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Haskellの採用促進を目指すHaskell Foundationが発足、20万米ドルの資金を調達

原文(投稿日:2020/12/26)へのリンク

Glasgow Haskell Compilerのリードデザイナを務めるMicrosoft ResearchプリンシパルリサーチャのSimon Peyton Jones氏が先頃、Haskell Foundationの設立を発表した。Haskell Foundationは、ツールやライブラリ、教育、研究といったHaskellのエコシステムのサポートを通じたHaskellの採用拡大を目的とする非営利組織である。すでに企業スポンサから20万ドルの資金を集めた同財団には、言語に関する技術的な議題と優先度を設定する理事会(board of directors)とエグゼクティブディレクタが加えられる予定である。

Haskell Foundationは、Haskellの採用促進とHaskellエコシステムのサポートに尽力する組織である。Haskell eXchange 2020での発表の中でPeyton Jones氏は、新たなHaskell組織の設立に至った経緯について説明した

Haskellエコシステムに新たな組織が本当に必要なのでしょうか?[…] 純粋な関数型プログラミング言語としてのHaskellへの確固たる支持により、Haskellは実用開発においてますます広く採用され、言語としての成功を勝ち得ています。現在では多数の企業が、ミッションクリティカルな分野でHaskellを使用しています。[…] この大成功が新たな課題を生み出しているのです。不足している4つのニーズ[を挙げましょう]。

  • 完全なユーザエクスペリエンス
  • 技術的なインフラストラクチャとグルー(glue)
  • コミュニティをつなぐグルー
  • リソースと資金

Peyton Jones氏は、Haskellユーザエクスペリエンスのおもな要因として、インストール、ドキュメント、エラーメッセージ、ライブラリ、アップグレード、プラットフォームのサポート、教育、トレーニングなどを挙げた。Haskellコミュニティにはこれらの要因のひとつ、あるいは複数に取り組んでいるグループはあるが、すべてのステージと側面を網羅するユーザエクスペリエンスに対応しているものは存在しない。Haskellコミュニティのメンバが以前、Haskellのユーザエクスペリエンスに悪影響を与える問題点について報告している。

Haskellをミッションクリティカルな方法で使用するためには、大規模なツールセット(インストーラ、パッケージマネージャ、プロファイラなど)の提供する統合的エクスペリエンスによるメリットが必要になる。分散して存在するグループの活動を統合し、より強力なものにする上で、中心となる機関の果たすことのできる潜在的能力を、Peyton Jones氏は次のように表現している。

これらのことには、それぞれに多くの関心を持つ人たちがいるのですが、何らかの理由によって […] さまざまな小グループの活動の隙間に落ちてしまうことが往々にしてあります。いずれも正しく行われるべき重要なことなのですが、すべてを正しく行うのは本当に難しいのです。

時間が掛かりますし、たくさんのボランティアも必要です。[…] すべてに対して[活動を]続けるのは困難です。[…] あるグループが偶発的に、別のグループの成果を台無しにしてしまうことも珍しくはありません […] Haskell Foundationはコミュニケーションを改善するためのメカニズムを提供することで個々のグループにつながりを持たせて、より生産性の高い活動を可能にします。

Haskell Foundationはさらに、信頼できる明確な寄付対象としての役割を果たすことで、行動範囲や知名度の低い個々のグループよりも効率的な資金確保を可能にする。すでにGitHubやIOHKObsidianSkillsMatterTweagWell-Typedといった企業スポンサから20万ドルの調達に成功しており、さらに追加される予定もある。暗号通貨とブロックチェーンに関するアプリケーションを開発するIOHKは、現時点で最大のコントリビュータであり、12万5千ドルの寄付を行っている。

財団の運営は、目標達成への戦略的リーダシップと方向性を決定する理事会によって行われる予定である。理事会はまた、世界に向けてHaskellコミュニティを代表する存在でもある — スポンサや公的機関(ACM、標準委員会)、その他の関連機関と連携し、資金の授受と確認を行う。財団は暫定理事会からスタートして、常任理事の選出を行う。その後は事務局長を雇用し、技術的議題の承認を行う。立候補を考えているのならば、2021年1月11日(月)までにnominations@haskell.foundationに申請書を提出すればよい。

Peyton Jones氏は、新たな財団はコミュニティの強化を目的とするものであり、コミュニティ活動を増幅する機能を目指しているという事実を、繰り返し主張している。既存のグループに取って代わることが目的ではなく、より効率的に活動できるように支援するための財団であることを、氏は次のように詳説する。

この新たなエンティティを、誰のでもない、私たちのものとして考えて頂きたいと思います。他の誰かが私たちに向かってやっていることではないのです。[…]
ぜひともすべてを肯定的に考えて、あなたが誇りを持てるような、参加することに興奮を覚えるようなものに形作ってみてください。ニーズに必ず応えてくれると思います。失敗する可能性はありますが、皆が力を合わせさえすれば、成功する確率の方がはるかに大きいと思っています。

FP Completeのエンジニアリング担当バイスプレジデントで、複数のHaskellオープンソースプロジェクトを立ち上げているMichael Snoyman氏は、慎重かつ楽観的に財団を歓迎している

私は生来、悲観主義者で、まず最初に最悪の結果を考えてしまいます。そういったものはたくさんありますが、いつもそうなのです。ですが、HFは、Haskellコミュニティの長い歴史の中で初めての活動であり、すべての人たちをテーブルに付かせて、Haskellエコシステムの状況を改善しようとしているのです。

Glasgow Haskell Compiler (GHC) は1990年代の始めに、英国政府が資金提供する学術研究プロジェクトの一部として開始された。その学術的ルーツに忠実でありながらも、Haskellは、長年にわたってオープンソースや商業アプリケーションでの利用を増やし続けている。ElmフロントエンドフレームワークはHaskellで記述されている。Facebookも、同社がアンチスパムプログラムの実装に使用するデータアクセスライブラリであるHaxlをメンテナンスしている。

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