Tasktop Technologies は Eclipse の Mylyn アプリケーション・ライフサイクル管理(ALM: Application Lifecycle Management)統合フレームワークを提供している会社である。同社は今回,Danube Technologies 社のアジャイル開発用ソフトウェア ScrumWorks Pro 最新リリース版との連携をサポートする。Tasktop Pro の拡張機能であるコネクタの使用によって,ソフトウェア開発者は ScrunWorks Pro のすべてのタスクとユーザストーリーをEclipse IDE 上で取り出すことができるようになる。タスク指向のインターフェースにより,IDEにはアクセスしている生産物(バックログ項目,タスク,障害)に関連するソースコードだけが表示される。
同社はまた,最近行われた Agile 2009 カンファレンスで,ThoughtWorks 対応 ALM コネクタによる連携についても発表している。10月のTasktop Pro リリースと同時に提供されるこのコネクタを使用すれば,Eclipse IDE 上から ThoughtWorks Studio 製品へのダイレクトアクセスが可能になり,ユーザがアプリケーション開発タスク実行に必要な情報収集のためにブラウザ,Eメール,IDE を切り替えて使用する必要はなくなる。
Tasktop社 はさる6月,Eclipse 3.5 Galileo リリースと Mylyn 3.2 をベースとした Tasktop Pro 1.5 をリリースした。その新機能のひとつである再設計されたエディタでは,タスク更新の検索をブラウザベースのアクセスより高速に実行できる,合理的なユーザインターフェースを備えている。またこのリリースで Mylyn Connector Discovery ツールが導入された。このツールは Apple の App Store風インターフェースを使用して,新しい Mylyn インテグレーションの検出と Eclipse IDE へのインストールを容易にするものだ。さらに IBM の Rational ClearQuest との連携や,Atlassian 社のツールJIRA,Bamboo,Crucible,FishEtye に対する拡張サポートも含まれている。
Rational ClearQuest: Mylyn と Rational ClearQuest との連携によって,更新管理ソフトウェアを使用しているチームは Eclipse IDE から ClearQuest の生産物を直接操作できるようになる。このコネクタは ClearQuest に対して,新たに Open Services for Lifecycle Collaboration(OSLC) インターフェースを採用している。OSLC はツールの相互運用性向上を目標に,ソフトウェア・ライフサイクル・リソースとインターフェースに関する仕様開発を行うコミュニティ活動である。
Atlassian Connector: Tasktop社 の協力の下に開発された Atlassian Connector for Eclipse の最新リリース(バージョン 1.1)では,FishEye SCM insights と Eclipse との連携,課題管理ツール JIRA,コードレビュー管理ツール Crucible,ビルド管理ツール Bamboo 用の 拡張 Mylyn コネクタが導入される。
InfoQ では Tasktop Technologies 社 CEO である Mik Kersten 氏にインタビューを行い,Tasktop の最新リリースと他ツールベンダとの新たな統合について話を聞いた。Agile や XP を実際に使用している,あるいはソフトウェア開発方法論を学んでいるソフトウェア開発チームが Tasktop や Mylyn などのソフトウェアを利用するにはどうすればよいか,という質問に対して,氏は次のように答えた。
Tasktopはツールによるアジャイル開発のサポートにそのルーツを持っています。過去10年間に私が携わったプロジェクトはすべて,アジャイルメソッドを用いた開発を行ってきました。その中でタスク指向インターフェースは,作業 - タスクやユーザ・ストーリー,課題,バグといったもの - と作成したコードを自動的にリンクする方向へと発展したのです。Eclipse Mylyn プロジェクトではタスクを Eclipe IDE の最も重要な位置におくことによって,あらゆる種類のタスク,バックログ,あるいはプロジェクト管理技術と開発者のワークフローを統合するフレームワークを提供しています。これによって開発者は,バックログ項目とコードを並べて作業することが可能になるのです。彼らのワークスペースには,現在作業しているストーリーやタスクに関連したコードだけが表示され,彼らの実施した変更結果は自動的に整理されます。このようにアジャイルメソッドがワークフローに組み入れられて,計画やプロジェクトトラッキングの対象とする生産物と協調して作業することが可能であれば,しかもそれがIDE内に組み込まれているならば,アジャイルメソッドの利用はとても簡単なものになります。
ソフトウェア開発作業や標準的な Java プロジェクトの管理作業において,新しい ScrumWorks Pro コネクタが開発者にどのような形で役立つのか,もう少し詳しく説明して頂けますか?
