新製品の成功を予測するのは難しく、それは不可能だという人もいます。成長して、資金が豊富な大企業でさえ、マーケットで受け入れられず、利益の出ない製品を作ってきました。様々な産業で見られるように、製品の成功は投資額やプロセスの最適化では保証できません。
既存のマーケットで迅速に動く必要がありますが、どんな手段を使ったとしても成功は保証されません。そのため、企業は、製品開発に内在するリスクを管理する方法を探し続けています。
多くの企業は、実用最小限の製品 (MVP) をリリースする戦略を取っています。この戦略により、ターゲットとするマーケットにおいて、すぐにニーズを満たせるように、中心となる機能に絞って製品を提供します。
製品開発のMVPのアプローチは、限られた機能を持つ製品を、ターゲットを絞って迅速に提供する戦略です。幅広いマーケットの必要性を満たすために、十分に機能ができるまで製品のリリースを遅らせようとすると、顧客のほしくない製品や必要のない製品を作るリスクが発生します。このアプローチでは、そのようなリスクを管理できます。
デザイン思考は、問題を解決するために、感情移入を使うアプローチです。このアプローチでは、人々が求めている技術的に可能なことと、今、利用できる実用的な解決策を一致させます。感情移入することで、私たちは他の人たちの状況がどのようなものか理解し、特定の顧客のニーズに合わせて、顧客中心の製品や解決策を作り出します。製品開発のフレームワークとして、デザイン思考は、人間中心の対話式の学習プロセスであり、明確なニーズを持つ人々として顧客に注目し、技術的な解決策へ取り組みます。これにより、ビジネスの目的が明確になり、マーケットにおいて企業の製品価値を高める方法を、より深く理解できます。
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デザイン思考を利用する企業は、通常よりも製品を多くリリースし、顧客から有意義なフィードバックを受けて、マーケットで製品がどのように使われているのか、また将来の展望はどのようなものかを検証する機会が得られます。そして、顧客がもっとも望んでいる機能をリリース毎に追加していくため、高い顧客満足度を維持できます。
MVP開発にデザイン思考を取り入れる方法は、5つのステップに分けられます。
- 定義。ターゲットとする顧客の潜在的なニーズを明確に定義し、デザイン思考の重要な原則である、予測される解決策が顧客の状況をどのように改善するかを深く理解して、開発プロセスを始める必要があります。次に、予測される解決策の機能的要求と、解決策をサポートするために必要なコア技術を定義する必要があります。MVP開発の目的は、ターゲットを絞った解決策を提供するために必要なものに機能を制限することです。そのため、ニッチなマーケットに合わせて解決策を提供し、企業としてベストを尽くすようにしながら、解決策の制限された機能的要求を確実に理解するようにしましょう。
- 共有。顧客ニーズと解決策の機能的要求を定義すると、次のステップとして、プロジェクトの共通ビジョンを共有するために、チームメンバ全員でミーティングを実施します。このミーティングの目的は、チームメンバの役割を決め、どのようにプロジェクトをサポートするか、また、プロジェクトの成功のために一人一人がどのように貢献するかを明確にすることです。大規模開発の中で各タスクがどのような意味があるのかを説明せずに、メンバに単にタスクを与えないようにしましょう。このアプローチによって、チームメンバ は、開発を通して、割り当てられたタスクを実行しながら、プロジェクト全体のことを考えられるので、プロジェクト全体を動かした時に、整合性のとれない部分が発生する可能性を減らせます。
- 優先順位付け。このプロセスの3つ目のステップは、特定のリリースのために予定される機能を分類するために、プロジェクトのマネジメントチームと会うことです。狩野モデルは、当たり前品質、一元的品質、魅力的品質というカテゴリに機能をまとめるのに役立つでしょう。この考え方を使えば、それぞれのカテゴリからの機能を含むように、リリースのバランスをとることができます。1つのカテゴリからだけ機能を追加してリリースしないように注意しましょう。当たり前品質の機能だけをリリースしたり、製品を実用的にするために必要な当たり前品質を含まず、魅力的品質の機能だけをリリースしたりするのはよくありません。このステップの結果として、継続的に顧客へ価値を提供しながら、頻繁にリリースを行い、マーケットへ機能を提供できます。これは、もう1つのデザイン思考の原則です。
- 実行。4つ目のステップは、製品リリースが開発される部分です。ここでは、デザイン思考がフィードバックと検証を必要とする繰り返されるプロセスであることに注意しましょう。 そのために、リリースの後で顧客が経験することをよく考えさせる仕組みとプロセスを含めて、十分理解して実行する必要があります。そして、ウェブ分析を実施したり、顧客を分析し、貴重なフィードバックを集めるために、広範囲に渡って解説する特別なツールを使ったりします。データを集めるだけでなく、使えるようにすることが重要です。絶えず製品を改善するために、どのようなフィードバックでも、バックログに追加するようにしましょう。
- 検証。プロセスの最後、5つ目のステップは、特定のリリースについてフィードバックをレビューし、将来の展望を検証し、ステップ1から再度プロセスを始めましょう。これにより、リリースはターゲット顧客の特定のニーズを満たすようになります。そして、ビルディングブロック方式を使って、低いリスクで、徐々に価値を増やす製品開発を行います。コンセプトがすぐにはユーザーに受け入れられないことを理解しましょう。客観的になり、物事を白か黒かで判断しないようにしましょう。そして、製品を改善するために将来の展望を再構築しましょう。
深く掘り下げて1つ1つ見ていくと、大企業では意思決定を恐れる様子が見て取れます。こうなると、大抵はいくら調査をしても、半信半疑になってしまい、貴重な時間を無駄にすることになります。そして、より機動性のある競合相手に先を越されます。仮説を進めることは、もっとずっと効果的です。この方法により開発の方向を決め、仮説を確認して検証する合理的な計画によって、有利な状況を生み出します。解決策を求めて、混沌とした状況の中で探し続けることはありません。
やることをはっきりさせるために、タスクを決めましょう。まず、フレームワークを構築します。そして、調査で注目する点と障害となる点を明確にします。大抵の質問には答えが2つあることを覚えていてください。1つは、ビジネスに訴えかけるもの、もう1つは顧客に話しかけるものです。
製品開発サイクルを始める時にはジャーナリストのように考え、次のような質問をします。
誰?
