先週の終わりに、AdobeのCEOであるShantanu Narayen氏が、AdobeがHTML 5をどう考えているのかコメントしたことで、「Open Web」に関する議論が盛り上がった。「Open Web」というのは、伝統的なブラウザ支持者がWeb標準技術の重要性を主張するときに使う言葉だ。HTML 5は新しいブラウザ仕様であり、今後10年かけて、ブラウザ開発ベンダにより完全に実装される見込みだ。
Adobeの四半期決算発表の場で、Narayen氏はHTML 5について質問されて次のようにコメントした。
ええ。つまり、この改善されたHTML標準がWebコンテンツにおける革新と一貫性を加速するものである限り、私たちはこれを支持します。また、弊社のツールの観点からは明らかに、HTMLコンテンツの作成・管理について必要とされるレベルまでサポートするつもりです。
リッチインターネットアプリケーションと魅力的な体験を提供することが、お客様すべてにとって、ますます重要になっていることを理解したものであると、私は考えています。HTLM 5の課題は、どのようにしてすべてのブラウザで一貫性のある表示をするのかでしょう。そして、現在語られている導入計画を考えると、世の中にある対応ブラウザの数によってHTML 5が標準化されたと判断するには、10年はかかりそうです。
したがって、HTML 5が進化するにつれ、弊社のWebオーサリングツールで確実にサポートしていくという観点では、私たちはHTML 5を明確に支持します。しかしながら、FlashおよびFlashとリッチインターネットアプリケーションにおける革新を推進し続けるという観点から見ると、実際にはブラウザの分裂のために、Flashの重要性は失われるどころか、さらに高まると考えています。
AdobeのJohn Dowdell氏はNarayen氏のコメントに反応し、最後に指摘した点についてブログで説明した。
しかし、私はShantanu氏が最後に指摘した点については本当に同感です...「HTML5」キャンペーンはみな、Flashにとって有益なものになるでしょう。「経験が重要」という考えに反対する人はほとんどいないためです。5年前とは事情がかなり違います。Silverlightが登場したおかげで、Flashの人気は高まりました... iPhoneのおかげで、Flashをサポートする携帯電話が増えました...「HTML5」の宣伝のおかげで、イメージ、アニメーション、オーディオ/ビデオ、リッチな双方向性といったものはWebにはふさわしくないと主張する人たちは追いやられることでしょう。Flashなら、こうした高まる期待に答えられます。ブラウザエンジンは何であっても構いません。
InfoWorld.comの取材によると、HTML 5仕様の共同編集者でGoogleの従業員であるIan Hickson氏は、HTML 5はFlashとSilverlightを超えるものだと、次のように主張した。
「これらは単一ベンダによるソリューションであり、実際のところWebプラットフォームにはあまり適していません」Hickson氏は言います。「単一のソフトウェアベンダを押し付けられると、必ず問題になります。もし彼らがあなたの使っている製品を中止すると決めたらどうなりますか?もし課金し始めると決めたらどうなりますか?オープンプラットフォームでは、このようなリスクはありません。真の競争、数多くのベンダ、そして、誰にでも実装可能なオープンな標準があるためです」
Hickson氏はこう付け加えます。「もし人類の主要な開発プラットフォームであるWebが単一ベンダによってコントロールされると、大きな後退になるでしょう。かつて、Windowsのようなプラットフォームがそうであったように」
Mozillaは、Webをオープンであるままにし、動画などの機能が企業体の世話にならないことを望んでいる、とFirefoxのリードであるVukicevic氏は言っています。しかし、HTML 5とCanvasがFlashやSilverlight、JavaFXに取って代わるかは、「実際に開発者が何をするのかによります」と言っています。
Hickson氏は、HTML 5において変化を妨げる大きな課題の1つについて言及した。
広く使われているInternet Explorerにおいて、HTML 5技術の一部がサポートされないことは開発者にとって問題になる、とVukicevic氏は言っています。「IEがこうした先進的な機能をあまりサポートしていないことが、Webアプリの進歩の妨げになっています」このせいで開発者は、Microsoft特有のAPIをサポートしたり、アプリの一部をFlashで書くといった余計な作業をしなければなりません、と彼は言っているのです。
IEという要素はHTML 5における小さな課題ではないかもしれない。ブラウザの分裂と一貫性の欠如は、これまでも大きな苦痛の1つであった。このことは歴史的にも、純粋なブラウザベースのアプリケーション開発から離れてサードパーティ製プラグインに依存するよう、開発者を駆り立ててきた。いずれにせよ、現実には、この議論の勝者と敗者がはっきりするまでには、まだ何年もかかりそうだ。1つだけ確かなことは、技術が進歩するにつれ、議論は激しさを増すということだ。双方の主要なソフトウェアベンダにとって、得るもの、失うものが数多くあるためだ。競争に負けまいと、各プラトッフォームが新しいエキサイティングな機能を競って追加することにより、うまくいけば、開発者はたくさんの利益が得られるだろう。