以前にも伝えたとおり、「クラウド コンピューティングの適切な用途や効果的使用に関する知識やデータは、依然として十分とは言えない」。Simon Guest氏は、Tech Edでのプレゼンテーション「クラウド移行に適するパターン」で、このトピックにある程度の情報を加えている。
Simon氏はプレゼンテーションで、「どのようなアプリケーションが、クラウドで最も機能するか」という質問に答えようと努めており、アプリケーションのクラウド移行に対し、以下5つの主要パターンを紹介している。
企業内アプリケーションの移植 - 「既存の企業内アプリケーションを利用しクラウドへ移行する」。このパターンは、通常、経済的要因によって決定される。つまり、既存アプリケーションを企業内で運用するより、クラウド リソースを利用する方が安くなるということだ。この場合、既存の企業内アプリケーションは、現状のままクラウド プラットホームへ移行される。コモディティ サービス (電子メールなど)、CRMなどのパッケージ アプリケーションは、このパターンの代表的な候補だ。このパターンを適用する場合、ホストやクラウドがサポートしないカスタマイズには注意が必要だ。
スケールとマルチテナンシー - 「ウェブの負荷処理能力があり、最初から完全な設備投資を必要としないアプリケーションの構築」。これは新しいアプリケーションのプロトタイプを作成する際によくあるパターンだ。つまり、これにより、新規アイデアのプロトタイプ作成にあたり、導入コストを大幅に削減できる。このパターンは、極めて規模の小さいものから始めることも可能であり、それに加え、必要に応じて規模の拡大も可能である。最終的にこのパターンは、予測不可能な拡張を伴うアプリケーションのリスク緩和措置として適用できる。
処理量の爆発的増加 - 「必要に応じた処理能力の追加に対応可能なアプリケーションの構築」。このパターンは経済的要因によって決定される。つまり、この爆発的な負荷の増加はまれではあるが現実的であり、サポートに要する追加のハードウェア容量のコストは、クラウドの使用と比べ極めて高くなるということである。
柔軟なストレージ環境 -ストレージの観点から、指数的な拡張が可能なアプリケーションの構築」。ローカル ストレージは比較的安価ではあるが、その管理には非常にコストがかかる。その結果、クラウド プラットホームの使用はローカル ストレージ管理に対し、より安価な代替手段になりうる。このパターンを使用する場合にも、データアクセスには特別な配慮が必要となる。単にデータを格納するためにクラウドを使用するのであれば、すべての処理がローカルで発生している場合、このパターンが適用できないこともある。
組織間での通信 - 「事前に定義されたインフラストラクチャを使用している組織間の通信を可能とするアプリケーションの構築」。組織内および組織間にある複数エンティティ間で、アプリケーション データを共有する必要がある場合、このパターンを適用できることが多い。
Simon氏は、このプレゼンテーションで、上記パターンの説明だけでなく、これらパターンを実現するにあたって、Windows Azureをいかに利用できるかという点も明らかにしている。
氏は、次のように述べてプレゼンテーションを終えている。
このパターン セットは、「手始めの」パターンであり、網羅的なリストではないが、現在のクラウドで可能なアプリケーションのさまざまなアーキタイプの一部を示しています。この分野は、まだ発展段階にありますが、今後登場する新たなパターンには大変興味を抱いています。
Simon氏のプレゼンテーションは、「企業のクラウド移行」という任務を負ったITアーキテクトにとって優れた指針を与えている。