誰があなたの製品を使いますか? その人たちの習慣や好みは何ですか? 実際のユーザーのニーズやその製品を使わずにどうしているのかを理解することは、とても重要です。重要な問題を明確にして、そのことに照準を合わせましょう。あなたの製品を使用する背景は何でしょうか? あなたの製品を使う動機は何でしょうか? 最善の結果を生み出せるように、どのように影響を与えられるでしょうか?
どこ?
大きく考えましょう。エコシステムの中であなたの製品はどこに位置していますか? ただ、よりよいサービスの一部のこともあります。使用環境を心に留めておきましょう。その環境で、普通の顧客としての経験が生み出されます。
いつ?
あなたが好きであろうとなかろうと、製品にとって時間は極めて重要です。「完璧 (Perfect)」よりも「完成 (Done)」の方が優れています。だから、プロジェクトのスコープを常に心に留めて、迅速にマーケットにリリースするために、本当に必要なことだけに制限する必要があります。
なぜ?
顧客やビジネスにとって、製品の本当の価値は何でしょうか? どのような問題を扱いますか? また、その方法は? なぜその製品を作りましたか? そして、会社が成長していく中で、その製品はどのような役割を果たしますか?
これらの質問は、主な問題を理解するために必要不可欠です。気をつけなければ、見たところ簡単なタスクを、要求に応じて進めようとします! それに、存在しない問題を解決するのは不可能です。なぜ、余分な重荷を背負うのでしょうか? 細々としたことに追われて限界に追い込まれたら、一歩下がって、別の角度から問題を見るようにしましょう。自分の作業を見渡して、その中の一部分に注目して役割を可視化しましょう。これは、プロジェクトをドキュメントの山に埋もれさせなければならないという意味ではありません。私たちはみんな、お役所仕事が物事を簡単にするよりもむしろ、制限するものであることを知っています。また、プロジェクトの初期の段階では、自由が特に重要です。自由な思考、明るいビジョン、真っ直ぐなインスピレーションの下で、革命が起こるものなのです。
結論
現代の製品開発は、すぐに顧客のニーズを満たすように、ターゲットとするマーケットへ機能を制限した製品を提供するデザイン思考へ向かっています。幅広い機能を提供し、より多くの企業の投資を受け、広範囲のマーケットをターゲットにして、長期的でコストをかけた開発を行い、誰もほしくない製品を開発するリスクは、この方法によって減らすことができます。顧客のフィードバックに基づいて頻繁にリリースすることで、顧客満足度を向上させ、製品と企業の長期的ビジョンをタイミングよく確認できます。
デザイン思考は、ビルディングブロック方式で製品開発をサポートします。大きなシステムに1つのモジュールを追加、またはアップグレードする頻繁なリリースを通して、コスト効率よく機能を改善できます。デザイン思考によって、顧客やリリースの繰り返しに注目すれば、製品のライフサイクルを通して、価値のある機能を継続的に提供し、顧客満足度を高いレベルで維持することができます。
著者について
Dmytro Svarytsevych 氏は、SoftServe, Incのオフィスデザインのディレクタです。彼は、会社全体のユーザエクスペリエンス戦略を決め、統合する役割を担っています。SoftServeのプロジェクトにUXのベストプラクティスや方法論を適用し、首尾一貫して、順応性のある専門技術の成長を促進しています。Dmytro氏は、SoftServe United ブログも執筆します。Ivan Franko National University of Lvivにて、物理学の修士号を取得しています。