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OracleがJava LTSサイクルの2年への短縮を提案

原文(投稿日:2021/10/08)へのリンク

Java 17のリリースに合わせて、OracleのJava Platform GroupでJavaのチーフアーキテクチャを務めるMark Reinhold氏が、Java LTS(Long Term Support)のケイデンス(cadence)を現在の3年から2年に短縮する、という提案をしている。Java 11から続いた3年というLTSケイデンスは、Java 17のローンチが最後になる、ということだ。この提案は、受け入れられる可能性が高いようだ。OpenJDKダウンストリームディストリビュータであるMicrosoft、Amazon、Azulが賛意を示す一方で、Red Hatは"不満はあるが賛成"である、と述べている。

Reinhold氏はOpenJDKメーリングリストでも2年のLTSケイデンスを提案した上で、その動機として、Javaの非LTSリリースの採用が期待に達していないことを述べた自身のブログ記事に言及している。

ポピュラーなIDEやツール、フレームワーク、ライブラリの多くが、6か月以内にリリースされた最新のフィーチャーリリースをサポートしています。[...] 開発者は [...] しかし、それらをすぐに使用できない、というフラストレーションを抱えています。というのは、彼らの依頼主が、3年毎の [...] LTSリリース以外へのアプリケーションのデプロイを認めようとしないからです。

ケイデンスの短縮には2つのメリットがある、と氏は見ている。ひとつは、3年毎ではなく2年毎というLTSリリースに合わせることでJavaの新機能をより早く提供できるようになる、という点であり、もうひとつは、6か月周期でローンチされる非LTSリリースがより魅力的なものになる、という点である。

Oracleはこれまで、非LTS Javaリリースが広く普及することを期待していた。Java 12のリリース直後、QCon London 2019で行われたJavaパネルディスカッションでは、OracleのJava SEプロダクトマネージャのDonald Smith氏が次のように述べている。

Java 12と13では、新たなケイデンスでリリースが行われることになると思います。[...] 6か月のケイデンスに乗ることが実際には極めて現実的で、非常に簡単なことなのだ、と証明できると考えています。

今回の提案は、JDK Update Projectの仕事を増やすことになるだろう。さらにOracleは、新たなケイデンスの下でLTSリリースをサポートする期間をどうするのか、という判断も下さなくてはならない。

今回の提案を受諾する、あるいは拒否する上で、公式な期日は設定されていないようだ。

Amazon Web Services(AWS)のプリンシパルソフトウェアエンジニアであるVolker Simonis氏は、今回の提案に賛意を示している

Amazon Correttoチームを代表して、新たなJDK LTSリリースケイデンス提案に対する支持を表明したいと思います。OpenJDKプロジェクトの活気を持続し、開発者と企業双方にメリットをもたらすものとして、今回の提案は正しい一歩だと考えています。OpenJDKコミュニティによって受け入れられるならば、Correttoチームはそれを進んで支援するとともに、OpenJDK Updates Projectにおける新たな役割を喜んで引き受けます。

Microsoftでプリンシパルエンジニアリンググループのマネージャを務めるMartiji Verburg氏も、提案に同意する

当社も同じく、OpenJDKビルドに関する2年間のLTS提案を支持します。エンドユーザエコシステムの大部分がLTSの高度な安定性を望んでいる現状において、最新化の取り組みを促進する上で優れた方法だと思います。Microsoftは、今後のLTSアップデートプロジェクトが、その自然なライフサイクルを通過できるように、引き続き支援することを約束します。

AzulのCTOであるGil Tene氏は、新たなケイデンスへの支持を次のように書いている。

Azulを代表して、OpenJDKのLTSケイデンスを短縮化するという、今回の提案を強く支持することを表明します。私たちの経験では、ほとんどの運用環境において、バグ修正やセキュリティアップデートを継続しつつ、[...] それ以外の変更ないし拡張は一切強制されない(あるいは最小限に留める)という、[...] 一定の期待寿命と安定性が必要とされています [...]。提案されているLTSリリースははこの目的を十分満たし、安定性と予測可能かつ現実的スケジュールの両方を提供するものです。[...] Azulは [...]、LTSリリースの頻度増加に伴う新たな負担を、進んで受け入れたいと思っています。

Red HatのOpen Source Java担当テクニカルリーダのAndrew Haley氏は、唯一の反対意見を述べている

この議論において明らかに欠けているのは、ISVとエンドユーザの存在です。[...] すべての人たちに影響する決断を下す前に、広範なJavaコミュニティから意見を集めるべきです。エンジニアとしての視点からは、2年間というLTSサイクルへの移行は大いに賛同できるものです。[...] ライブラリが新たなJavaリリースで動作することを検証するには数か月を要します。その頻度が増えることを歓迎する人は、誰もいないでしょう。[...] ユーザの少ない"LTS"バージョンを頻繁にリリースしたいとは思いません。それはJavaコミュニティにフラグメンテーションを起こすことになるでしょう。それだけは絶対に避けなくてはなりません。[...] ですから私としては、必ずしも賛成ではありません(nervous yes, but)。

今回の提案に対する議論は、現在は密室内で進められているようだ — OpenJDKメーリングリストの最後のリプライは9月21日で、Reinhold氏のツイートに対する最後のレスポンスは9月15日で途切れている。

Oracleは現在、Project LoomProject ValhallaProject PanamaProject Amberなど、2023年のJava LTSリリースに向けた重要な機能開発を目的とする、いくつかの長期的なJavaプロジェクトに取り組んでいる。この考えが今回の提案に影響しているかどうかは明らかでない。

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