原則は行動を導き、明示化されることにより意識が生まれ、文化の成長を促進する。7つのソシオクラシー3.0の原則は、取り巻く環境と一体となって行動し、経験から学び、複雑さにうまく対応する協働的・適応的で知的なシステムを生み出すことを望んでいる組織を支援する。
James Priest氏はAgile Consortium Belgium 2017 conferenceにおいてソシオクラシー3.0について発表した。InfoQはQ&A、概要と記事によりこの会議を取り扱う。
Priest氏によると、ソシオクラシー3.0(S3)は、アジャイルに進化し弾力性のある組織のためのオープンなフレームワークである。これは人々が既に用いている、ある特定の文脈における価値をもたらすと考えられるアイデアの集合であると捉えることができる。
Agile Consortium Belgiumの会議において、Priest氏はソシオクラシー3.0の7つの原則を発表し、これらの背景を観衆と議論した。
- 経験主義: 証拠や経験に基づき物事を行い、仮定が正しいかを確認し、新しい実験に基づき知識を再評価するための準備をすること。
- 有効性: より大きな青写真や、現在と将来の双方における行動の影響を熟慮するために、単なる効率性を超えて拡張すること。
- 透明性: 知ることを望んだり影響された人々に対して物事が開放され、見たり理解したりできることを保証すること。秘密にするもっともな理由がない限り、情報を誰に対しても使用・理解可能にすること。
- 継続的改善: 未来においてより良く行動するために、既に行なったことから学ぶこと。
- 責任の所有: 物事に気を配ること。責務や組織全体の課題に対して責任を取ること。合意したことを実行すること。自身の後始末をすること!
- 同価値: 決定に影響される人々がその決定に関わり、理由があるときには変化を起こす力を持っていること。(そうでなければ、人々が変化を起こす能力がしばしば同じでないため同価値はまさに重要である)
- 承諾: やらない理由がない時は物事を進めること。"現在十分良い理由があり、挑戦しても十分安全である"決定を行い、どうするべきかが明確になったら改善を行うことを目標にすること。(主権は人に存在するのではなく、主張に存在するのである!)
InfoQは事前に、アジャイルプラクティスを実施するためにソシオクラシー3.0のパターンを適用することについてJames Priest氏とBernhard Bockelbrink氏にインタビューを行なった。
ソシオクラシー3.0(以後S3)は、アジャイルな組織をより成長させるために人々が頼ることのできるフレームワークです。このフレームワークはパターンに基づき、原則を選択したものにより構成されています。すなわち、人々が共有する目標の達成のために協働するときに有効だと実証されている、定義、手引き、そして柔軟なプロセスから構成されています。
S3は関係性・所属意識に対する根源的な欲求に沿った、生きがい・自律性・統率力に対する人々の自然な願望を称賛する協働の文化の構築に関するものです。
ソシオクラシー3.0のパターンは規範的なものを意図しているわけではありません。各自にとって実行可能な解決方法の発見を支援するために存在するのです、とPriest氏は述べた。
InfoQは講演の後にJames Priest氏にインタビューを行なった。
InfoQ: どういう成り立ちで7つの原則からなるソシオクラシー3.0は考えられたのでしょうか?
James Priest氏: S3を形作りながら、どんな行動を誘発する何が私たちの中に湧き上がり自問するのか、抽象的な観点で熟慮を行いました。以前のソシオクラシー(SCM)は3つの"価値"の上に構築されていました。すなわち、同価値、効率性、透明性です。ですので、これらはフレームワークの基礎に織り込まれるべきことは明白でした。私たちはこれらを"原則"の形で記述することにしました。なぜなら、これらのことを考える人々のためにスコープを広げるのが良いだろうと思ったからです。結局、人々が最初に争う点の1つは彼らが持っている"価値"に関するものですが、一方で価値を検討するのに原則自体の評価は必要ないのです。
承諾に基づく意思決定はすでにSCMの"原則"に存在しており、継続的改善と経験主義についても、人々が"現在十分良い理由があり、挑戦しても十分安全である"決定で手を打ち、物事を進める中で進化させるのであれば、双方とも必要不可欠であるため明確な候補でした。
責任の所有は明示することに決めた追加の原則です。S3は分権を行い、組織全体に影響を与えるために力を供給することに関するものです。権限と責任を移譲するために、責任を持つメンバーがやり抜くために説明責任も持つことが重要です。
InfoQ: これらの原則はどのような役割を果たすのでしょうか?
