Rod Johnson氏はQCon Tokyoの2日目の基調講演において最近のJava EEとSpringについての発表を行った。セッションが開始される前のComponent Squareの長尾氏の話によると、InfoQ編集者のFloyd Marinescu氏、1日目に基調講演を行ったMartin Fowler氏と食事をした際、「今年はSpringが来る」という話で盛り上がったそうだ。実際にSpringは最近どうなのか、このセッションの中でRod氏本人から話があった。
Rod氏のプレゼンテーションでは、まず経済状況の悪化などによりEnterprise Javaを取り巻く状況が、大きな変化のうねりの中にあることを指摘した。そのため、より素早い変更をするためにシンプルなシステムが求められているとした。ソフトウェアの分野にもリーン開発が登場したのは、より開発すべき機能を本質的なものに絞り込むために、システムの複雑性を最小限にすることで、システム全体をシンプルにするためとし、またオープンソースが開発者から支持されるのも、よりシンプルで使いやすいものが選ばれ、そうなるための力がかかっていると語った。そして旧来のEJBなど、J2EEの仕様やアプリケーションサーバーの技術は複雑で扱いづらかったため、そういった環境をシンプルにし、素早い変更を実現するために登場したのがSpringFrameworkであると語った。SpringFrameworkは今ではWebLogicなどの商用のアプリケーションサーバーの中でも使われるようになり、北米市場においてはTomcatやJBossなどいくつかのJavaアプリケーションサーバー市場において、すべて50%以上のシェアを誇るようになった。日本市場ではSeasar2等があるため、同様のシェアとはなっていないが、他の地域におけるSpringFrameworkのシェアは同様であるとの事であった。SpringFrameworkはすでに世界中で広く使われていると述べた。
それはSpringFrameworkがPOJOを元にプログラミングするモデルをもたらしたためとした。POJO同士の関係や環境ごとの依存を、別のファイルなど、外部のブループリント、設計図に抽出できるためである。これがシステムを構築する上でシンプルさをもたらしている。この影響をうけ、Java EE 6の仕様策定では軽量なEJBなど、仕様の軽量化が進んでいるが、Rod氏の見立てでは、これは失敗するのではないか、と語った。理由は標準化は想像以上にコストが高くついてしまうためである。
SpringSourceではRuby on Railsよりも生産性を高めた環境、RADツールを開発中である、と公表した。これはJavaのWebアプリケーションの開発はシステム全体をどうするか、Ruby on Railsのように考え抜かれていないため、プロジェクトを始めるには多大な労力がかかることなどに対応する製品である。RADツールのリリースは1,2ヶ月後を目指しており、今月末のSpringOneにてデモが行われる。またアプリケーションサーバーの分野で70%のシェアを誇るなど、すでに広く使われているTomcatを使っているユーザーに対して、可用性と安定度を高め、複数のTomcatを管理する事のできるアプリケーションサーバーであるSpring tc Serverを用意している。さらにOSGiコンテナ上にWebアプリケーションを構築することで、コンポーネント化を進めるSpring dm Serverについて、長期的な投資として価値があると言及した。そして年末にはクラウドに対応した製品を出せるだろう、と語っている。今後、こうしたツールを用いることでRod氏はSpringがアプリケーションのライフサイクル全体をサポートする製品群として育てていきたいと語った。
作者紹介
チェンジビジョンにてソフトウェア開発に従事している開発者。Spring Frameworkに触れたのは、最初から仕事として。その後、書店でJ2EEについて勉強のため、たあたま手に取ったのが「実践J2EEシステムデザイン」と言う本だった。Spring Frameworkのコードに感動し、そこからソースコードの読み方を学ぶ。QCon TokyoにRod Johnson氏がやってくると聞いて、楽しみにしていた。Planet Eclipseに所属し、時々Eclipse Plug-inの開発勉強会を開催している。