Tasktop を,アジャイルプロセスを開発者のワークベンチに接続するためのツールと考えてみてください。アジャイルを成功させるためには,あなたが関心を持っているアジャイルのフレーバーをサポートするプロジェクト管理レポジトリが必要です。Danube Technologies 社は Scrum における思想的リーダですので,ScrunWorks Pro の選択はあなたの製品のオーナーとScrumマスタ をハッピーにしてくれるでしょう。Danube 社と私たちのパートナーシップ以前には,開発者たちは ScrumWorks と IDE の間を行ったり来たりしなければなりませんでした。しかし Tasktop コネクタがあれば,すべてが統合されリンクされます。障害時に Java スタックトレースをクリックすれば,エディタ内でスタックトレースが即座に開いて,タスクコンテキスト内での作業が開始されます。ユーザストーリーを参照するコードコメントを Java ファイル内に記述しておけば,ユーザストーリーのIDをクリックするだけで,たとえそれがオフライン状態であっても即座にリッチタスクエディタでオープンされます。Subscllipse 経由で SVN を使う場合のように Taskop 社が認証するソースリポジトリを使用しているのであれば,調査中の ScrunWorks バックログ項目に対する更新セットが自動的に生成され,SVN のリビジョンヒストリから ScrunWorks へリンクバックされます。
Tasktop と ClearQuest,Atlassan ツール,ScrumWorks Pro との新たな連携では,要件,テストケース,ソースコード相互間のトレーサビリティは確保されているのでしょうか?
アプリケーション・ライフサイクル・マネージメント(ALM)技術の統合に関しては,重要な目標が2つあります。ALM ツールと IDE とのシームレスな接続を提供することがそのひとつです。そしてあとひとつは,多種多様な ALM 技術の組織化を行うことです。私たちが話をした顧客のほほすべてが複数のバグ/タスク/課題トラッカを持っていて,それらの連携機能のなさに悩んでいます。
この連携の豊かなエコシステムを確立するため,私たちは Mylyn のオープンソース API を提供しています。これはタスク管理,変更管理,ビルド管理,ソース管理,テスト管理を行うシステムへの接続を幅広く可能にするものです。また Mylyn プロジェクトでは Bugzilla,Trac,CVS 用のコネクタなどのリファレンス実装も提供しています。サードパーティと一体化した私たちのエコシステムは,数多くの商用およびオープンソース ALM ソリューションをサポートします。例えば SpringSource Tool Suite(STS) をダウンロードするとします。これは私たちが SpringSource 社と共同開発したものです。それから TaskTop Pro を連携ツールとともにインストールします。連携ツールには TaskTop 社が認定した SunWorks Pro 用や SubVersion 用,さらには Atlassan 社の JIRA や Bamboo,Cruicible 用などがあります。結果として最高の技術をいくつも組み込み,多種多様な ALM スタックとシームレスに結合された IDE が完成します。コードレビュー,障害,Scrum 計画,ビルドなどはすべてタスクリストに統合され,タスクコンテキストのおかげで Java や Spring Beans のコーディングに集中することができるようになります。Tasktop Pro はこのスタックの最上レイヤに位置するので,ユーザストーリーを Outlook や Gmail スレッドから生成することができます。Web アプリケーションのバグフィックス作業に戻りたければ,Firefox のブラウザセッションを呼び戻すことも簡単です。このようなトレーサビリティと自動化は Mylyn API によって実現されていて,近いうちにはさらに機能追加が行われます。
Tasktop プロダクトの将来的なロードマップはどのようなものでしょうか?
まずは,より多くのコネクタを開発するというミッションを続けるつもりです。まだサポートできていない数多くのツールに関して,たくさんの提案を頂いています。コネクタが必要でしたら,開発のバックログの優先順位を決める投票にぜひ参加してください。
この秋にリリースされる Tasktop では,クロス・リポジトリのサポート改善が2つめの重要点です。私たちはすでに開発者に対して,複数のタスク・リポジトリを並列的に使用して,個々のタスクをその間で移動させる機能を提供しています。この次は複数のリポジトリ間でのタスクのリンクを実現する予定です。例えば ClearQuest あるいは Bugzilla に登録された不具合に関連するユーザ・ストーリーを ScrumWork や Rally 内に作成することができるようになります。この種のリポジトリ間連携については,私たちはこれまでも大きな関心を持っていました。Mylyn に追加される新しい API と,私たちがIBMと共に行ってきたOSLCの活動の間で,これが実現されます。
最後に,私たちは計画プロセス,中でも Scrum に関して開発者により良い視認性を提供するためにタスクリストを発展させ続けています。私たちは Scrum を社内で使用しているだけではなく,パートナーのうちの3社との共同開発作業にも用いています。この方法論を採用するユーザやパートナーの数は着実に増え続けています。Scrum と Scrum 的なメソッドは今後,さまざまな計画や管理業務のタスクリストを立案する際に持っているすべての柔軟性に加えて,他の部分でも第一級の役割を演じ始めることでしょう。