Priest氏: これらの原則が示唆していることは数多くあると思っています。それは組織に関するもの、一般的に私たちの生活に関するものの両方があります。総合的にはこれらの原則は行動を誘発するものである、ということになりますが、この質問に答えを出し始めるための良い方法は、属している組織にこれらの原則が生きているかどうか、もしくは欠けているかを自問することです。協働の質に対して利益を与えそうな原則がいくつかあるかどうかを検討してください。それらが(より)明確であり、意識的に採用されたかをです。
実際の原則の採用による結果のほかに、これらを検討するだけでも得られるもっとも特筆すべき成果の1つは、これらの原則なしにどう行動する方法に対してより意識的になることです。
もちろん、難しいロケット科学が関わっているわけではありません!これらの原則は、取り巻く環境と一体となって行動したり、経験から学んだり、複雑さにうまく対処できる協働的、適応的で知的なシステムを創り出すことを望むどんな組織も良く理解できるでしょう。しかし、これは単に良く理解できるということであって、これらの原則が今日様々な組織の中で広まっているということではありません。私はそれらの原則が重要度を増してきているということを主張したいのです。
InfoQ: 誰かがリストにない原則に価値を見出している場合はどうでしょう?それでもまだソシオクラシー3.0のフレームワークを使用することはできるのでしょうか?
Priest氏: もちろんです。そしてそのことについて少し考えてみれば、パターンやS3のフレームワーク全体に影響を与えた原則が他にたくさんあります。例えば、"自身と他者を尊敬すること" - "協働すること" - "行なっていることにより意識を向けること" - "誠意を持って行動すること" - "無駄を排除すること" - "オープンに学習することを意識し、学習したことを捨て去ることをもっと意識すること" - "押し付けるより招待すること" - "ダイバーシティを活用し、順応を強要しないこと"
S3の素晴らしい点は、人々が好むことが何であれそれを実行できることです。質問はおそらくもっとあって、人々がS3からいくつかのパターンを引っ張ってきたいのはないか、ということではないでしょうか? 大ざっぱに言って、もし個人や組織が(明示的もしくは暗黙的に)選択した価値がS3の原則のいくつかを受け入れない場合は、初めからS3により試みを始めたいということにはなりづらいと思います。私はこれは尊重すべき重要な因子であると考えています。強制された変化はしばしば"不健全"な結果を生み、その結果は明白な利点を覆い隠してしまうかも知れません。それはもし私たちが初めに"不健全"だと考えた何かを変えようと試みている場合であってもです。
7つの原則を採用することは、S3から他の多くのパターンを引き出すために必要不可欠であるというのが私の個人的見解ですが、それでも何が人々にとって重要かを自分たちで決めることは重要だと思います。むしろ、現在重要であったり価値があると信じていることとどこか対照的に見えるからといって一目で拒絶するのではなく、各々が経歴上持っている観点や現在大事にしている原則は何であれS3に目を向けてほしいと思っています。
逆に言えば、S3に由来するパターンの多くのを利用して試みを行うことで、なぜ7つの原則がより効果的な協働のために価値を持つかを理解することができます。人々が経験により学ぶとき、自分たちのための知識の所有権を持つことができます。自身で決断した変化は一番強固です。なぜなら人々が直接物事を進める中で自分たちのための価値を見出さない限り、彼らがベストを尽くしたり本当の意味で携わったりはしそうにないからです。積極的な関わり合い、そして人々がベストを尽くそうと願うことは、組織全体の効率性、順応性、弾力性に対しても大きく影響する2つの性質です。そしてこの性質はどちらも強制することはできず、人々が自身で選択するのみです。
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