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持続可能なITアーキテクチャの作業グループを設立

SustainableITArchitecture.com(サイト・英語)は、エンドユーザーやインフラ・ソフトウェアのベンダー、システムインテグレーターといった、情報システム再設計のアプローチを考案しなければならない人々に公開された新しい作業グループである。Pierre Bonnet氏はこの作業グループの設立者の1人であり、ILog(アイログ)やOrchestra Networksもグループに参加している。Pierre氏は、サービス指向アーキテクチャの構築を網羅したオープンソースの包括的な企業向け方法論、Praxeme(source)を共作した1人でもある。Pierre氏はまた、Dominique Vauquier氏(アクサグループ保険の方法論者)、Philippe Desfray氏(Softeam社、UML標準のOMG理事会メンバー)とともにPraxeme Instituteを設立した。Pierre氏はOrchestra Networks(サイト・英語)のConsulting Manager(コンサルティング部門局長)を務めている。

経験豊かな実務者であるPierre氏が理解するところの、サービス指向アーキテクチャ(SOA)について訊いてみた。

InfoQ: 現在SOAを使っている顧客をどう思いますか。

Pierre: 現在の企業は、適応力の非常に小さいSOAを利用しています。通例、プロジェクトで既存資産を変更することはありません。アーキテクトの作業の中心はたいてい、バックエンド・システム上にサービスを追加することです。通常、サービスイネーブルメントと呼ぶものです。持続可能なITアーキテクチャの成熟度モデルでは、このレベルを「表面的SOA」と呼んでいます(下図参照)。

ベンダーを含む大勢の人々が、SOAは現在のシステムを変更せずにROIを生み出せると主張しました。もちろん、結局のところROIはそれほど高くなく、レイヤー数の多さが原因で複雑さが増し、安定性を失うという犠牲の上で達成されたものでした。

InfoQ: このアプローチは現在の企業のニーズとどのようにして歩調を合わせるのでしょうか。

Pierre: これから先の5年間、フランス、そしてヨーロッパで企業が直面する問題は、情報システムの更新です。この先の何年もの間、多数のソフトウェア開発者やアーキテクトが定年退職を迎えるでしょう。こうした状況で、企業はどうやって情報システムを管理し続けるのでしょうか。

SOAを取り囲む本当の論争はサービスイネーブルメント、つまり「表面的SOA」ではなく、むしろ、これ以上維持することのできないシステムの代わりとなる新世代システムをどのようにして創り出すかということではないでしょうか。現在はソフトウェア・レイヤーの数が多すぎて過度に複雑化しており、老朽化の進む重い資産の進化を能率化するには、「表面的SOA」アプローチでは力不足なのです。2000年問題は乗り切りましたが、団塊世代の定年退職は乗り切れない可能性があるのです。業界内で連続性が途切れる時が近づいているのです。より高レベルのSOA成熟度へ移行する必要があり、私たちはこれを「リエンジニアリング(再設計)SOA」と呼んでいます。

InfoQ: インフラ・ソフトウェアのベンダーは、SOAソリューションのコンセプトや情報システム近代化をどのようにサポートするのでしょうか。

Pierre: インフラ・ソフトウェアのベンダーが販売するライセンスは減少してきています。その理由は、プロジェクトが意欲的でないからです。企業の中には、「サービス指向アーキテクチャの実装を完了しました」という項目に「済み印」のチェックマークを書き入れ、「実装完了しました」と証券アナリストに伝えたいがために、サービス指向インフラを配置しているところがあります。その結果、情報システムに多数の変更を加えない技術、つまり「相変わらずのミドルウェア」を売り込むことに、ベンダーは一生懸命になっています。私の考えるところ、要件が変わってきているという意識はベンダーにもあるようですが、それに対応する首尾一貫した戦略をまだ持ち合わせていないのです。

InfoQ: このような状況で組織が前進し、こうした問題に対処するにはどうしたらいいのでしょうか。

Pierre: 企業側の準備はできており、情報システムを次のレベルにもっていく必要があります。貸借対照表上は2000年問題とITバブルの崩壊から立ち直っていますが、現在の企業では結果が求められており、1990年代末に企業が受けていたプレッシャーとは異なるタイプのプレッシャーを受けています。顕著な価値が創り出せない限り、企業はIT部門に対して無造作に金銭を投入することができなくなったのです。

価値を創り出すには、3つの条件があります。

1)     新しい種類の情報システムを生み出す必要があります。機動性連鎖(ACMS=Agility Chain Management System=機動性連鎖管理システム)を構築しなければなりません。機動的であらねばならない、ということに何の新鮮味もありませんが、具体性がなければなりません。単にPowerPointのプレゼンで機動性があればいいわけではないのです。戦略は、プロセス、ルールと習得、リファレンスデータ管理の三段階です。現在、本番環境でこの3つのコンセプトを関連づければ、いまだなお画期的なのです。鎖全体の機動性を決定するのは、鎖の一番弱い連結部分です。たとえば、ビジネスルール管理システムはリファレンスデータへのアクセスが必要です。しかし現在、リファレンスデータは情報システム内のあちこちに余りにも散在しているため、そこに行き着くまでが、まだ非常に大変なのです(ACMSに関する詳細については、SustainableITArchitecture.comをご覧ください)。SOAとACMSを接合すれば、サービスアーキテクチャがより柔軟になり、私たちがSOA成熟度モデル(上図参照)で呼ぶところの「拡張SOA」となるのです。

