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セミナーレポート:「ISO26262セミナー」

| 作者 投稿日 2011年9月27日. 推定読書時間: 8 分 |

2011年9月13日TDIプロダクトソリューション主催による「ISO26262セミナー ~車載開発は品質、環境から安全へ ISO26262対応を支援します~ 」が開催された。
<http://www.tdi.co.jp/oshirase/event.htm#110913>

近年、ソフトウェアがミッション/ セーフティ・クリティカルな分野で重要な役割を果たすケースが増え、これに伴い長年開発者が熱心に取り組んできた品質/信頼性向上の活動に加えて、システムの安全性をいかに確保するかという取り組みにも大きな注目が集まることになった。自動車業界においてもISO26262の正式発行に備えて国内でも適用に向けた取り組みが始まっている。本セミナーでは、ISO26262のアプローチから適用のポイントまで、ISO26262認証機関SGSテュフをグループに持つ検査登録機関のSGSジャパン株式会社、認証に必要な管理インフラ・ソリューションを提供するダッソー・システムズ株式会社、ソフトウェアエンジニアリングに基づいてISO26262対応を支援している株式会社豆蔵と、開発を実現するTDIプロダクトソリューション株式会社が、各社それぞれの領域でISO26262対応について発表が行われた。

最初に、主催のTDIプロダクトソリューション株式会社の家田氏より挨拶と「ISO26262に対応した製品開発をする際にISO26262をわかっているパートナーが必要になりませんか」と題した講演が行われた。家田氏はまず、IEC61508とISO26262の比較について説明し、これまでの車載開発は品質・環境を重視する規格であったが、IEC61508からはシステムに安全が要求されるようになったこと、そしてISO26262は自動車の機能安全に特化した個別安全規格であり、開発時にリスクを把握し安全に作りこむことが求められると述べた。そして、その安全に作りこむ為には、推奨されるプロセス・技法での開発が大事だと述べた。
次に家田氏はISO26262は何が義務なのかについて説明をした。つまりIEC/ISO/EN/DIN規格基準は技術的推奨であるため、ISO26262は推奨であって法律ではないので、直接的な法的拘束力はない。しかし、今後自動車メーカーの調達要件となれば、供給側は開発体制、手法などを確立する必要があるし、また、欧州ではEC指令、ECE規制といった安全に関する法規制もあるため、日本でも数年後に法規化される可能性もあり、ISO26262への対応が必要と述べた。
実際にISO26262ではどの程度の範囲に対応が必要かについても触れ、ハザード分析、リスクアセスメント、プロセス構築、設計手法、エビデンス、ツール整備、安全方策、規格準拠、認証、その他広範囲の対応が必要であると説明した。その広範囲な対応をするために、今回セミナーを行う4社が連携支援することで、広範囲なISO26262対応においてもかゆい所に手のとどくサービスができる。例えばソフト、ハード開発はTDIPSが、ソフト開発プロセス改善は豆蔵が、インフラ管理ツールはダッソーシステムズ、規格準拠、認証はSGSがお客様にご支援することで、お客様のISO26262対応の支援ができることを説明した。

次にSGSジャパン株式会社の小嶋氏による「ISO26262と組織のアプローチ」と題した講演である。まず、小嶋氏はISO26262の概要について、ソフトウェア、ハードウェア、それらを含むシステムまでを対象として大きな規格であること。また、これまでのCMMIやAutomotiveSPICEなど”What”を重視した規格ではなく、”How”とも取れるより具体的な技術があることが特徴と述べた。しかし、こうした具体的な要求を忠実に適合させることがイコール「製品の安全を確保」とはならないとも述べた。つまり、安全な製品を生み出すためには、組織に安全に対する文化が生まれる事が必要で、その上でプロセスや手順、手法が有効に使われるのではないかと述べた。
では、なぜ安全文化が必要かについて小嶋氏は欧米文化と日本文化の違いから安全文化を考えるように提言した。日本では人を育てる文化がある。それに対して欧米では人を育てる文化がない。組織に関する安全文化についてはそこを考えなければならない。そして、規格に振り回されないために、日本の強みを失うことなく、弱みを克服する。規格はその時点のスナップショットであり、変化するもの。改善を前提に取り組むべきだとも述べた。
さらに具体的に欧州企業の典型的な組織構造について実例を挙げた。安全文化醸成に向けて、組織構造をどうするか、管理者をどこに配置するかについて説明し、組織のコンピテンス管理には、日本的なコンピテンス管理をした方がいいと述べた。最後に組織が本来持っている文化や強みを活かした上で規格を応用し適用するのでなければ組織を弱体化させることになると述べた。

