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企業規模を問わず広がるKubernetesの利用 - CNCFの調査結果より

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原文(投稿日:2020/03/14)へのリンク

Cloud Native Computing Foundation(CNCF)の調査によると、Kubernetesとコンテナの採用が、特に運用環境において高まりを見せている。この傾向は、企業を対象として新たに実施された、VMwareのState of Kubernetes 2020レポートの結果とも一致する。 

CNCFの調査は自身のコミュニティを対象に実施され、1,337の回答を集めた。37パーセントが北米、38パーセントは欧州からの回答だ。44パーセントの回答者は、1,000人以上の従業員を持つ企業で従事しており、3分の2がソフトウェアないしテクノロジ企業で働いている。State of Kubernetes 2020レポートの回答者層は違う。VMwareは247人の個人を対象とする外部団体に調査を依頼している。参加者はすべて、1,000名以上の従業員を持つ企業からである。35パーセントの回答が、1,000名以上の開発者を抱える企業からのものだ。State of Kubernetesレポートは北米の回答率が高い(回答者の68パーセント)が、産業別ではより幅広く、テクノロジ企業の従事者は22パーセントに過ぎない。

どちらの調査でも、"増加"の傾向が明らかになっている。運用システムにおけるコンテナの使用は、2016年のCNCF調査の23パーセントから、2019年は84パーセントへと大幅に増加した。コンテナ数も増えた。2018年には、56パーセントのユーザが249コンテナ以下を運用していたが、それが反転して、55パーセントのユーザが250以上、20パーセント近くは5,000以上のコンテナを運用中と回答している。これらコンテナの運用の中心となる選択はKubernetesだ。78パーセントが業務で使用していると答えており、2018年の58パーセントから増加している。CNCFのレポートでも、2~20のKubernetesクラスタを実システムで運用すると回答したユーザが10パーセント増加した。クラスタ数の平均は2から5の間で、43パーセントのユーザがこの範囲である。

出典: CNCF Survey 2019

VMwareのState of Kubernetesレポートによると、大企業でも同様な傾向が見られる。59パーセントの回答者がKubernetesを業務で運用していると回答しており、33パーセントが26以上、20パーセントが50以上のクラスタを使用している。このレポートからは、いまだ"導入早期"であるという印象も受ける。

回答者の半数以上(57パーセント)が10Kuberneresクラスタ以下を運用しており、60パーセントはコンテナ化したワークロードの半分以下をKubernetesで運用している。コンテナ技術のアーリーアダプタたちは、他のコンテナオーケストレーションツールを使用している(あるいはオーケストレーションを使用しない)。これらの環境もまだ運用されているのだ。

CNCF調査の回答では、Kubernetesデプロイメントの詳細も明らかになっている。クラスタのIngressはnginxおよびHAProxyが主流を占めており、それぞれ62パーセントと22パーセントの利用率である。注目されるのはEnvoyで、3番目に人気の選択肢となっており、29パーセントが将来的な採用に向けて評価中である。Kubernetesアプリケーションをパッケージ化にはHelmの人気が非常に高く、他にはこれといったものがない状況である。アプリケーション間の分離手段の選択肢では、ネームスペース、およびクラスタ分離が多く使用されている。

出典: CNCF Survey 2019

Kubernetesユーザにとって、パブリッククラウドの持つ役割は大きい。CNCFのレポートでは、Amazon EKSとGoogle Kubernetes Engine(GKE)がマネジメントソリューションのツートップとなっている。62パーセントがパブリッククラウドのホスティングを利用しているが、この率は2018年(77パーセント)よりも低下している。これは2019年に"ハイブリッドクラウド"が新たな選択肢となったためと思われ、38パーセントの回答を獲得している。State of Kubernetesレポートの様相はこれとは異なっているが、それは回答がすべて大企業からのものであるためと思われる。回答の64パーセントがKubernetesをオンプレミスでデプロイしており、31パーセントは複数のパブリッククラウドベンダを使用している。

