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チームのコミュニケーションと心理的安全性を向上するには

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原文(投稿日:2021/06/17)へのリンク

チームの特徴的なコミュニケーションスタイルをマッピングすることによって、コミュニケーションの改善や心理的安全性(psychological safety)の向上、チーム内の軋轢の軽減が可能になり、意見の対立はより生産的なものになる。LokulusのアジャイルコーチであるPaul Harding氏と、Booking.comのアジャイルコーチであるElly Griffith-Ward氏は、>A Day of Organisational Psychological Safety by Aginextで、コミュニケーションスタイルと心理的安全性に関するワークショップを開催した。

コミュニケーションのスタイルは人それぞれだが、Griffith-Ward、Harding両氏は、常日頃から対話してる人のコミュニケーションスタイルはおろか、自分自身のコミュニケーションスタイルにさえ気付いていない人たちが少なくない、ということを発見した。

氏らはワークショップで、DISCメソッドを使ったコミュニケーションスタイルのマップを作成した。DISCとは次の意味である。

  • 主導(Dominant) — 赤
  • 感化(Influential) — 黄
  • 安定(Steady) — 緑
  • 慎重(Consientious) — 青

ワークショップの参加者を、質問の結果に基づいて、これら四文円のひとつに位置付けたのだ。このマップは、自身がどこにいるのか、コミュニケーションの相手はどこなのか、を理解する上での手助けとなる。

Harding氏が説明するように、我々がどのようにコミュニケーションを取っているのか、どのように取りたいと思っているのかを理解すれば、自分自身だけでなく、他の人たちのことをもっとよく理解できるようになる。それによって、お互いの強みを発揮することが可能になるのだ。

例えば、情報を消化するための時間が必要な場合に、全気筒フル回転の人と一緒に仕事をすれば、圧倒される部分があるかも知れません。その状況に従ってコミュニケーション手段を変えることができれば、個人間での心理的安全性を得る上で役に立つでしょう。理解を共有することが大切なのです。

DISCモデルはまた、意見の衝突を軽減し、意見の対立を生産性へと昇華することも可能にする。Harding氏によれば、衝突の根底にあるのは相互のコミュニケーション方法に対する無理解であり、コミュニケーションスタイルのマッピングは、コミュニケーションスタイルに対する双方の期待を設定する上で有用なものとなる。

Paul Harding氏に、DISCメソッドによるコミュニケーションと心理的安全性の向上について話を聞いた。

InfoQ: DISCモデルとはどのようなものでしょう?

Paul Harding: まず最初にお話したいのは、理想のモデルというものは存在しない、DISCモデルは完璧な答や適合性を提供するものではない、ということです。モデルの結果は、参加者に対して行う一連の質問がベースになります。これらの質問に対する答は、その時の参加者のコミュニケーションスタイルを表現したものです。ですから、時とともに変化する可能性があります。一般的に、参加者は、"主導"、"感化"、"安定"、"慎重"という4つのいずれかに当てはまるコミュニケーションスタイルを持っています。それぞれの領域に、そのコミュニケーションスタイルの人たちが好む、あるいは好まない、いくつかの特質や特徴といったものがあります。

インターネット上にはDISCに関する情報や、DISCプロファイリングテストを提供するサイトがたくさんあります。"What is DISC?"には、そのハイレベルな要約があります。より詳細な情報については、Thomas Erikson氏の著書"Surrounded by Idiots"で読むことができます。

InfoQ: DISCモデルはどのような目的に使用できるのでしょうか?どのようなメリットがあるのですか?