3つ目の講演は、ダッソー・システムズ株式会社の兼平氏による「開発効率を落とさないISO26262インフラソリューション」と題した講演である。まず、兼平氏は26262文書構成について、システム、ハード、ソフトの構成要素がそれぞれのPartの要求に従っているかを成果物で管理していると説明した。そして、機能安全に必要な技術としてハード、ソフト以外に認証審査のためにデータ管理の技術が必要であると述べた。
データ管理については、問題が起こった時に提出しなければならなかったり、膨大な文書管理のための「構成管理」、影響範囲分析などの際に利用される「要件管理」、および認証機関へのエビデンスの提出のための「文書」の3つがあると述べた。こうした構成管理、変更管理、およびトレーサビリティを確保するため、ダッソー・システムズではISO26262管理全体像の中でトータルでサポートできるとし、ReqtifyおよびENOVIAV6を紹介した。Reqtifyは、ASIL決定からASILに応じた機能安全機構、システム設計、ハード設計管理、ソフト設計管理までの様々な文書、設計資料、処理結果等の必要項目がもれなく存在しているか、および関連性を管理、視覚化するトレーサビリティがある。ENOVIAV6は、構成管理と変更管理といったPDMを管理できる。品番管理により時間的、空間的に数十年のスパンでデータ管理ができると述べた。
最後に機能安全はこれ自体をやれば安全という規格ではなく、第三者への説明責任なので、コスト(お金、時間)をかけすぎないことが重要であると述べた。ダッソー・システムズではお客様の開発環境をできる限り変えずに、また、できる限りコストをかけずに機能安全で必要とされるトレーサビリティ、構成管理、変更管理ができるソリューションを提供できると締めくくった。

4つ目の講演は、株式会社豆蔵の中嶋氏による「ソフトウェア開発におけるISO26262
対応のポイント」の講演である。中嶋氏は、まず、ISO26262の背景と狙いについて述べた。それはISO26262がどのような背景で生まれたのか、またどのような狙いがあるのかを理解していただき、ISO26262の重要性・意義を把握することが重要だと述べた。
次にISO26262対応のソフトウェア開発の概観についてのべた。ECUシステムのソフトウェア開発者がISO26262に対応するために、エンジニアリング・フローに沿って何を行うのか、またどのような技術が必要なのかについて概観してもらうために、ABSシステム構造図、ABSアクチュエータ構造図などのサンプル題材をつかってABS制御の概要について理解してもらい、実際の開発現場で適用するときのイメージを説明した。
最後にS/WエンジニアリングとISO26262パート6との関係について触れ、S/Wシステム要件のポイント、S/Wシステム設計のポイント、S/Wコンポーネント設計のポイント、およびS/Wユニット設計のポイントについてサンプルを用いて説明した。
中嶋氏はISO26262に対応することは、企業のエンジニアリング能力を向上させ、顧客が十分に満足する製品を作ることができることになり、その結果、利益が伸び、企業の成長につながると述べた。習得しなければないけない技法/手法は多くあり、投資コストは決して安くないが、その分のリターンは大いに期待できると締めくくった。

最後に、懇親会が開催されその中でQAセッションが開かれた。QAセッションの中で、「体制構築」に関する質疑応答があり、もっとも注目が集まった。

まず、「安全設計概念やスキルアップの訓練方法」について、豆蔵の中嶋氏は、「これまでのソフトウェア開発では、共通性を探し複雑なものがあったら共通化していた。安全設計概念においても同じで、別のやり方でできないか観点を変えていく。その時必ず課題をイメージしながらやると自分たちにあったスキルアップのやり方が分かる」と述べた。また、「社内体制の規模と形態」について、SGSジャパンの小嶋氏が、「正確に何人とは言いにくいが、組織の中で1人は規格を理解した人が必要。それが各事業部単位で専任である必要があるかと言えば、社内事情で決めざるをえないだろう」と述べた。

懇親会では、多数の質問があり和やかな雰囲気のうちにセミナーは閉会した。

自動車業界において、ISO26262の正式発行に備えて国内でも適用に向けた取り組みが始まっている。そのため、今後このようなセミナーが多数開催されると思われる。

InfoQではこのようなセミナーレポートを今後も継続的に実施するのでご期待いただきたい。

◆関連情報

【豆蔵】機能安全(ISO26262)関連講座
http://www.mamezou.com/service/esengedu.html#26262

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