過程において、リーンの果たした役割について講演した。Keepeekでは、プルフローやPDCA(Plan-Do-Check-Act)、Red Binといったテクニックを駆使して問題解決にあたっている。改善では顧客への影響を最優先する。その結果、同社のスループットは著しく増加し、顧客満足度は向上し、NPSが改善された。

従来の一般的な改善活動は、Keepeekでは、生産性の面から十分なものではなかった。Larzillière氏によると、同社では当初、真の懸念事項を解決するというよりも、自分たちがそれまで持たなかった問題を修正する活動に多くの時間を割く傾向があった。その結果として、デリバリを改善したり、ユーザとのコミットメントを実現したりする自らの能力に疑問を持ち始めたのだ、と氏は言う。

リーンはツールボックスのようなもので、リーンアプローチには適用可能なさまざまなテクニックがある、とLarzillière氏は言う。企業のニーズに合ったテクニックを適用する必要があると同時に、効果的に組み合わせられるように管理しなくてはならない、というのが氏の意見だ。Keepeekではプルフロー、PDCA、Red Binというツールを採用した。

InfoQはLarzillière氏に、Keepeekのデリバリ改善におけるリーンの適用について、直面した問題と獲得したメリットを聞いた。

InfoQ: Keepeekでは、どのような問題に直面したのですか?

Thomas Larzillière: 当社は30パーセントの平均年間成長率で急成長している企業です。R&D活動からソフトウェアをデリバリするだけでなく、プロジェクト運営に関するさまざまなサービスを提供しています。具体的にはコンサルティングサービスやプロジェクト管理、Eコマースサイトを含む他社のカスタマアプリケーションと当社ソフトウェアとの統合などを行っています。

このような開発には多くの時間的投資が必要ですので、当社のチームは週ベースでやってくるプロジェクトの管理に忙殺されているのが実情です。6人のプロジェクトマネージャが80以上のオープンプロジェクトに関わったことも、過去にはありました。

InfoQ: Keepeekではリーンをどのように適用したのですか?その過程で直面した課題と、それに対処した方法についても教えてください。

Larzillière: 最初に苦労したのは、改善活動に優先度を付ける方法を見つけることでした。社員と話し合っていく過程で重要な問題の範囲は明らかになったのですが、それに優先順位を付けるのが難しかったのです。問題を調整できなかったのは、私たちが問題を反対方向から見ていたからです。

最初に実行したおもな活動は、私たちの視点を変えて、企業やユーザへの影響という観点から判断することでした。我が社は毎週3つの新プロジェクトに署名している – それならば、1週間に3つのプロジェクトをデリバリできなくては。ユーザが製品を気に入っているかどうか知りたい – それでは、プロジェクトの完了時に顧客満足度を調査しよう。

どちらの場合にも、達成すべき目標を設定しました。目標を達成できなかった場合は、その理由を自問し、改善するための対策を講じました。

この論理に従う手段として、PDCA(Plan Do Check Act\)のテクニックを導入することにしました。改善項目のリストは、当社のデリバリ基準に記載されている不一致の直接的な結果です。

この手法と合わせて、プロジェクトのアウトプットのペースを週3プロジェクト(TAKT)としました。これは、かんばん方式にヒントを得たプルフロー(Pull Flow)システムです。それまでの当社は、極めて高度な計画ツールを導入しようとしていました。これらのコンピュータツールは、よりよい将来的成果を予測可能にし、その達成を前提とするものでしたが、うまくいったことはありませんでした。せいぜい、納期に間に合わないことが事前に分かった程度です ...

これに対してプルフローシステムは、毎週のペースを課すもので、単純な等式に対する答です。つまり、私が毎週3つのプロジェクトにサインすれば、チームは毎週3つのプロジェクトを完結できるように、自らを管理しなければなりません。これが毎日のスタンドアップミーティングにおいて、デリバリチーム全体の関心事になります – この3つのプロジェクトをデリバリ可能にするためには、今週どのような手配をすればよいのか?

そして最後に、成果物の品質を向上するため、Red Bin手法を導入しました。チームは常々、プロジェクト仕様書の品質や欠如に対して不満を述べていました。特に開発者たちは、プロジェクトマネージャの作成する仕様書に改善が必要だと考えていたのです。これらの課題を客観的に把握するため、チェックリストを使用してよりよい作業標準を定義するようにしました。

次に私たちは、プロダクションチェーン全体で品質を保証する手段としてRed Bin手法を導入し、欠陥のある“パーツ”を迅速に識別し、タイムリに修正できるようにしました。プロダクションチェーン内の誰かが – 例えば仕様書の誤った情報によって – タスク完遂上の問題に直面するした場合、そのタスクにフラグを付けてRed Binに投げ込みます。これは、工場ラインで不良部品を見つけた場合のビンと同じ意味です。Red Binの中身は、インプットを提供する側のチームとタスク遂行の責務を持つチームによって同時に、毎日解析されます。問題の根本的な原因を特定し、即座にこのプロセスを適用することで、将来的に同じ問題が発生しないことを確実にするのです。Red Binに入ったアイテムの数は、品質向上を監視する上での優れたKPIにもなります。

InfoQ: リーンであることのメリットは何ですか?

Larzillière: 6ヶ月足らずの間に、毎週デリバリ可能なプロジェクトが2から3.5になったことです。

財務的な面で言えば、月当りのプロジェクトが60,000ユーロから80,000ユーロに拡大しました。増分は年間240,000ユーロで、売上高の8パーセントに当たります。

ユーザのインタビュー(Voice of Customer)では、顧客満足度のスコア(最大10)を6.5から8.1に向上させることができました。これは当社のNPSに対してプラルの影響を及ぼします。そして最後に、顧客のロイヤリティを築くという意味で、この同じインタビューから実際に問題を抱えていた3件のユーザを見つけて、彼らの問題に対処することができました。

InfoQ: InfoQの読者がリーンについて詳しく学びたいとすれば、どこを当たるとよいでしょうか?

Larzillière: そのまま利用できるようなレシピやヒントはないと思います。Dan Jones、Jim Wornack両氏が説明しているように(Lean Thinking、1996)、リーンとは心のあり方なのです。

重要なのは心の状態を維持することです。それには参考文献を読むことをお勧めします(Mike Rother氏の“Toyota Kata”、James P. Womack氏の“The Lean Tunaround”、Basecampチームの“Rework”あるいは“It doesn’t have be crazy at work”、さらにはHenrik Kniberg氏の“Lean from the trenches”)。カンファレンスに出席して、他の人たちの経験を学び、ベストプラクティスを共有するのもよいでしょう。Operaeのブログ(フランス語)や#hypertextua(フランス語と英語)も素晴らしい量です。特に後者は、英語の記事を探しているのであればお勧めです。

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