Harding: 何よりも重要なのは、自分が四分円のどの象限にいるのか、他のチームメンバはどこにいるのかを理解した上で、この情報をコミュニケーションの時に用いる、ということです。

例えばプロファイルから、あなたが"緑"に属する人で、会話したい相手が"赤"に属する人であることが分かっていれば、そのような会話の準備をしておくことが可能になります。"赤"は藪を叩いて回るようなことはせず、情報を直接的に提供されることを望みます。そして"赤"からのフィードバックは、迅速かつ行動を基盤とするものであることが多いのです。ですから"緑"であるあなたは、これに備えなければなりません。

こういった点がメリットです。"緑"であるあなたは、"赤"によって攻撃されているように感じるかも知れませんし、直接的なアプローチから逃れたいと思うかも知れません。一方で"赤"の側では、"緑"が自分と繋がりを持とうとしている理由や、自分自身がするような素早い対応をしない理由が分かるようになるでしょう。

私は先日、行動がこのモデルの"主導(赤)"領域に属するプロダクトオーナと一緒に仕事をしました。すぐに行動が起こされなかった時には、彼のフラストレーションを感じることができました。一方で、エンジニアリングチーム — 一般的に"安定(緑)"と"慎重(青)"が多い — が即座に対応しないことを理解できていないようでしたが、このマッピングを見た後にには、自身のフラストレーションについてより理解し、自身の期待を設定することが可能になったのです。

InfoQ: チーム内の軋轢に対処する上で、何か提案はありますか?

Harding: ひとつの方法は、"激しい(fierce)フィードバック"をやり取りできるように、チームをサポートすることです。Susan Scott氏は、激しい会話を、自分の背後にある自分自身を表に出すひとつの方法である、としています。激しい会話というのは、"頑強で、強烈で、強く、パワーがあって情熱的な"(Fierce Conversations、Susan Scott、2017)会話のことです。チームに対して、このようなフィードバックの受け入れを奨励するということは、チームが対立に迅速かつ効率的に対処して、双方が前向きな結果を得ることが可能である、ということに他なりません。

チームがお互いをより深く理解することによって、心理的な安全性はより高いものになり、対立の減少とチームの幸福感の向上をもたらすことになります。この分野では、Personal MapsMarket of Skillsなどのアクティビティの実施も有用です。

InfoQ: チームのコミュニケーションを改善する上で、マネージャやコーチにはどのようなことができるのでしょうか?

Harding: マネージャやコーチがチームに近過ぎることによって、コミュニケーション上の問題を指摘できなくなる場合があります。チームから少し距離を置く時間を確保してください。何が見えているか、何が見えていないかを、自身に問いかけてみるのです。森の木々が見えていますか?

チームが同じ場所にいる場合は、会話の様子を見たり、チームの親密な関係を耳にすることができるので、これは比較的簡単なのですが、リモート作業している場合は、ツールから目を離さないことが必要になります。プライベートなメッセージ交換ではなく、目に見える形で、積極的に、共同作業ができているでしょうか。例えば、MS Teamチャネルのオープンコールを使用していますか?

ミーティングにおいては、発言の内容よりも、コンテンツの展開状況に注意する必要があります。メッセージがどのように送られて、どのように受け取られているのかを検討してください。ミーティングにはオブザーバを招待しましょう。自分たちが見えていないものを指摘してくれるかも知れません。

チームのDISCプロファイルにアクセスできれば、あなたが目にしている行動に対する洞察を与えてくれる可能性があります。改善可能な部分が見つかったならば、あなたのコーチングとメンタリングのスキルを活用したフィードバックをタイムリに提供しましょう。目標は、チームの個人個人が、他のメンバとよりよい仕事ができるように、自身の行動を適応させることに置くべきです。

Ellyはインフルエンサ(黄)で、私は安定志向(緑)、そして私たちの間のコミュニケーション方法について考えなくてはならない、としましょう。Ellyの自発的で前向き、外交的な特性は、私の忍耐強さ、優柔不断、順応性といった特性とは相容れないものです。私が計画をまとめると、Ellyがそれに手を加えるので、自分の計画が批判されているような気がします。彼女にその気はないのですが、その時の私にはそう感じられるのです。今回説明した方法を使えば、そこで起きていることを互いに理解して、双方のアプローチを合わせることが可能になります。このような行動をチームで認識し合えるようになれば、望ましい方向に進むことができるでしょう。

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