11月1日,ソフトウェア技術者で著作者である John R. Fox 氏が "アナログ世界におけるデジタルワーク (Digital Work in an Analog World)" という著書を出版した。副題の "応用心理学によるソフトウェア工学改善" が示すようにこの書籍は,実はソフトウェア工学を考察したものではない - "アナログ" ということばは,ソフトウェア工学の非技術な面すべてを指している。本書が注目しているのはむしろ,技術者の心理学的側面や実務に関連する部分なのだ。
現実のソフトウェアエンジニアリングプロジェクトでは,課題の多くは対人的な要因に関連している。プロジェクトの定期的リファクタリング作業やアーキテクチャレビューにもっと多くの時間を割くことについて,ソフトウェアアーキテクトがいかにマネージメントを説得するか,というようなものだ。他のメンバをやる気にさせるために,深い技術知識よりも対人的スキルがソフトウェア技術者に求められることが往々にしてある。このような能力は一般に過小評価されていて,学校や大学では習得できない。
これこそが正に,本書が埋めようとするギャップなのだ。本書は特定のグループやステークホルダのものではないが,対象とする読者は,
プロジェクトマネージャ,開発者,ビジネスアナリスト,OA スペシャリスト,その他管理担当者 - ソフトウェア開発にこれらいずれかの立場で参画する方々です。
冒頭で著者は,応用心理学の基礎概念について説明している。次にソフトウェアエンジニアリングにおけるさまざまなパーソナリティを紹介し,一般的概念をソフトウェアエンジニアリングのコンテキストにマップする。さらにはソフトウェア評価や計画の問題,あるいは非現実的な期待などといった,ソフトウェアエンジニアリングにおける主要な問題を提示する。
本書では,開発組織内で見られる心理学的要因をいくつか取り上げている。具体的には次のようなものだ。
- 報酬と目標,阻害要因
- ストレス
- 認知型マルウェア
- 影響力,説得,社会的圧力
- アナログインテリジェンス
- 問題解決,意思決定,創造性
さらに氏はリーダーシップ,文化と性別,チーム,人材プールといった人的側面について説明をしている。
著者は心理学的概念について,ソフトウェア技術業界における重要な手段であるとは考えているが,しかし銀の弾丸であると主張している訳ではない。
ソフトウェアプロセスに心理学的概念と原則を適用することは,この産業の針を正しい方向に動かす上で,おそらくはほんの少し,役に立つでしょう。心理学の理解を深めることが有益であると信じてはいますが,それが銀の弾丸であると主張するつもりはありません。むしろ銀の弾丸が存在すると信じること,それ自体が問題の大きな部分を占めていたのです。
本書は社会的スキルのすべての面をカバーしようというのではないが,ソフトウェア開発に対する心理学の影響について多くの洞察を与えてくれる。
興味を持った読者のために: 全 313 ページの本書は Amazon.com Web サイト から 19.99 US ドルで購入可能だ。出版社によると,kindle および Nook バージョンも 販売中 である。