2)     SOAガバナンス(統治)とは何を意味するのか、明瞭にする必要があります。フランスでは、ガバナンスを管理するレジストリとリポジトリに基づいたパッケージ・ソリューションを顧客は採用しています。しかし、こうしたソリューションでは、「表面的SOA」と「リエンジニアリングSOA」を区別しません。「表面的SOA」の環境では、統治するものはほとんどなく、サービス機能やある程度までのサービス機能請負は、バックエンド・システムによって課せられます。なぜなら、サービス機能の実装は完全に既存資産に依存するからです。「リエンジニアリングSOA」の環境では、すべてに新しい次元が開けます。重要なのは、新規情報システムを適切かつ効率的にモデル化し、青写真を常に管理、調整することです。レジストリ・リポジトリソリューションを今調べてみても、ドメイン特定言語やUML Case、IDEといったツールとの関連について述べている人は誰もいません。メタデータをUMLモデルで表現することはできますが、そのメタデータをリポジトリにもっていくのが大変なのです。

3)     「リエンジニアリングSOA」を網羅し、機動性連鎖管理システムの原則に基づいた、公開されていて共有できる企業用方法論を開発する必要があります。「リエンジニアリングSOA」が成功できるのは、企業のクラス構築プロセスに基づいている場合のみです。たとえば、このプロセスはITILやTOGAFでは取り扱っていません。ビジネスデータや使用ケース、プロセス、論理アーキテクチャ(SOA様式との関連で)等を設計、管理するための具体的なガイドラインが必要です。この公開された方法論は、インフラのベンダーが喜んで取り入れ、サポートする必要があります。顧客が「リエンジニアリングSOA」を余り早々と構築できるようになる事態をベンダー達が歓迎していないのではないか、という印象を受けることが多々あります。私たちが公開方法論を開発するためのエンドユーザー向けコンソーシアムを創設した理由がここにあります。それがPraxeme Instituteです。Praxemeはコモンクリエイティブのライセンスを受けています。誰もが各人のニーズに合わせて自由に使い、修正できます。Praxemeの目標は、「リエンジニアリングSOA」を網羅し、かつACMSに基づいた、オープンソースの公開された土台を企業用方法論向けに確立することです。

InfoQ: Praxemeについて、もう少し詳細を教えていただけませんか。

Pierre: Praxemeの開発には過去4年間を費やし、フランス内の大型SOAソリューションプロジェクトで使われてきました。何がうまくいって、何がうまくいかないかについて、すでにたくさんの実用的フィードバックをもらっています。目標はSOAソリューションプロジェクトのツールスイートの一部としてPraxemeを実装することです。一流システムインテグレーターのUnilogは、同社の中核的方法論としてPraxemeを利用しています。Unilogは、Praxemeを上手に使った顧客からすでに10通の推薦状をもらっています。私たちは現在、Eclipse Process Framework Composite(EPF=エクリプス・プロセス・フレームワーク・コンポジット)へこの方法論を成文化する作業を行っています。また、ITと企業の両方を対象とした5日間のトレーニングも始めました。私たちのドキュメントは制限なしに入手できることを強調しておきます。リクエストしていただく必要のあるドキュメントもありますが。かなりの知的資産ですよ。

Praxemeは、エンタープライズ・アプリケーション・フレームワークの機能を果たす、強力な「エンタープライズ・システム情報トポロジー」に依存しています(下図参照)。このフレームワークの8つの側面が、システム情報再開発のリスク管理を必要とする企業とITの業務を合理化するのです。Praxemeは各側面について、TOGAF Open Groupといった他のEAFでは利用できない詳細なガイドラインを提供します。Praxemeは特に、組織の様々なプロセスで再利用可能な(実用本位の側面)、「ビジネスオブジェクト」(意味論的側面)を設計する方法を定義しています。有名な「関心の分離」(SoC=separation of concerns)ですが、今回は、設計の早い段階で実行に移しています。Praxemeトポロジーを使えば、SOAアーキテクチャの様式は論理的側面内で統合されます。全モデルがMDA標準(OMGによるモデル駆動型アーキテクチャ)によって駆動されており、導出ルール一式も付属しています。たとえば、セマンティックモデルをSOA様式で論理的アーキテクチャに変換させるルールなどです。

InfoQ: ありがとうございました!

原文はこちらです:http://www.infoq.com/news/2007/10/sustainable-it-architecture

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