Rod Johnson 氏は SpringOne Europe 2009 のオープニングキーノートで,先日のOracleによる買収によってJavaのイノベーションが息の根を止められるのではないかという懸念を示しつつも,ここ数年の状況から見て,Javaは今後もSun以外の場所で発展を続けていくだろう,という考えを語った。その根拠として氏は,Grails,Roo,開発生産性ツール,フリーSTS(SpringSource Tool Suite),tc Server と dm Server について説明を行った。
参照:Javaイノベーションの今後(The Future of Java Innovation ,1時間55分)
Rod氏はOracleがJavaのイノベーションに貢献してくれるとは信じていない。なぜなら,
- Oracle は革新者(innovator)ではないから
- Oracle の行った買収はウォールストリートのためであって,開発者のためではないから
- Oracle の目的は金儲けであって,イノベーションではないから
それでもRod氏はそれを問題とは思っていない。言語自体がオープンソースでGNU GPLの元にライセンスされているため,Oracleがそれをシャットダウンすることは不可能であるとともにOracle自身の利益にもならない,との考えからだ。
Rod氏の意見では,最近ではイノベーションがSunからではなく外部から,とりわけ Groovy や Scala などJVM上に構築された言語からもたらされてきている。プラットフォームやフレームワークこそが現在の課題であって,イノベーションの起こるべき部分もそこにある。
Rod 氏は出席者に対して,近い将来Javaのイノベーションが死ぬようなことはない,と説き伏せるようなことはしなかったが,その代わりに“Javaアプリケーションの構築,実行,管理のための完璧なインフラの提供”というSpringSourceの最終目標を表明し,最近の業績に関してプレゼンテーションを行った。
JVMは大規模エンタープライズアプリケーションのための優れたプラットフォームである反面,“高度に統合されたワン・ストップ・ショップである”Ruby on Rail のような“開発から製品にまで及ぶ統合的技術” が欠落している。JVMでも統合性・生産性を重視すべきであり,SpringSourceは Grails,Roo,STS,tc Server,dm Server などでそれに取り組んでいる。
Rod氏はGrailsを,JVMのための最高のWeb開発フレームワークであると賞賛した。Grails の開発会社である G2One は昨年,SpringSourceによって買収されている。
RooはJavaの開発生産性向上を目的とする対話的な軽量ツールであり,Springオブジェクトモデルを使用するJavaコードを生成する。なおRooという名称は案のひとつであり,このツールに最適な名前を選ぶための投票への参加を,開発者に呼びかけている。
Rod氏はまた SpringSource Tools Suite(STS) を無償で公開すること,年末にはこれに Grail と Groovy ツールを追加する予定であることなども発表した。
さらにもうひとつ,SpringSource tc Server のリリースに関する発表があった。これはTomcat アプリケーションサーバをベースとして,大規模なサーバ・インストレーションの管理に必要なエンタープライズ機能を付加したものである。
キーノートでは Roo と tc Server のデモが行われた。