テキストおよび音声ベースのAIアシスタント開発を自動化するための、カスタマイズ可能なオープンソースのマシンラーニングフレームワークであるRasaのバージョン2.0がリリースされた。対話管理、トレーニングデータのフォーマット、インタラクティブなドキュメントが大幅に改善されている。最新リリースではさらに、導入のための学習曲線が短縮化される一方で、習熟したユーザ向けの設定オプションの拡張も行われている。
ルールポリシ
Rasa Open Source 2.0では対話ポリシの設定が簡略化され、ルールを使用したポリシとマシンラーニングを使用したポリシが明確に区別されると同時に、ビジネスロジックの適用も容易になった。これまでのルールベースのロジックは、3つないしそれ以上の対話ポリシの組み合わせによってコントロールされていたが、新たなRulePolicyにより、フォームの実装、アクションからインテントへのマップ、フォールバックロジックの指定が、ひとつのポリシでできるようになった。
フォームのアップデート
formsの実装がRasa SDKからRasa Open Sourceライブラリに移された。これによってPython Rasa SDKが軽量になると同時に、基本機能がメインライブラリに移動したため、アクションサーバを新たなプログラミング言語で実装する作業も従来より容易になっている。
YAMLトレーニングデータ
トレーニングデータとしてYAML が新たにサポートされた。これには3つのメリットがある — 追加ユーザやタイムスタンプなど、トレーニングサンプル内で独自のメタデータのサポートが可能になったこと、長大なファイルを短くモジュール化したファイルに分割できるようになったこと、応答セレクタ内でリッチなメディアをサポートできるようになったことだ。
推奨される構成
新規プロジェクトの初期化時にデフォルトのNLUパイプラインを推奨するようになり、インストールが簡単になった。経験を積んだユーザならば、推奨構成をオーバーライドして、パイプラインをさらにカスタマイズすることも可能だ。
検索インテント(Retrieval Intents)
検索インテントはRasa Open Source 1.3で試験機能として導入されたもので、チャットやFAQのような1回ターンのインタラクションを簡単に処理することができる。Rasa 2.0では検索インテントのフルサポートが提供されており、イメージやボタンなどのリッチなメディアを応答に加えられる他、Rasa Xも完全にサポートされている。
ドキュメントとRasa Playground
2.0のリリースと並行して、Rasaのドキュメントのテーマが刷新され、情報アーキテクチャが更新された。新しいレイアウトは、初心者とリピータの両方を考慮して、関連記事がより見つけやすくなるように設計されている。
新しいドキュメントには、Rasa Playgroundの追加も含まれている。Playgroundを使えば、Rasa Open Sourceを予めインストールしなくても、ブラウザ内で新しいプロジェクトを直接プロトタイプすることが可能になる。プロトタイプが完成すれば、プロジェクトファイルをダウンロードして開発を続けることができる。
Rasa Open Source 2.0へのマイグレーション
既存のアシスタントをアップグレードするユーザのために、1.10から2.0へのマイグレーションガイドもリリースされており、トレーニングデータをマークダウンからYAMLの変換する方法、新しいRulePolicyを使うための対話ポリシとトレーニングデータのアップグレード方法などが紹介されている。
その他、Rasa Open Source 2.0は、開発者によるAIアシスタントの改良を支援する無償のクローズドソースUIツールであるRasa Xと完全な互換性を持っている。Rasa Xには検索インテントのサポートが追加されており、通常のインテントとともにUIに表示される。マルチメディアレスポンスの確認や編集も可能になった。
Rasa Open Source 2.0はGitHub上で公開されており、pip経由でインストールが可能である。