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Ocado Technologyにおけるレトロスペクティブ3.0

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原文(投稿日:2019/02/11)へのリンク

2018年12月にアリカンテで開催されたConferencia Agile Spainで,Toni Tassani氏は,Ocado Technologyで自身の所属するチームが,レトロスペクティブへのアプローチ方法の根本的な変革に挑戦した理由と,それがチームの関与性と継続的改善にいかに貢献したか,というテーマで講演した。

チームが経験した落とし穴の例としてTassani氏が取り上げたのは,スプリント毎に同じフォーマットを使うことで陳腐化した非生産的なレトロスペクティブ,あるいは非建設的な会話を長時間続けるレトロスペクティブである。これらは結果として,明確な改善や行動には結び付かない。Tassani氏によれば,チームはレトロスペクティブに強いつながりを感じている。集まって振り返りを行いたいという希望や要求がなくても,実施を義務と思っていることが多いのだ。

悪いレトロスペクティブでもやらないよりはまし,という考え方なのです。

振り返るべき事象がレトロスペクティブの実施理由になることは滅多にない。何よりもまず,レトロスペクティブの重要性はアジャイル憲章で,12原則のひとつとして言及されているのだ。さらに,指示されたスクラムフレームワークでは,セレモニーを行わないということは,スクラムを実践しないリスクを負うことになる,とされている。レトロスペクティブのないスクラムはスクラムではないのだ。

レトロスペクティブは前向きなプラクティスであり,デリバリを改善する手段だが,次のような予期しないリスクをもたらす場合もある。

  • 問題がチームメンバによって提起されたものであるため,その問題にリアルタイムで対処しなかったことに対する釈明会になる可能性がある。レトロスペクティブに提起されるということは,つまりは,優先度が高いと認識されていない問題であるのだから,チームが必ずしも取り組むとは限らないのだ。
  • チーム中心の問題にのみ注目して,組織的な障害が考慮されない。本当の根本原因が分析されず,部分的な問題解決が図られる。
  • プロセスを文面通り(à la letter)たどるために,レトロスペクティブがポストイット劇場になる。アジャイルなことをしているとチームは実感するが,それが改善につながることはない。
  • チームが科学的手法に基づく実験の活用に取り組んだ結果,実験が漫然と使われて,目に見える改善に結び付かない。

このような状況に対処するためにTassani氏は,レトロスペクティブを必須ではなく,オプションとしてアプローチすることを提案する。さらに氏は,アジャイルレトロスペクティブの本質である継続的改善に注目して,確立された既知の継続的改善アクティビティをカンバンから借用するか,あるいは新たに作り出すことを提案している。氏が活用を提案するアクティビティは,POPCORNボードと,Toyotaの改善KataおよびコーチングKataだ。POPCORNは,障害を可視化し,改善をトラッキングするためのカンバンボードである。カンバンの各列とステップには,"問題と所見","オプション","可能な実験","コミット済","新行中","レビュー","次"という名前が付けられている。チームはアクティビティをデザインして取りまとめ,適切であるものを交互に実施することが望ましい。

陳腐化したレトロスペクティブを盛り上げるのは,チームにとって大きな課題である。さまざまな記事の多くの著者が,フォーマットの変更や新たなアクティビティの導入,あるいは期間や場所といったパラメータの変更を提案している。Tassani氏はスクラムやアジャイル憲章の原則,あるいは単なるアクティビティの活性化といったものを越えて,レトロスペクティブのレトロスペクティブを行うことを提案する – レトロスペクティブを行わなくても罪悪感を持つ必要はないし,例えばチームタイムに置き換えても構わないのだ。この時間を,一緒にカンファレンスに参加したり,あるいはカンファレンスを見たりして,新たな方法で知識の向上や共有を行うために使うのもよい。

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