出典: The State of Kubernetes 2020

今年のCNCF調査では初めて、回答者にサービスメッシュの使用に関する質問を行った。サービスメッシュを実際に運用しているのは18パーセントに過ぎないが、47パーセントが将来的な使用に向けた評価を行っている。運用システムではConsulが最も広く使用されており、Istioが最も多く評価されている。Istioチームは先週、同社のソフトウェアを使用しているすべての商用サービスに関する情報をツイートした。これによって今後さらに幅広く採用されることが予見される。The New Stackは先日実施した読者投票を通じて、サービスメッシュの採用に関する新たな洞察を明らかにしている。サービスメッシュを運用している読者の60パーセントが、分散システムのアプリケーショントラフィック管理にサービスメッシュは不可欠なものだと考えている一方で、サービスメッシュを評価中のユーザで同じ考えを持つのは30パーセントに過ぎず、セキュリティや可観測性の方を重視している。

出典: The New Stack

今年のCNCFの調査で注目されたもうひとつの点は、サーバレスコンピューティングだ。41パーセントがサーバレス技術を使用していると回答しているが、質問から判断すると、これは単なるファンクション・アズ・ア・サービス(FaaS)プラットフォームを指しているようだ。さらに20パーセントが、今後12~18ヶ月以内の導入を計画している。大部分がFaaSをホストするプラットフォームを使用しており、AWS Lambdaが最も人気を集めている。インストール可能なファンクションプラットフォームとしては、Knativeが好まれている。サーバレス技術の導入比率(41パーセント)は、先日のO'Reillyによる調査の結果(40パーセント)とほぼ同じだ。サーバレスユーザは、運用コスト、自動スケール、メンテナンスの簡便性を評価する一方で、課題としてスタッフの教育、ベンダロックイン、デバッグと管理の難しさを挙げている。

出典: CNCF Survey 2019

CNCFとState of Kubernetesのいずれの調査でも、コンテナやKubernetesを使用する際に直面する課題に注目している。CNCFの結果では、文化面での課題とセキュリティ上の懸念が群を抜いている。トレーニングの欠如が4番目に多い回答である。State of Kubernetesでは回答者の67パーセントが、"経験と専門知識の不足"をKubernetes管理の最大の課題として挙げている。Kubernetesディストリビューションの選択基準のトップは"使いやすさ"であり、40パーセント近くが最大の課題として"複雑さ"を挙げたCNCFユーザとも呼応している。

出典: CNCF Survey 2019

State of Kubernetesの報告ではさらに、Kubernetesを導入する際に企業が直面する意思決定上の課題も明らかにされている。回答者の83パーセントは運用上の選択に複数のチームが関与していると答えており、18パーセントはCレベルの役員の参画があったとしている。興味深いのは、開発チームが他のどのチームよりも関与していることだ。一部の企業では、誰のためにどのような問題を解決するのかを決める前に、テクノロジの選択が行われたことも明らかになった。

テーブルにつく利害関係者の数が増えれば、不満も多くなる。調査に回答した40パーセントが、Kubetrnetesディストリビューション選択時の問題として、内部調整の不足を挙げている。Kubernetesが運用担当者と開発者の距離を縮める機会を生んでいることは明らかだが、多くの企業がこの点について完全には理解していない。

State of Kubernetesのレポートで明らかになったもうひとつの不整合は、開発者の生産性を妨げるもの関してだ。開発者の29パーセントが、インフラストラクチャへのアクセスを最大の問題として挙げているのに対して、管理層で同じことを答えたのはわずか6パーセントだった。逆に、49パーセントの管理層は、開発者の最も大きな問題を新技術の統合だとするのに対して、これに同意する開発者は29パーセントに過ぎない。

いずれの調査でも、Kubernetesとクラウドネイティブを使用することによるユーザのメリットに注目している。CNCFの回答者は、デプロイメント時間の早さ、スケーラビリティとアベイラビリティの改善、クラウドポータビリティの向上をメリットとして認識している。State of Kubenretesレポートに参加した企業がメリットとして挙げているのは、リソース利用率の改善、ソフトウェアデリバリの短期化、クラウドコストの削減などだ。

出典: The State of Kubernetes 2020

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